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Still Alive ―前世で壊してしまった人生を、異世界でもう一度やり直す―  作者: ぷにゅん


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54/54

第54話「季節は少しずつ」

 あれから、いくつもの朝を迎えた。


 季節は少しずつ移り変わり、中庭の花壇にも新しい花が咲き始めていた。


 エリシアの日課も、いつの間にか当たり前になっている。


 朝は木剣。


 昼は勉強。


 夕方は記録帳。


 眠る前は図鑑を開く。


 そんな毎日だった。


◆


 資料室の窓際。


 今日もエリシアは大きな図鑑を開いている。


 前に見た竜のページではない。


 今日は鳥のページだった。


◆


 色とりどりの鳥が描かれている。


 赤い鳥。


 青い鳥。


 尾の長い鳥。


◆


 エリシアは指で一羽ずつなぞっていく。


◆


「先生。」


◆


「はい。」


◆


「……これ。」


◆


 シアラが本を覗き込む。


◆


「これは”ツバメ”ですね。」


◆


「つばめ。」


◆


 エリシアはゆっくりと繰り返した。


◆


「春になると帰ってくる鳥なんですよ。」


◆


(……かえってくる。)


◆


 その言葉が少し気になった。


◆


「どこから?」


◆


 以前より少しだけ長い言葉になっていた。


◆


 シアラは嬉しそうに微笑む。


◆


「遠くの国です。」


◆


「寒い季節が終わると、毎年ここへ戻ってくるんです。」


◆


 エリシアは窓の外を見る。


◆


(……とおく。)


◆


 まだ見たことのない場所。


◆


(……あるんだ。)


◆


◆


 昼休み。


 アレンが木剣を肩に担いでやって来た。


◆


「エリシア!」


◆


「見て!」


◆


 木剣を振る。


 前よりもずっと滑らかだった。


◆


「先生に褒められた!」


◆


 満面の笑み。


◆


 エリシアも嬉しくなる。


◆


「……すごい。」


◆


「えへへ。」


◆


「でもさ。」


 アレンは少し照れくさそうに笑う。


◆


「昨日より少しだけなんだ。」


◆


「でも、それでいいんだって。」


◆


 エリシアはその言葉を聞いて、自分の記録帳を思い出した。


◆


(……すこしだけ。)


◆


 それでいい。


◆


 毎日。


 少しだけ。


◆


◆


 夕方。


 今日も記録帳を開く。


◆


 今日はツバメを描いた。


 昨日より少しだけ上手だった。


◆


 その横へ、ゆっくり文字を書く。


◆


「つばめ」


◆


 さらに、その下へ。


◆


「はる」


◆


 少し前なら書けなかった文字だった。


◆


 シアラが後ろから覗く。


◆


「文字が増えてきましたね。」


◆


 エリシアは照れながら笑う。


◆


「……ちょっと。」


◆


 言葉も、前より自然になってきている。


◆


 その夜。


 局長は資料室で一冊の記録帳を開いていた。


◆


 それはエリシアのものではない。


◆


 局長自身が若い頃につけていた記録帳だった。


◆


 最初のページ。


 そこには、ぎこちない文字で書かれている。


◆


「火は熱い。」


◆


 それだけだった。


◆


 局長は思わず笑う。


◆


「私も……同じだったな。」


◆


 昔の自分も。


 エリシアと同じように、何も知らない子どもだった。


◆


 だからこそ分かる。


◆


 一歩ずつ進むことの大切さを。


◆


 窓の外では、一羽のツバメが夕焼け空を横切っていった。


◆


 それを見上げながらエリシアは小さく呟く。


◆


「……いつか。」


◆


「わたしも。」


◆


「……いろんなところへ。」


◆


 まだ幼い夢。


 でも、その瞳は少しだけ遠くを見ていた。

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