表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推し活女子大生が王国を救うまで現代に帰れません!  作者: 夢野少尉
第三章 【現代編】推し活女子大生が王国を救ったので現代に帰りました!
36/45

36.もうこの世界では生きていけない

 あれから数週間後。

 その時、友香は人生最大の局面を迎えていた。

REDWIND(レッドウィンド)』のメンバー達が友香に会いたいと、のたまわったらしい。

 橘光輝が夢中になっている女子大生に会いたいと。

 何回も友香は断った。

 推しは遠きにありて()でるものなのに。

 絶対心臓が止まる。血管がつまる。不整脈が起こる。呼吸困難。酸素不足……

 どんな症状が出るかわからない。

 しかし、あまりにもメンバー達の強い要望があり、事務所にお邪魔することになった。


 ーーどうしよう。『BREEZE(ブリーズ)』のみんなに申し訳ない。遠くから挨拶して速攻楽屋出よう、そうしようーー



 ※ ※ ※


 REDWIND(レッドウィンド)と対面する約束の日。

 ビジネスリュックを背負ったネイビースーツを着こなしている橘が、ビル前で友香を待っていた。

 友香を見つける前までスマホを触っていた光輝が、彼女を視界に入れた途端、少年のようにかわいい笑顔に変わる。


 ーーダメだ、もう事務所前から破顔攻撃……


 友香は、光輝の笑顔にめまいが起こりそうだった。


「すみません、今日は無理言っちゃって。10分程度スケジュールが空いているので、挨拶だけお願いできますか?」


 橘光輝に手をひかれ、事務所に入っていく。


 ーーここが、ここが○○エンタの内部!! ーー


 さすが大手芸能事務所の自社ビルの内部は、めくるめく夢のような世界だ。

 ガラス張りの談話室。所属先タレントのポスターやトロフィー。心なしか社員までタレントのように光り輝いている。

 そんな中、推し活女子大生が有名プロデューサーに手を引かれている姿は違和感だ。これこそ異世界だ。

 そんなことを頭で思い浮かべているうちに、ある会議室前で光輝は止まった。


「じゃあ、ここに彼らはいるから。今からノックするからね? 大丈夫?」

「は、はい、お願いします!」


 まるで戦いに挑むような彼女の雰囲気に、光輝はまた笑いをこらえて、挨拶をしながら扉を開ける。


「おはよう、みんな! 今日は無理を言って野岸友香さんに来てもらったよ!」


 一瞬で、REDWIND(レッドウィンド)のメンバー5人分の視線が集まった。その中には瀬田疾風(はやて)がもちろん存在した。


「ほら、入って。友香さん」


 友香はドアの外から中にどうしても入れない。

 すると、疾風(はやて)が会議室の中から声をかける。


「ようこそ! 会いたかったんだよ! だって、橘さんを仕事人間からリア充人間に変えた人なんだよ! 絶対、そんなの会いたいじゃん!」

「あぁ! 疾風(はやて)は余計なことを!」


 光輝は照れて動揺して、友香の方に振り向く。


「あ、あの……わ、私はここから……」


 友香は会議室のドアのふちを持って、中をのぞき込むように疾風(はやて)達を見つめている。

 顔はかわいそうなくらい真っ赤だ。

 すると、疾風(はやて)が友香に近づいて、ドアのふちを握っている手を剥がして握手する。


「こんにちは、僕達のファンなんでしょ? いつもありがとう」


 時が静止した。何かがプツンと音を立てたのだ。


 すると、光輝と疾風(はやて)が驚いた表情に急激に変わる。


「ああっっ! ごめん、ちょっとティッシュある?」


 光輝が指で友香の鼻下を押さえる。疾風(はやて)は慌てて、箱ごとティッシュを渡す。

 友香は手で口と鼻を覆うと、手に大量の血がついていた。


 (鼻血だ、私は鼻血を出している……)


 ティッシュで鼻の下を押さえてながら、その場を慌てて後にする。

 光輝がREDWIND(レッドウィンド)のみんなに、また今度、と言いながら友香を支えて、休憩室に連れて行ってくれた。





 ※ ※ ※


 ーー恥ずかしすぎて、もうこの世界で生きていける気がしない。


 鼻にティッシュを詰めた友香は、畳が敷いてある休憩室で横になっていた。光輝が毛布を持ってきて友香にかけてくれる。

 横になりながらも、友香は恥ずかしすぎて光輝に背中を向けている。


「ごめんね、僕が無理やり連れて来ちゃったから」


 いや、これは私が興奮したからであって、光輝さんは100%悪くない。


 しかし今、友香は推しの前で鼻血姿を晒したショックで気の利いたことが言えなかった。





 ※ ※ ※

 疾風(はやて)達は事務所を出て車で移動中、さっきの騒動を話題にしていた。


「びっくりした。まさか鼻血出すなんて。体調悪かったのかな」

 REDWIND(レッドウィンド)のメンバーの一人が、そう口にした。

「悪いことしたかな。また橘さんに彼女の様子聞いておこう」

「どうした? 疾風(はやて)。さっきから黙りこんで」

「うーーん、あの野岸友香さんって会ったことあるような気もする。すごい既視感というかデジャブというか」


 メンバー達は、一瞬会話を止める。


疾風(はやて)。あの子はダメだよーー、橘さん溺愛だから」

「ファンだから、会場とかで見かけたんじゃなくて?」

「……そんなんじゃないな」


 疾風(はやて)はなぜか彼女の手にキスしたら、倒れられたような記憶がぼんやりと浮かぶ。


 なんだろう……彼女に聞いたらわかるのだろうか。


 疾風(はやて)はモヤモヤしながらも、スマホで次の音楽番組の台本に目を通した。







 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ