78 大丈夫、私がいるから!
柊は、素早くコードを打ちこんでいた。
そのことに、ハルたちは警戒を強めていく。
そして、最後のコードが打ちこまれた。
すると、停止していたメイドたちが、ゆっくり起動し始める。
「さぁ、掃除の時間ですよ」
柊の言葉に反応し、メイドたちの目が赤く光った。
「アニマは敵、排除します」
そう呟くと、五人のメイドたちは、一斉に両手をライフル銃に切り替えた。
「ちょっと、全員であれを撃つつもり?!」
「私がとめます。マーメイドモード!」
ユミは、素早く人魚の姿に変わった。
それと同時に、メイドたちは銃を乱射していく。
「水の波動!」
ユミが、いくつかの水の球で、それを防いでいく。
だが、数が多く、半分ほどが飛んできた。
「ダメ、防ぎきれない!」
「俺もやろう、炎舞!」
レンの出した火の粉が、次々と弾を防いでいった。
「やりますね。でも、これならどうですか?」
口角を上げた柊は、またコードを打ちこんだ。
すると、メイドたちはナイフに切り替える。
そして、ワイヤーを使い飛ばしてきた。
「あれって、サラさんが使っていた……」
「全員避けろ!」
ハルを抱えたマサの合図で、全員各方向に避けた。
そのため当たらずにすんだが、柊は嫌な笑みを浮かべた。
「避けてもいいんですか?」
「えっ?」
「あなたたちが避ければ、後ろの方たちが大変ですよ?」
「しっ、しまった!」
「大丈夫、私がいるから!」
ハルたちが振り向くと、アキナが仁王立ちで立っていた。
「あっ、アキナちゃん?!」
「私だって、ただ働いていただけじゃないんだから!」
叫んだアキナの目は、青く輝いていた。
そして両手を突きだすと、氷の壁が出来上がった。
少し遅れて、氷の壁に当たったナイフが弾かれていく。
「すっ、すごいよアキナちゃん!」
「私たちのことはいいから、気にしないで戦ってください!」
「わかった、ありがとうアキナちゃん!」
「これで、後ろを考えなくてすむぜ」
全員頷き、再びハルたちは、氷の壁の前に立った。
すると、ウイングモードで変化したユミが、あかりに話しかける。
「あかりさん、ハルさんのことお願いしますね」
「いいのかい、あたしは敵だったアニマだよ?」
「だけど、あんたは利用されていたんだろ?」
マサの問いかけに、あかりは目をそらした。
自分が利用されていただけなのだと、信じたくないのだ。
そんなあかりの肩を叩き、マサは背を向けた。
「マサ?」
「あんたは、仲間を見捨てなかった。信頼する理由なんて、それだけでいい」
マサの言葉に、あかりは泣きそうになるのを必死にこらえた。
「あぁ……彼女のことは任せておけ」
あかりの頷きに、マサも頷いた。
そして、メイドたちやマイに、視線を向ける。
「あら、あかり様は戦わないんですね」
「そんなの、俺たちだけで十分だ。いくぞ!」
マサのかけ声で、レンたちは駆けだした。
しかし、柊は口角を上げ、笑みを浮かべる。
「あなたたちの相手は、彼女たちにしてもらいましょう」
「命令を確認しました。速やかに実行します」
柊がコードを打ちこむと、メイドたちは駆けだしていく。
「四人対五人じゃ、こっちが不利だよ……」
「俺もおりますぞ!」
突然の大声に、ハルとあかりは氷の壁を見上げる。
すると、氷の壁の上から、ユキが飛び降りてきた。
「ユキ!」
「遅れてすみませぬ」
「あれ、でも確か、皆と一緒にいなかったっけ?」
「俺は、ずっとアキナ殿たちとおりましたぞ?」
「……気づかなかった」
「まさかと思うが、契約者なのに気づかなかったのか?」
「そっ、そんなわけないじゃん!」
あかりの冷たい視線に、ハルは慌てて手を振った。
すると、余ったメイドの一人が、ハルたちに迫ってくる。
「わわっ、こっち来た!」
「近づけさせはしませんぞ!」
ユキは勢いよく駆けだし、メイドに蹴りを入れる。
「これで、五対五だな」
「でも、なんだろう……マイさんもあの人も余裕なような……」
「まだなにか、隠しているっていうのかい?」
「わからない……でも、なんだか不安なの……」
ハルは、両手を胸の前で握りしめる。
アニマとアンドロイドの戦いが、再び始まろうとしていた。
★★★
その頃、ハルの家では、神の遣いがテレビを見ていた。
しかし、映っていたのはハルたちだった。
「さて、これからどうなるか、見ものだな」
神の遣いは微笑み、お茶をひと口飲む。
そして、用意していた茶菓子を食べ始めた。
「アニマと機械、どちらが勝つのだろうな」
くつろいでいた神の遣いは、画面のハルたちを見て笑みを浮かべる。
それはまるで、無邪気な子どもが楽しんでいるようだった。




