76 和解、そしてマイの本音
「サラさん……」
ハルは、サラの犠牲に心を痛めていた。
すると、数台のワゴン車がやってくる。
その中の一台が、ハルたちの近くで停まった。
「お姉ちゃん!」
「ハルさん、それに皆さんもご無事ですか?」
「えっ、さぁちゃんとアキナちゃん?」
ワゴン車から降りてきたのは、猿渡とアキナだった。
ハルは驚いたが、ふと疑問が浮かんだ。
「どうして、二人がこんな所に?」
「僕たちだけじゃないよ」
「連絡をいただいたので、研究員の方たちにも協力してもらったんです」
「連絡?」
「薫さんが、ハルさんの知り合いの方から連絡が入って、ここを教えてもらったんですけど……」
「知り合い……」
「お姉ちゃん、聞いてないの?」
「うっ、うーん……もしかして、その人は気を利かして連絡したのかなぁ」
苦笑しているハルに、猿渡とアキナは顔を見合わせる。
苦笑しながら、ハルはある人物を思い浮かべていた。
それは、家で留守番しているはずの、神の遣いである。
ハルたちはすぐ出発したため、連絡は出来ない。
ならば、あの時留守番すると言った、神の遣いしか考えられなかった。
しかし、干渉しないと言っていたのも、事実である。
「……まさかね」
苦笑いを浮かべたハルは、アキナたちに視線を向ける。
「ありがとう、来てくれて。怪我人がけっこういるの」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん!」
「そんなこともあろうかと、手当ての準備は完璧です!」
それから準備を終え、猿渡やアキナたちは、アニマたちの手当てをしていく。
「契約者の方たちは、こちらの車に乗ってくださーい!」
その呼びかけに、捕まっていた契約者たちは、安心した表情になる。
ずっと、アニマから脅されていたのだから、当然である。
彼らは、次々と車に乗っていく。
その様子を、あかりはずっと見つめていた。
すると、ハルとマサが近くにやってきた。
「あかりさん、あなたも行ったらどうですか?」
「あたしは、怪我などしていない」
「だったら、手当てを受けている奴らのそばにいてやれよ」
「そうだね、それがいいよ!」
ハルとマサが話しているのを、あかりはつまらなさそうに見つめていた。
しかし、マサの怪我に気づき、慌てて近づいてくる。
「マサ、その怪我はどうした!」
「あぁ、これは……」
「まさか、その人間にやられたのか!」
マサが話そうとすると、あかりはハルに槍を向けた。
予想外の行動に、ハルは驚いて固まってしまう。
「違う、これはメイドたちの戦いでヘタうっただけだ!」
すかさずマサは、庇うようにハルを背中に隠した。
「……なんだ、そういうことか」
そう言って、あかりは納得したのか、槍をハルから離した。
ハルはほっとして、胸を撫でおろす。
すると、あかりは笑顔になり、マサと腕を組む。
「だったら、早く手当てをしないとな!」
「おっ、おい、あかり!」
「遠慮するな。あたしが連れていってやるから」
そして、あかりはマサを引っ張り歩いていく。
それにハルは、ぽかんとしていた。
少し歩いて、ふいにあかりが振り向く。
「さっきは助かった。あんたが知らせてくれなければ、今頃あたしたちは全員、下敷きになっていただろうね」
「あかりさん……」
「マサの契約者さん、あんたみたいな人間もいるんだね」
その言葉に、ハルはうれしくなった。
あかりも、ハルに見えないように微笑んだ。
「マサ、あんたは幸せ者だね」
「いいだろ、あいつは俺の女なんだぜ?」
「なんだい、あたしよりいい女なのかい?」
「えっ……」
マサが驚いていると、あかりはため息をついた。
「あんたはもう少し、女心をわかった方がいいな」
「それ、どういう意味だよ!」
そんな会話がされているとは知らず、ハルは二人を見つめていた。
それはもう、複雑な表情で。
すると、そこへレンがやってきた。
「どうしたんだい、ハル。すごい顔をしているぞ」
「レンさん……」
「まぁ、君にそんな顔をさせるのは、マサくらいかな」
「べっ、別にそんなことは!」
「隠さなくてもいいよ。さぁ、俺たちも手伝いにいこう」
「はっ、はい!」
ハルは頷き、レンに手を引かれ、猿渡たちの所に歩いていく。
そんな一部始終を、見つめている者たちがいた。
それは、サラ以外のメイドたちである。
「アニマと人間が、協力している……」
「アニマは排除しなければ」
「ですが、今のところ彼らは、危害を加えていません」
「一体どうすれば……あの方がいない今……」
そこまで言うと、メイドたちの動きが止まる。
そこへ、マイとコバットが歩いてくる。
そして、メイドたちの横を通り過ぎ、あかりたちの所へ近づいていく。
二人に気づいたあかりは、笑顔を見せ走っていった。
「マイ、コバット!」
「あかり様、ご無事だったんですね」
「あぁ、彼らのおかげで助かったんだ」
「そうですか、それは残念です」
「えっ……」
突然のマイの言葉に、あかりは驚きを隠せなかった。
そして、マイは微笑み、あかりの耳元で囁いた。
「どうせなら、つぶしあってくれれば、よかったのに」




