73 サラの変化と合流
発砲音は、工場内で戦っているあかりたちにも届いていた。
「なんだ、今の音は!」
「奥の方から、聞こえたであります!」
「あっちは確か、マサが戦っていたはずじゃ……」
「もしや、やられたのでは?!」
「バカ言うな。あいつは、そう簡単にやられたりしないさ!」
あかりは、持っていた槍を振り、メイドたちにダメージを与えていく。
そして振り返り、他のアニマたちに呼びかけた。
「今は、こいつらを倒すことに集中しろ!」
「了解です、ボス!」
★★★
奥の部屋にいたマサは、口を開けて驚いていた。
銃口は、確かにマサに向いていた。
しかし、弾はマサに当たらなかった。
弾は、マサの後ろにある、機械を撃ちぬいていたのだ。
しかも、連射したため、機械は原型を保てず崩れていく。
「なっ……」
「あら、外してしまいましたね」
「あんた、今のは……」
マサは我に返り、サラを睨みつける。
だが、サラは涼しい顔で、ライフル銃を元に戻す。
「今ので、あなたは始末しました。もう用はありません」
サラは淡々と話し、軽く会釈をした。
「私はこれで失礼するので、あとは自由にしてもらって構いません」
「見逃すっていうのか?」
「言っている意味がわかりませんが」
サラはそう言うと、近くの出入口に視線を向ける。
すると、いくつかの声が聞こえてきた。
「あった、ここからすごい音が聞こえたでござるよ!」
「マサーっ、いたら返事してーっ!」
声の主は、ハルたちだった。
そのことに、マサは喜びと安心でいっぱいになる。
「……どうやら、無事に辿り着けたようですね」
そう呟いたサラは、マサに背を向け駆けだした。
振り向いたマサは、引きとめるように手を伸ばした。
「おい、待て!」
「あっ、ここが入り口みたいですよ!」
「マサーっ、ここにいるのーっ?」
サラが出ていった後、少ししてハルたちが入ってくる。
マサは振り向き、大きく手を振った。
「ハル、俺はここだ!」
「マサ!」
ハルはマサに気づき、急いで駆け寄った。
レンやユミたちも、警戒しながら入っていく。
「よかった、また会えて……」
「ハル……」
「あんな別れ方したから、もう一度ちゃんと話そうって思ったの」
ハルはマサの手を取ると、優しく握った。
「あの時、拒絶して、ごめんなさい……」
「俺も、悪かった……好きな女に、誤解されるのが嫌で、つい自分の気持ちを押しつけちまった」
「マサ……」
「また、こうして会えると思っていなかったから、正直うれしい……」
ハルとマサが見つめ合っていると、小さい咳払いが聞こえた。
「それより、ここにサラというアンドロイドが来たと思うんだが」
「アンドロイドなら、他にも何人かいて、メイドの格好をしていたな」
「そういえば、なんか向こうが騒がしいような……」
「アンドロイドの他に、アニマもいるようだな」
「えぇ、気配からして、数十人はいるかと」
イグとユミが話していると、マサが音のする方を指さした。
「少し前から、アニマとメイドたちの戦いが始まっているんだ」
「マサ、君だけなぜここに?」
「戦っていたら、この部屋に追いこまれたんだよ」
「しかし、妙だな」
「レンさん?」
考えこむレンを、ハルやマサたちは静かに見つめる。
そして、レンは自分の考えを話しだした。
「あのアンドロイドたちは、アニマの排除が目的のはず」
「確かに、私もそう聞きました」
「なのに、彼にトドメをささず見逃している」
「あっ、そういえば!」
「マサ、なにか思いだしたの?」
マサは先ほどのことを思いだし、ハルたちに教えた。
「俺を追いつめたメイドの他に、もうひとりやってきたぜ」
「それって、まさか……」
「多分、命令していたし、あいつが一番上なんだな」
「サラさん、マサを見逃してくれたんだ……」
「だが、お嬢や俺たちを狙ったのも本当だ」
「攻撃しながら、追い回されましたからな」
「一体、彼女の中でなにが……」
ハルたちは考えを巡らせていたが、それは突然中断される。
なぜなら、大きな爆発音が聞こえたからである。
それに加えて、床が振動したのだ。
「なっ、なにこの揺れ!」
「まずいな、戦いのせいでこの場所が崩れ始めている!」
「えっ、早く避難しなくちゃ!」
「ならば、戦いを停めないとだな」
「皆、やめるでござろうか」
「多分、やめないだろうな」
イグは、腕を組んだままハルを見つめる。
「お嬢、それでもあいつらを助けるのか?」
イグの言葉に、ハルは強く頷いた。
「理由はどうであれ、このままじゃ全員つぶされちゃう」
そして、ハルは両手を胸の前で握りしめる。
「私は、ここにいる人たちを助けたい。アニマも、メイドさんたちも!」
ハルの決意に、レンたちはお互い顔を見合わせる。
そして、全員頷いた。
「君なら、そう言うと思ったよ」
「そうと決まったなら、早く行こうぜ!」
マサは立ち上がったが、負傷した足が痛みだす。
そのため、すぐ片膝をついてしまう。
「くっ……」
「マサ、大丈夫?!」
「無茶をするな。俺がおんぶしようか?」
「誰があんたなんかに!」
「もう、またそうやってケンカ腰になる。レンさんの方が大人じゃない……」
ハルが呆れていると、イグがため息をついた。
「しかたない、俺が担いでいくか」
「なっ?!」
「マサさん、少しの間大人しくしていてくださいね?」
「うぅー……」
なにか言いたげなマサだったが、大人しく言う事を聞いた。
ハルは、いつも通りのアニマたちのやり取りに微笑んだ。
そして、緊急を知らせるため、工場の中心部を目指すのだった。




