66 アニマなら
マサはハルに気づき、慌ててマイを引き離した。
「はっ、ハル、なんでここに!」
「なんでって、いろいろ逃げていたらここに来て……」
ハルは、ショックのあまり立ち尽くしていた。
そして、マイに視線を向ける。
「それより、マサはなにしているの?」
「こっ、これは別に……」
ハルに問われると、マサの返事は歯切れが悪かった。
しかも、ずっとハルと目を合わせないでいた。
そのことに、ハルは引きつった笑みを浮かべた。
「他の子にも、そういうことするんだ……」
それだけ言うと、その場から逃げるように走りだした。
「まっ、待て、ハル!」
「ハル、どこに行くんだ!」
「ハルさん!」
マサたちはハルに呼びかけたが、ハルは止まらなかった。
目には涙をため、必死に走っていく。
すぐに駆けだしたのは、マサだった。
レンとユミもお互い頷き、後を追った。
残されたマイは、不敵な笑みを浮かべていた。
★★★
「はぁっ、はぁっ……」
ハルは、全速力で走り続けていた。
知らない道を、右へ左へ。
あちこち走り、自分が今どこにいるのかわからないでいた。
しかし、今のハルには関係なかった。
マサとマイのキスシーン。
その光景が、ハルの頭の中を支配していく。
「マサの……バカっ!」
ハルは涙をこらえながら、立ち止まり息を整える。
すると、横に公園があった。
そこは広かったが、誰もおらず静かなものだった。
ハルは何気なく中に入ったが、体力の限界がきていた。
「もっ……もうダメ……」
足がもつれ、倒れそうになった。
「「ハル!」」
すると、マサとレンが駆けつける。
そして、マサは腕を、レンはお腹を支えた。
なんとか倒れずにすんだハルは、ゆっくりと顔を上げた。
「マサ……それにレンさんも……」
「ハル、いきなり走りだすから、心配したよ」
「レンさん、ごめんなさい……」
「そうだぜ。話そうとしたのに、いきなり逃げるんじゃねぇよ」
マサの声に、ハルは静かに振り向く。
だが、ハルはマサを拒絶し始めた。
「嫌っ、離して!」
「おい、なんで急に暴れだすんだよ!」
慌てるマサをよそに、ハルの抵抗は続く。
なんとかマサは腕に力をこめ、大人しくさせようとした。
「俺の話を聞けって!」
「痛いっ、マサと話すことなんか、なにもないわよ!」
睨みつけるハルに、マサは必死に弁解した。
「あれは、俺の意思じゃねぇよ。それに、不可抗力だったんだ……だから」
「そんな話、聞きたくない!」
「マイとは、なにもないんだ。俺が一番に想っているのは、あんただけだ!」
「ウソよ、信じられない!」
何度も拒絶するハルに、マサはイラつき始める。
「あんた、いいかげんにしろよ!」
「そこまでだ、マサ」
マサがどなろうとすると、レンに手首を掴まれる。
レンに止められ、マサは強く睨みつけた。
「……なんのつもりだ、レン」
「それはこちらのセリフだ。ハルが嫌がっているだろ」
「あんたには、関係ないだろ」
「いや、大アリだ」
「はぁ?」
「俺は、ハルと契約したアニマだ。契約者を守る義務がある」
「レンさん……」
レンとマサは睨み合い、お互い一歩もひかないでいた。
しかし、マサがハルを離さないため、レンの手に力がこもる。
「っ!」
突然の痛みに、マサの顔が歪む。
マサの手が離れ、ハルは少しほっとした。
そんなハルを、レンが素早く背後に隠した。
「ハルの気持ちがわからないなら、契約をやめるべきだ」
「なんであんたに、そこまで言われなくちゃいけないんだ!」
「言っただろう。俺は、ハルと契約したアニマだと」
「そこに、あんたの気持ちは無いのか?」
「ハルを守る。それが俺の気持ちだ」
「それは、契約していたら当然だろ。そうじゃなくて、あんたの心はどうなんだ」
マサに聞かれ、レンは眉間にしわを寄せる。
マサとレンが睨み合っていると、空からユミがおりてきた。
「やっ……やっと見つけました!」
「ユミちゃん!」
「もうハルさんったら、目的もなしに走ったらダメですよ!」
「ごめん、ユミちゃん……」
「それになんです、この緊張感……」
ユミは、マサとレンの張りつめた空気に驚く。
すると、レンがハルを連れて、ユミに近づいた。
「ユミ、すまないがハルと一緒に、少し離れていてくれないか?」
「いいですけど、レンさんは?」
「少しばかり、マサの相手をしようと思う」
「レンさん……」
心配するハルの頭を、レンは優しく撫でた。
「大丈夫だよ、ハル。こんな感じでも仲間なんだから」
「俺は、あんたを認めてねぇ!」
「マサ……」
ハルは、不安だった。
マサとレンの雰囲気が、いつもと違っていたからである。
レンはマサに振り向き、ハルから離れていく。
「俺も、今の君を認めるわけにはいかないな」
そして、お互い距離をとり、戦闘態勢に入った。
「「アニマなら、戦いで己の正しさを示せ!」」
二人の声が響き、お互い駆けだした。




