65 やっと、君を見つけたのに……
精いっぱい抗議するハルだったが、レンは構わず飛び降りた。
抱えられたハルは、あまりの怖さに悲鳴を上げる。
すると、上空からイグとユミが飛んできた。
二人はレンとハルを抱え、速度を落として着地する。
そこには、先に脱出していたユキもいた。
「大丈夫でござるか、ハル殿」
「じぇっ、ジェットコースターより、怖かったぁー……」
「おや、そんなに怖かったのかい?」
「普通は、あんな所から飛び降りませんから……」
「ふむ……」
「話は後だ。急いでここから離れるぞ」
イグの言葉に、ハルたちは頷いた。
★★★
ハルたちに脱出され、藤原は悔しがっていた。
「くっ、まさかあんな形で逃げられるとは……」
「サラ、早くあいつらを追いなさい!」
「承知しました」
柊に命令され、サラは窓に近づいた。
「飛行モード、展開」
サラが呟くと、背中からジェット機の羽が現れた。
そして、軽快に飛びだすと、機械音が響き渡る。
そのまま発進し、ハルたちを追っていった。
「私たちには、一般人を守らなければならない義務がある」
「これは、避けられないことなんですよ……」
藤原と柊は、遠くを見つめていた。
小さくなっていくサラを見送り、部屋を出ていった。
★★★
脱出したハルたちは、人気のない道を走っていた。
「こっ……ここまでくれば大丈夫かな」
「ダメだ、まだそんなに離れていない」
「でも、もう走れません……」
走るのが苦手なハルは、もう息があがっていた。
すると、ユミがハルに近づいてくる。
「だったら、私がハルさんを抱えますよ?」
「ありがとう、ユミちゃん!」
「そんなこと言って、お嬢の体を触りたいだけなんじゃないか?」
「ちっ、違います!」
疑いの目を向けるイグに、ユミは焦って否定した。
そんなやり取りに、ハルは少しほっとした。
だが、レーザービームが、ハルたちの会話を遮る。
「わわっ、もう追いつかれた!」
「とりあえず、身を隠しましょうぞ!」
ユキの言葉で、ハルたちは木のそばや茂みに隠れた。
「これなら、すぐ通り過ぎてくれるんじゃない?」
「ハル、頭を下げろ!」
「えっ?」
突然レンに頭を抑えこまれ、ハルはコケそうになる。
反論しようとすると、周りの木がどんどん切られていった。
「ひえぇーっ、なんで隠れている所がわかるの?!」
「しょうがない、ここは二手に分かれよう!」
「「承知!」」
「俺はユキを連れていく。レン、ユミ、お嬢を頼んだぞ」
「あぁ、わかっている!」
ひとまずハルたちは、二手に分かれることにした。
上空では、サラが他のアンドロイドたちと飛んでいた。
他のアンドロイドもメイドであり、顔はサラそっくりである。
「どうやら、二手に分かれたようですね」
サラは振り向き、三人のメイドに指示をする。
「あなたたちは、虎と鷲のアニマを追いなさい」
「了解しました」
頷いた三人は素早く、ユキとイグの後を追った。
残ったのは、サラと二人のメイドである。
「私たちは、残りの三人を追いましょう」
「了解しました」
二人のメイドは頷き、サラとともにハルたちを追った。
★★★
とある屋外ステージのベンチで、マサは横たわっていた。
近くにはマイが座っており、顔を近づける。
すると、マサの目が突然開いた。
「うわぁっ、マイ、なにしているんだ!」
「いえ、ずっと眠っていらっしゃったので、キスで起こそうかと」
「そんなこと、しなくていい!」
「そうですか、残念」
突然目の前にマイの顔があり、マサは慌てて距離をとる。
離れたマサに、マイはすねたように口をとがらせた。
マサは一度咳払いをし、辺りを確認した。
「それより、アジトに戻らなくていいのか?」
「えぇ。私はもう少し、マサとお話したいと思いまして」
「俺は、そんな気はねぇけどな」
「そうですね。あなたには大切な方がいらっしゃるみたいですし」
「……あんたには、関係ないだろ」
「えぇ、ですが……」
そっぽを向くマサに、マイは微笑む。
そして近づき、マサの頬に手を添えた。
「そういう態度、あかり様の前ではしない方がいいですよ?」
「なにを……」
「『ハル』という女性が、あなたの大切な方なんですね」
「だったら、どうなんだ」
睨みつけるマサに、マイは優しく微笑んだ。
「それならば、指輪もあなたも、奪ってしまいたくなりますね……」
「おい、一体なに言って……」
マサは、最後まで言うことができなかった。
なぜなら、マイの口が触れたからである。
その頃、ハルたちはまだ逃げていた。
「ふぅー、やっとまけたかな……」
「まだ油断はできないがな」
ハルたちがやってきたのは、マサたちのいる屋外ステージだった。
すると、ユミが人影を発見する。
「あれ、もしかしてマサさんじゃないですか?」
ユミが指さした方には、確かにマサがいた。
そのことにハルはうれしくなり、大きく手を振った。
「あっ、本当だ。おーい、マサ……」
ハルは急いで駆け寄ったが、目の前の光景に言葉を失う。
「あっ……」
ハルは、見てしまったのだ。
マサとマイがキスをしているところを。




