62 強制的な暴走
あかりは口角を上げ、持っていた槍に力をこめていく。
そして、勢いよく振った。
それと同時に、激しい突風が吹き荒れる。
「うわぁーっ!」
マサたちは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「でも、よく働いてくれたよ、マサ」
「くっ、どういう意味だ」
「あんたの仲間で、戦力になる二人を連れだしてくれたんだからな」
「なに?」
あかりの発言に、レンとイグはマサを見つめた。
言われたマサは、ぼう然としていた。
★★★
「ねぇ、やっぱりマサたちの後を追った方がよくない?」
「でも、ここで待っていようって、決めたじゃないですか」
「そうだけど……」
マサたちが出ていってから、ハルは落ち着きがなかった。
すると、突然ユキが立ち上がった。
「むむっ、なにやら数名こちらに向かってきておりますぞ!」
「ユキがわかるってことは、アニマだよね」
「急いで、外に出ましょう!」
ハルたちが家の外に出ると、コバットが数名のアニマを連れてきていた。
「くくく……はじめまして、オイラはコバット」
「ハルさん、下がってください!」
「うっ、うん」
「あんたがハルかぁ。思ったより普通だな」
「なんか、失礼なこと言われている気がする……」
「おっと、つい本音が出てしまったぜぇ」
ふざけたコバットの発言に、ハルは顔をしかめる。
しかし、コバットは笑みを絶やさない。
「あんたが持っている指輪を、もらいに来たんだぜぇ」
「なんで、この指輪を?」
「なんでって、そいつが特別だからだよぉ」
コバットはニヤつきながら手をイジる。
「その指輪は、複数のアニマと契約できるんだよなぁ」
「そっ、そうよ」
「それがあれば、オイラたちは無敵さぁ!」
「ダメっ、これは絶対渡さない!」
「いいぜぇ。なら、力ずくで奪うまでだぁ」
コバットが手を叩くと、小柄で熊の耳の生えた少年がやってくる。
「さぁ、ベアト。お前の力を見せてやれ」
「でっ、でも僕……」
「なぁに、この薬を使えば、お前は最強だぜぇ?」
コバットは、懐から小さな注射器を取り出した。
そして、ベアトに握らせる。
だが、ベアトの手は震えていた。
「なに、あの注射器……」
「なんだか、嫌な予感がします……」
「さぁ、打つんだベアト!」
コバットの圧に耐えられず、ベアトは腕に注射を打った。
すると、体はどんどん大きくなっていく。
「なっ、なに?」
「先ほどの少年とは、全然違うでござるよ!」
「多分あれは、桂木博士の所にあった物です」
「あの人、そんな物まで作っていたの?!」
「あの人は、アニマを実験体でしか、見ていませんでしたから」
桂木博士のことを思いだし、ユミは顔を歪める。
その間にも、ベアトの体は変化していく。
やがて、大柄で筋肉質の体になった。
「ガアァーッ!」
雄たけびを上げたベアトは、ハルたちに突進していった。
「俺が食い止めるでござる、火炎!」
ユキが駆けだし、炎でベアトの周りを囲む。
だが、ベアトはものともせず、突進を続けた。
「なっ、火が怖くないのでござるか?!」
「だったらこれで、かまいたち!」
「ガアァーッ!」
ユミも、風の刃で応戦する。
しかしベアトは、攻撃を受けても進み続けた。
その姿は、暴走する獣のようだった。
「うそっ、痛みを感じないの?!」
驚くユミに、ベアトの裏拳がヒットする。
「きゃぁっ!」
ユミはなんとか防いだが、吹き飛ばされてしまう。
そして、そのまま家のへいに激突した。
「ユミ殿! ぐはっ!」
ユミに気をとられていたユキも、ベアトのタックルをもろに食らってしまう。
「ユキ、ユミちゃん!」
「んーっ、んんーっ!」
ハルが駆け寄ろうとした時、悲鳴のような声が聞こえた。
声のした方に目を向けると、ベアトたちの後ろで、何かが動いていた。
そこにいたのは、ポニーテールの女性で、地面に座らされていた。
「えっ、あの人は人間?」
しかも、女性は縛られており、口は布でふさがれていた。
「なんであの人、縛られているの?」
ハルが戸惑っていると、女性は顔を動かし、自力で布をとる。
そして、大声でベアトに呼びかけた。
「ぷはっ、ベアト、もうやめて!」
「グウゥ……」
「もしかして、この子の契約者?」
「お願い、その子を止めて!」
「えっ?」
「こんなことする子じゃないの。本当は、とても優しい子なの!」
「うるさい、黙ってろ!」
「ひぃっ!」
必死に呼びかける女性だったが、近くにいた他のアニマに押さえつけられる。
「ひどい……脅されているんだ」
「グウゥー……」
ふと声が聞こえ、ハルはベアトに視線を移す。
「えっ、泣いてる?」
ハルは驚き、その姿に釘付けになる。
なぜなら、ベアトは体を震わせ、歯を食いしばって泣いていたからだ。
「苦しいんだね……大丈夫、すぐ助けるから!」
「でも、私たちの攻撃、全然ききませんよ」
「それでも、どうにかしないとでござる!」
「一体、どうすれば……」
必死に考えるハルだが、いい案が浮かばないでいた。
その間にも、ベアトは次の攻撃に移っていた。
ベアトが、手を大きく振り上げた、その瞬間……
「ガウッ?!」
いくつかの空気砲が、ベアトに命中したのだ。
「なっ、なに今の……」
ハルたちが振り向くと、茶髪でメイド服の女性が立っていた。
「えっ、メイドのお姉さん?」




