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55 好かれるのも、大変です

 ハルが滑り落ちたのは、小さな崖だった。

 勢いよく滑ったため、盛大に尻もちをつく。

「いったーい!」

 痛がっていたハルは、笑い声に顔を上げる。

 崖の上では、神の遣いが腹を抱えて、笑い転げていた。

「だから言っただろう、足元に気をつけろと」

「もう少し、早く言ってもらえませんかねぇ!」

「我は、ちゃんと伝えたぞーっ?」

「絶対、崖があること知っていたでしょーっ!」

 上にいる神の遣いに、ハルは大声で文句を言った。

 しかし、そのせいで体中に痛みが走る。

「いたた……もう、神の遣い様のせいで、傷だらけだよ……」

 痛みをこらえきれず、ハルの目には涙が浮かぶ。

 すると、突然近くの茂みが音をたてた。

「ひぃっ、今度はなに?!」

「おいっ、そこにいるのは誰だ」

 怯えていたハルだったが、聞き覚えのある声に笑顔になる。

 それは、ずっと会いたかった人物の声。

「マサ!」

「ハル?」

 やがて、茂みから現れたのはマサだった。

 マサの方も、ここにいないはずのハルに、驚きを隠せなかった。

 少しの間、二人は見つめあう。

 そして、マサはゆっくりと、ハルに近づいた。

「ハル……」

「よかった、また会えて……」

 マサと再会でき、ハルは微笑んだ。

 ハルと目線を合わせるため、マサはしゃがんだ。

 それと同時に、ハルを抱きしめた。

 強く、だけど優しく。

「会いたかった……」

 マサのしぼりだした声は、とてもか細かった。

「マサ……私も会いたかったよ……」

 ハルはうれしくなり、マサを抱きしめた。

 そしてまた、お互いの視線がぶつかる。

「ハル……」

 ゆっくりと、マサの顔が近づいてくる。

 ハルも、そっと目を閉じる。

「水の波動!」

「ぶはっ!」

「マサ?!」

 すると、マサの顔に、思いっきり水がかかった。

 そのため、甘い雰囲気はなくなっていった。

「マサ、大丈夫?!」

「ちっ、この技はもしかして……」

 マサは、ゆっくりと茂みを睨みつける。

 やがて、ユミが姿を現した。

「マサさん、抜けがけは許しませんよ?」

「ユミ……やっぱりあんたか……」

 ユミは笑顔だったが、その声には怒りが混じっていた。

 マサとユミは、強く睨み合っていた。

「ユミちゃん!」

「ハルさん……?」

 ユミはハルに気づき、口を両手で押さえた。

「本当に、ハルさんなんですか?」

「そうだよ。もっとちゃんとした感じで、会いたかったけど……」

 苦笑するハルに、ユミは両手を握って怒った。

「もう、どこに行っていたんですか! 皆、ずっと探していたんですよ!」

「ごっ、ごめんね。でも、やっと戻ってこれたよ。いてて……」

「ハルさん、その怪我どうされたんですか!」

 ハルの怪我を見て、ユミはマサを押しのける。

 押されたマサは、強くユミを睨みつけた。

 だが、ユミは無視して、ハルの手を握る。

「体中、傷だらけじゃないですか!」

「えっと、これは……」

「まさか、マサさんにひどいことされたんじゃ……」

 ユミは再び、強くマサを睨みつけた。

 二人の間には、険悪な雰囲気が漂う。

 このままじゃ、大変なことになる!

 そう思ったハルは、慌ててユミの肩を掴んだ。

「ちっ、違うよユミちゃん!」

「ハルさん?」

「マサはなにも悪くないよ。私が勝手に、ここの坂から滑り落ちたんだよ」

「あら、そうだったんですね」

「まったく、ユミの早とちりには、困ったもんだな」

「マサさんが、抜けがけするからでしょ!」

「抜けがけなんかしてねぇよ」

「じゃぁ、さっきしていたのは、なんですか!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……」

 ハルがなだめようとするが、二人の言い合いは止まらない。

 肩を落とすハルだったが、茂みの音に振り返る。

「おい、またケンカしているのか」

 茂みから現れたのは、イグだった。

 だが、その顔は、すごく呆れていた。

「二人とも、それくらいにしておけよ」

「イグさん!」

「……気のせいか、お嬢らしき人物が、見えるんだが」

「気のせいじゃありません、戻ってきてくれたんですよ!」

「おぉっ、そうだったのか!」

 イグは喜んだが、ふとある疑問が浮かんだ。

「どうしてお嬢は、こんなに傷だらけなんだ?」

「えっと、説明すると長くなるんですが……」

「なら、話は研究所で聞くとするか」

「わわっ!」

 イグはハルに近づくと、慣れた手つきで姫抱っこをした。

 突然のことに、ハルは驚いた。

 だが、恥ずかしくなってしまい、顔を両手で覆う。

「お嬢、なにをしている?」

「だっ、だって、恥ずかしいですもん……」

「この方が、傷にさわらなくていいだろう?」

「そうかもしれないですけど、やっぱり慣れないです……」

「なら、これから慣れていけばいい」

「あまり、姫抱っこされる時ってないですよ!」

「そうだろうか」

 軽く首を傾げるイグが、ハルは可愛く思えた。

 ハルは微笑んだが、やけに後ろが騒がしい。

 少し気になり、顔を覗かせる。

「二人とも、言い合いせずに仲良くしたら?」

 ハルに言われ、マサとユミはピタッと止まった。

 だが、お互い顔を見合わせれば……

「「ふんっ!」」

 口をとがらせて、お互いそっぽを向いた。

 それを見ていたハルは、ため息をついた。

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― 新着の感想 ―
あっ、すぐにみんなと出会えたんだね♪\(^o^)/ みんなにモテモテのハルちゃん♪ マサは少しがっかりだったかな〜?ww
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