表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
改訂版 アニマルな君たちは今日も戦う  作者: しゅうらい
第4章 アニマの暴走編
53/92

53 もう一度、あの世界へ

 天気の良いある夏の日、ハルは散歩をしていた。

「あれから、もう一か月なんだなぁ……」

 退院してから一か月がたち、ハルはいつも通りの日常を取り戻しつつあった。

 だが、時々ではあるが、指輪が微かに光ることがある。

 その度に、ハルは彼らのことを思いだす。

 しかし、向こうに行く手段が無いのだ。

 だから、ハルはさびしい気持ちになってしまう。

「皆、元気かなぁ……」

 ぽつりと呟き、ハルは立ち止まって指輪を撫でた。

 そしてまた、ゆっくりと歩きだす。

 ハルの家の近くには、土手があった。

 そこを歩きながら、ふとハルは周りを見渡した。

「あれ、いつもは人通りがあるはずなのに……」

 いつもと違う状況に、ハルは首を傾げる。

「気のせいかな……」

 たまたま人がいないだけ。

 ハルは、そう思うことにした。

 しかし、歩いていくうちに、違和感を覚えてくる。

 なにかが、おかしい……と、ハルは思った。

 なぜなら、人ひとり歩いていないからである。

 それどころか、車が一台も走っていないのだ。

「まるで、ここだけ時が止まっているようだわ」

 ハルがそう言うと、突然指輪が光を放ちだした。

 それは、だんだん強くなっていく。

「えっ、なんで指輪から光が?!」

 突然の指輪の変化に、ハルは驚いていた。

 だが、少しだけ期待する気持ちもあった。

「皆が、私を呼んでいる……」

 うれしくなったハルは、強く指輪を握る。

 すると、ハルの目の前に、あの白い空間が現れた。

「これはあの時、私を飲みこんだものと一緒よね……」

 マサたちと別れた時を思いだし、ハルは不安になった。

 しかし、頭を振って空間を見つめる。

 そして地面を蹴り、勢いよく中に飛びこんだ。

「みんな待ってて、今行くから!」

 やがて空間は小さくなり、なにもなかったかのように消えていった。

★★★

 とある場所で、ハルはうつ伏せで倒れていた。

「うぅ……あれ、土と草のにおい?」

 目を覚ましたハルが感じたのは、前回の街中のアスファルトではなかった。

 手を動かせば、触れるのは土や草のみである。

「最初の時みたいに、コンビニの前とかだと思ったんだけど……」

 ハルは体を起こし、辺りを見回す。

「ここ、どこだろう……」

 空を見上げたが、木々で覆われ、光が入らなかった。

 そのため、ハルの周りは暗かったのだ。

 しかも、風が吹けば木々が揺れて音を出す。

 そのことに、ハルはだんだん不安になってきた。

「もしかして、ここってどこかの森の中?」

 少し考えてみたが、答えは出なかった。

 また木々が揺れ、ハルの体がはねる。

 急いで立ち上がり、足早に歩きだした。

「でもここ、本当にアニマのいる世界なのかしら」

 ハルが不安になるのも、無理はない。

 微かに聞こえるのは鳥のさえずりだけで、ほとんど静かなのだ。

 しかも、辺りはうす暗く、ハルの不安は最高潮に達する。

「嫌だなぁ……モンスターとか、出てくるんじゃないの?」

 怖くなったハルは、愛しい仲間たちの名前を呼ぶ。

「マサーっ、近くにいないのーっ?」

 だが、ハルから出た声は、とてもか細いものだった。

 それでもあきらめず、ハルは呼び続けた。

「ユキーっ、ユミちゃーん、レンさーん、イグさーん!」

 やがて、ハルの目に涙がたまってくる。

「みんな、どこにいるのー……」

 ハルは辛くなり、しゃがみこんでしまう。

「さびしいよ……」

「いやはや、我と話していた時より、ずいぶんしおらしくなったな」

「えっ?」

 驚いて顔を上げると、どこからか声が聞こえた。

 その声を、ハルは知っていた。

 安堵したハルは、勢いよく立ち上がる。

 すると、茂みが大きな音をたて始めた。

「ひぃっ、なになに、なんか出てくるの?!」

「待て待て、我を忘れたか」

「えっ、神の遣い様?」

 茂みから現れたのは、神の遣いだった。

 だが、ハルの目線は、少し下を向いている。

「なんか、幼くなってません?」

「仕方なかろう。ここでは力が制御されて、この姿が限界なのだ」

 すねる神の遣いを、ハルは微笑みながら見つめる。

 鹿の角や、蛇柄の着流しは、夢の時と変わらない。

 違うのは、見た目である。

 夢の中で会った青年ではなく、小学生くらいの姿だったのだ。

「神の遣い様がいるってことは、やっぱりアニマのいる世界なんですね!」

「当たり前であろう。他にどんな世界があるのだ?」

「いや、異世界とか、モンスターがいる世界とか、ですかねぇ……」

「ふむ、その話に興味はあるが、また今度にしよう」

「それより、ここってどこなんですか?」

「なんだ、わからんのか」

 神の遣いは腕を組み、ハルを見上げる。

「お主の知り合いに、薫という者がいただろう」

「はっ、はい!」

 予想外に薫の名前が出たため、ハルは驚く。

 だからか、声が裏返ってしまった。

 神の遣いはというと、笑いをこらえていた。

「なんだ、まだ予想がつかないのか」

「予想って、言われても……」

「お主も、登ったことがあるだろう」

「登る?」

 首を傾げるハルに、神の遣いはため息をつく。

「察しが悪いな。ここは、その薫という者の研究所の裏山だ」

「えーっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ