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05 見た目が少し違うだけで、あとは私たちと同じじゃない

 ユキはよろけながら、階段をあがっていた。

「このまま戻ったら、また怒られる……」

 階段をあがり終えたユキは、息を整えながら考えた。

「この失敗がバレれば、皆が大変な目に……」

「やっと見つけたぜ」

 ユキが振り向くと、ハルとマサが追いついていた。

「さぁ、さっきの続きをやろうぜ」

 マサは走りだし、殴りかかろうとする。

 ユキはそれを避け、足蹴りをした。

 だが、マサは受けとめ、すかさず拳を突きだした。

「ライジングショット!」

「がはっ!」

 食らったユキは壁まで飛ばされ、そのまま倒れこむ。

「くっ……」

「なんだ、ユキ。もうやられちまったのか」

 全員が声のする方を向くと、あの青年がゆっくりと歩いてくる。

「だらしねぇな!」

「うぐっ」

 青年はユキの隣に来ると、笑いながら蹴りを入れた。

「なっ!」

「ひどい……仲間じゃないの?」

「仲間? そんなんじゃないね」

 蹴りを入れ続けていた青年は、ゆっくりとハルたちに振り向く。

 その目は、狂気に満ちていた。

「こいつは俺の所有物さ。だから俺が何をしようと勝手だろ」

 そして青年は、ユキの髪を掴み持ち上げる。

「しかも、こいつら人間様には逆らえないっていうんだから、面白いじゃねぇか」

「君の考え方は間違っている」

「あぁん?」

 また声のする方を向くと、レンが追いついてきた。

「間違っているだと?」

「そのルールはあるが、アニマに危害を加えていいものではない」

「そんなの関係ないね。お前らにどうこう言われる筋合いはないさ」

 マサとレンが怒りを露わにしていると、ハルが大声で言った。

「そんなの、あなたが決めることじゃないわ!」

「なんだと?」

「この人たちは、見た目が少し違うだけで、あとは私たちと同じじゃない」

 ハルは、マサたちとユキを交互に見る。

「それをわからずに、ひどいことしないで!」

「ハル……」

「ふふっ……ははははっ!」

 急に笑いだした青年に、全員が驚いた。

 やがて笑い終えた青年は、強くハルを睨みつけた。

「俺に口出しするとは、いい度胸じゃねぇか」

 青年はユキの髪を離し、近くにあった鉄の棒を握りしめた。

「その口、きけなくしてやるぜ!」

 ハルに向かって、青年は棒を振りかざした。

「させるか! ライジングショット!」

 とっさにマサが床に打撃を入れる。

 すると、すぐにひびが入り、青年の足元に穴ができた。

「なにぃ?!」

「危ない!」

 青年が落ちる寸前で、ユキがその手を掴んだ。

「なっ……なんで俺を助けるんだ……お前に嫌なことばかりさせたのに」

「そう思うなら、償ってくだされ」

「なんだと?」

「あなたを助けたのは、今までのことをちゃんと、認めてほしかったからでござる」

 しかし、青年はユキを見上げて、にやりと笑った。

「嫌だね……そんなことするくらいなら、お前の契約者なんてやめてやる!」

 そしてユキの手を払い、下へと落ちていった。

 別の部屋にあった指輪のひとつが、静かに砕け散った。

 ぼう然とするユキにハルが近づく。

「もう大丈夫だよ。あなたはもう自由だから」

 ハルはそばに座り、優しく背中を撫でる。

「今までずっと辛かったんでしょ? よく頑張ったね」

 ハルはユキの頭を軽く叩いた。

 ユキは目を潤ませて、ハルに抱きついた。

「うっ……うぅっ……」

 ユキが泣きじゃくるのを、ハルは優しく背中を叩いてなぐさめる。

「大丈夫……今はいっぱい泣いていいからね」

 しばらくして、警察がやってきた。

 ビルの中で、青年が仰向けに倒れていたので、そのまま連れていかれた。

 廃ビルの外で、ハルたちは大人しく待っていた。

「あの、レンさん。あの子たちはどうなるんですか?」

「捕まっていた他のアニマたちは、研究所の方で預かってもらうよ」

「そうですか……」

「それに、奪われた指輪は、ちゃんと元のアニマに返すつもりだ」

 レンは、ハルから視線を移し、ユキを見つめた。

「多分、君はこれから色々話を聞かれると思うが、それからはどうする?」

 ユキは、少し照れながらハルを見た。

 ハルは視線に気づき、首を傾げる。

「俺はこれからは、あなたについていこうと思いまする」

「えっ、それって……」

 ユキはハルに近づき手を握る。

「俺の契約者になってくだされ!」

「ちょっと待って、私はマサと契約しているんだよ?」

「それにあんた、指輪が無いだろ」

 すると、また指輪が微かに光りだす。

 まるで、ユキの気持ちに応えるように。

「指輪が光ってる……でも、契約って一人じゃないの?」

「まぁ、大抵一人だな。多くても二人というところか」

 レンは指輪を見つめ、マサは不機嫌な顔をした。

 そして、ユキがハルの指輪にキスをし、周りに光があふれだした。

「俺はユキ、虎のアニマでございます」

 ユキは微笑み、ハルを見つめた。

 可愛い……とハルは思ったが、すぐ我に返る。

「これからよろしく頼みます、ハル殿」

「うん、よろしくね」

「じゃあ、さっきの戦いの続きをしようぜ、ユキ!」

「もちろんでございます! マサ殿」

「せんでよろしい!」

 高ぶっている二人を、ハルがゲンコツで制した。

 レンはそれを見て、盛大に笑いだした。

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