04 ユキ
とある廃ビルに、白いローブをまとった人物がやってくる。
その人物がフードをとると、虎の耳が生えた少年の顔が露わになる。
少年は不安な顔をして、中へと入っていく。
ビルの中には、数人の幼いアニマたちが身を寄せ合って座っている。
そしてその奥には、椅子にふてぶてしく座っている、三十代くらいの青年がいた。
「遅かったじゃねぇか、ユキ」
青年は、箱に入ったたくさんの指輪を見たまま、ユキという少年に話しかける。
「すみませぬ……少し手間取りまして……」
「それで、指輪は持ってきたのか?」
「はい、ここに……」
ユキは懐から指輪を取り出し、青年に渡した。
受け取った青年は、箱に入れて机に置く。
すると、青年は立ち上がりユキを殴り飛ばした。
「ぐっ……」
「なぜ殴られたか、わかるか?」
「……いいえ」
ユキが俯いたまま答えると、青年が怒鳴りだした。
「あれだけ姿は撮られるなと言っただろう! テレビで流れてるじゃねぇか!」
「も、申し訳ございませぬ……」
「まったく……あぁ、そういえば」
青年は手を振りながら、椅子に腰かける。
「この前、新しい契約者が現れたみたいだ。そいつらからも、指輪を奪ってこい」
「……承知いたしました」
殴られたユキは、ふらふらと立ち上がる。
それを見た青年は、周りにいたアニマたちを指さした。
「頑張れよ? お前がやらなきゃ、他の奴らがどうなるかわかってるよな」
「わかっております! 皆には手出ししないでくだされ……」
「くくっ、お前がちゃんとやれば、約束は守るぜ」
ユキは頷き、背を向けて走りだした。
「おい、フードは被っとけよ!」
青年はため息をついて、また箱の指輪を眺める。
「頑張って、また俺にこれを届けてくれよ……」
青年は不敵な笑みを浮かべ、指輪を撫でた。
★★★
そろそろ日が暮れる頃、ハルとマサは近くの公園に来ていた。
「今日も出るかな、アニマ狩り」
「さぁな。だが、俺たちも新しく契約したから、狙われるかもな」
「えーっ! それは嫌だな……」
ハルが肩を落としていると、二人の周りを炎が囲む。
「きゃっ! いきなり炎が……」
「ハル、俺につかまっていろ!」
マサはハルを抱え、炎から脱出した。
そして、公園の入り口を見つめる。
「……来たな」
そこには、白いローブをまとったユキが、二人の方に歩いてきていた。
「あんたがアニマ狩りか?」
「だとしたら、どうだというのでござるか」
「いいや、やろうっていうなら容赦はしない!」
マサは走りだして、ユキに拳をぶつける。
それをユキは、両腕を顔の前に持ってきて受けとめる。
二人の攻防が続いていたが、マサが電撃を放つ。
「サンダーボルト!」
「ぎゃあぁっ!」
電撃を受けたユキは、その場に膝をついた。
「なんだ、もう終わりか?」
「……このままではまずい。一度退かなければ」
ユキは力をふりしぼり、公園を出ていった。
「あっ、待て! まだ戦いは終わってないぞ」
「そこまでだ、マサ」
マサが追いかけようとすると、レンが現れて行く先を遮った。
「そこをどけ! これは、俺とあいつの戦いなんだ」
「それは構わないよ。だが、俺も彼に用があるんだ」
「レンさんも、あの子に用事が?」
ハルに問われて、レンは頷いた。
「君たちも彼を追うんだろ。俺も同行していいかい?」
「それは、構いませんけど……」
そして、三人はユキを追うため、公園を出ていった。
走りながら、レンはハルたちに考えを話す。
「彼は多分、アニマ狩りの犯人だ。君たちを襲っていたし、彼も認めていたからね」
「でも、なんでそんなことを……」
「それは、本人に確かめてみないといけないな」
話しているうちに、三人は廃ビルに辿り着いた。
「なんかここ、うす気味悪くて嫌だな……」
「だったら、あんたはここに残っていろよ」
「えっ?!」
ハルが驚いているのを無視して、残りの二人は廃ビルに歩いていく。
「ちょっと待ってよーっ!」
急いで後をついてくるハルに、マサたちは笑みを浮かべる。
「なんだ、結局ついてくるんじゃねぇか」
「あんな所においていくなんて、ひどいじゃない!」
「でも、ついてきているじゃないか」
「あそこに一人でいるよりはマシだもの」
ビルの中に入ると、エントランスに幼いアニマたちがいた。
「この子たち、どうしてこんなところに?」
ハルが近づくと、アニマたちは震えて縮こまってしまう。
「かわいそうに……こんなに震えて……」
「すぐに保護してもらおう。俺が連絡しておくから、二人はあの少年を追ってくれ」
「わかりました!」
そして、ハルとマサは階段をあがっていった。




