44 私も、助けてくれるのかな
ユキにアキナのことを知らせるため、ハルたちは走っていた。
「でも、本当なのかな……あのアキナちゃんが……」
「昨日もハルが寝た後、あの女が窓の外を見ていたから、ユキが気にかけていたぜ」
「えっ、そうだったの?」
「はい、私も気になっていました」
マサとユミの話に、ハルは少し考えた。
「ユキもなにか感じて、アキナちゃんを連れだしたのかな」
「いや、多分ユキは深く考えていないだろう」
「本当に、アキナさんに好意があったりして」
「ユミ、そういう考えは、今は忘れろ」
わくわくしているユミに、イグが釘をさした。
「……ユキ、大丈夫かな」
★★★
「ここの庭は、広いでござろう?」
「本当ね。いろんなお花があって、キレイだわ」
「この間、少々壊されてしまいましたが、元通りみたいでござるな」
「壊されるって、なにかあったの?」
「いえ、ちょっとある方が暴走しただけでござるよ……」
「そう……」
ごまかすユキに、アキナは目線をそらし、花壇の近くにしゃがむ。
そして、じっと花を見つめていた。
「なら、またここは壊されてしまうわね」
ぽつりと呟いたアキナは、ユキに振り向いた。
「それよりも、君はどうして、ハルさんと一緒にいるの?」
「俺は、ハル殿に助けられました」
そう答えたユキは、胸の前で拳を握る。
「だから、どこまでもついていこうと思ったのでござる」
「そっか……」
アキナは、少し切なげな笑顔を見せる。
そしてまた、花壇の花に目をやり、アキナはユキに話しかけた。
「ハルさんって、すごいんだね」
「そうなのでござるよ!」
契約者をほめられて、ユキは喜んだ。
「ユミ殿を連れ戻したことや、マサ殿は契約した時、助けられたと聞いたでござる」
「ふーん……」
ユキははしゃいでいたが、アキナは振り向かずに返事をする。
「あと、これは俺の気のせいかもしれませぬが……」
歯切れの悪いユキに、アキナは振り向く。
「昨日、猫のマサ殿を、攻撃しようとしていたでござろう」
「……なんのことかしら」
はぐらかすアキナだったが、ユキの指さした物を見て戸惑う。
「そのペンダントが光って、手が変化しましたぞ」
「そこまでわかっているの……」
アキナは悲しく微笑み、ユキを見つめる。
「こんなことなら、もっと違う形で出会いたかった……」
「えっ?」
ユキは驚き、アキナの周りに風が吹き荒れる。
「ハルさん、私のことも、助けてくれるのかな……」
「あっ、アキナ殿?!」
アキナのペンダントが光り、周囲の風がアキナを包みこむ。
やがて風がやむと、ユキの目の前に、巨大なドラゴンが現れた。
「これは、一体……」
「グオォーッ!」
ドラゴンが雄たけびを上げると、とっさにユキは耳を押さえる。
ユキがぼう然としていると、ハルたちが駆けつけた。
「ユキ、大丈夫?」
「ハル殿……皆もどうしてここに?」
「あんたのことが心配になったから慌てて来たんだよ」
首を傾げるユキに、マサはため息をつく。
ユキが無事だったことに、ハルはほっとした。
しかし、周りを見て、苦笑いを浮かべる。
「まぁ、アニマがいるから、そんなに驚かないけど……」
ハルは、飛んでいるドラゴンを指さした。
「これって、どういう状況?」
「あれは、アキナ殿なのでござる!」
「えっ、じゃぁまさか、アキナちゃんも……」
ドラゴンの正体を聞いて、ハルの顔が青ざめた。
そして、ユミと猿渡のことを思いだす。
「彼女もまた、実験体にされた、ということだな」
「ひどい……自分の娘なのに……」
「ハル殿、アキナ殿を助けてくだされ!」
「ユキ……」
少しハルは戸惑ったが、ユキとドラゴンを見つめ頷く。
「わかった。皆で助けよう!」
「ハル殿……」
ハルはユキの手を取り、マサたちに振り向いた。
「皆、とにかく今は、アキナちゃんを元に戻そう!」
「あぁ!」
「はい!」
マサとユミは、強く頷いた。
レンとイグも頷き、全員ドラゴンを見つめる。
★★★
「どうやら、始まったみたいですね」
レオがニヤリと笑い、座っている人物に話しかける。
「ねぇ、藤崎先輩?」
「あぁ、そうだね……」
レオたちがいたのは、薫の研究室だった。
「いやぁ、彼女をここに入れてくださいまして、ありがとうございます」
「気にすることはないよ」
「これで、奴らのデータも手に入ります」
「なら、私はここまでとさせてもらうよ」
「なにを言っているんですか?」
薫に近づいたレオは、その肩に手を置いた。
「ここまで協力したのです。あなたも同罪ですよ?」
言われた薫は、絶句して青ざめた。
「好奇心とは、厄介なものですね」
「なにを……」
「自分の研究に必要だと思ったら、すぐ手を貸してしまう」
「……」
「いいんですよ。奴らには、まだ秘密にしておきますから」
「……わかった」
優しく語りかけるレオに、薫は承諾してしまう。
「くくく……さぁ、奴らはお嬢さんをどうするんでしょうかねぇ」




