43 アキナとの交流
食堂に行ったハルとアキナは、一緒にカレーを食べていた。
「うーん、おいしい!」
「本当ですね。甘口にしてよかったです」
「でも、意外だったな。アキナさん、辛口得意そうなのに」
「えっ、そんなイメージもたれていたんですか?」
「あれ、違うの?」
「違います。私はチョコやケーキとかの甘いのが好きです!」
「へぇー、そうなんだ」
「ハルさんが、カレーが甘口っていうのは、イメージ通りですね」
アキナに言われて、ハルは少し口をとがらせた。
「それより、ここの仕事はもう慣れたんですか?」
「いえ、まだまだです。覚えることが多くて……」
「そっかぁ、大変なんですね」
食べながら、二人の会話は弾む。
だが、ハルはある質問を聞いてみることにした。
「ところで、桂木博士……お父さんはお元気ですか?」
それを聞かれたアキナは、ぴたりと動きを止める。
静寂が二人を包みこむ。
やがて、アキナが口を開く。
「それが、全然連絡がなくて……」
「じゃぁ、桂木博士の研究は知っていますか?」
「研究?」
「あっ、なんでもないです……」
首を傾げるアキナに、ハルは戸惑いを見せる。
娘には、なにも言っていないんだ……と、ハルはため息をついた。
「あの、父がどうかしたんですか?」
「いえ、なんでもありません」
それから食べ終わるまで、二人とも無言だった。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした……」
「じゃぁアキナさん、部屋に戻りましょうか」
「はっ、はい」
「戻ったら、お風呂にも行きましょうね!」
片づけを終えた二人は、食堂を出ていった。
そして、一旦部屋に戻り、着替えを持って風呂場に向かう。
しばらくして、ハルたちが戻ってきた。
「はぁー、お風呂気持ちよかったなぁ」
「そうですねぇ」
風呂から戻ったハルたちは、寝る準備をしていた。
ハルが、ふとアキナを見ると、アキナはペンダントを見つめていた。
「それ、すごくキレイですね」
「これは、父からもらった物なんです」
「へぇー……」
桂木博士って、あぁいうものを渡したりするんだなぁ……と、ハルは思った。
ハルがじっと見ていると、虎のユキがペンダントで遊び始める。
「こら、遊んじゃダメ!」
ハルはすぐ、虎のユキを引き寄せた。
アキナはというと、苦笑いを浮かべていた。
「では、そろそろ私は行きますね」
「えっ、一緒に寝ればいいのに」
ハルの言葉に、レンとアキナはぽかんとしていた。
「いっ、いいんですか?」
「もちろん!」
笑顔のハルに、アキナはなにも言えなかった。
そして、全員布団に入り、一日が終わった。
★★★
「助けて……重いし、苦しい……」
暗闇の中、ハルは大きな岩に押しつぶされようとしていた。
「誰かーっ!」
ハルが目覚めると、マサとユミ、猿渡が抱きついて眠っていた。
あの夢は、これのせいか……と、ハルは苦笑する。
「ハル、おはよう」
ハルが体を起こすと、レンはもう起きていた。
「おはようございます、レンさん」
「朝から、大人気だね」
「はは……ちょっと息苦しかったですけど」
「お嬢も大変だな」
「あっ、イグさん、おはようございます!」
「あぁ、おはよう」
「いつの間に出られたんですか?」
「レンが出してくれたんだよ。もう、心配ないからな」
「皆、元に戻ってよかったです」
「ハルさん、おはようございます」
ハルが振り向くと、アキナも起きていた。
その膝に、ユキが頭をのせて寝ていた。
「アキナさん、もう起きていたんですね」
「えぇ。あと、私に敬語はいりませんよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「だって、私はハルさんより、年下ですから」
「へぇー……大人びているから、同い年くらいかと思った」
ハルが感心していると、アキナは微笑んだ。
それに、ハルも微笑む。
「じゃぁ、アキナちゃんって呼ぶね」
「はい!」
二人が笑いあっていると、マサたちが目を覚ました。
「ふー、なんとか元に戻れたぜ」
「えーっ、動物の時、可愛かったのにぃ」
「ふざけるな。それだと、力が使えなくて不便なんだよ」
「まぁ、そうだよねぇ」
「それより、レン。昨日のことで、話があるんだが?」
「はて、なんのことだ?」
「とぼけるな!」
「まぁまぁマサ、落ち着いて」
ハルがマサをなだめていると、アキナがゆっくりと立ち上がる。
その反動で、ユキはアキナの膝から転がり、目を覚ました。
「では、私はこれで失礼します」
「アキナ殿、もう行くのでござるか?」
「えっ?」
「少し、庭でも歩きませぬか?」
ユキに誘われ、アキナは微笑んだ。
「……そうですね」
アキナは頷き、ユキと一緒に出ていった。
それを見ていたハルは、顔がにやけるのを必死におさえていた。
「ハル、なににやけてんだよ」
「いやぁ、ユキにも春が来たなぁと思ってさ」
「なんだそれ」
「ハル、マサ、二人ともイグの話を聞いてほしい」
レンに言われ、皆の視線がイグに向けられた。
「実は、アキナという者のことなんだが……」
「アキナちゃんが、どうかしたんですか?」
「昨日、動物だった俺たちの所に、彼女がやってきたんだ」
「はい、先に行ってもらうように、私が言いましたから」
「なるほどな」
イグは納得して、話を続ける。
「マサが、彼女の横を通り過ぎた時、彼女のペンダントが光って目つきが変わったんだ」
「目つきが変わる?」
「それだけじゃない。手も変化させて、マサを攻撃しようとしていたんだ」
「えっ、それって危なかったんじゃ……」
「いや、その時はユキが止めてくれたから、なんとかなったが……」
「だとしたら、今度はユキが危ない!」
ハルたちは急いで、庭へと向かった。




