38 新月
「最近、何事もなくて平和だねぇ」
「その前に、いろいろあったからな」
ハルたちは、リビングでお茶を飲みながら、のんびりしていた。
「こんな時間が、ずっと続けばいいのに」
「そうだな」
「でも、なんだか不安になってきます……」
ハルとマサが話していると、ユミがぽつりと呟く。
「ユミちゃん、不安って?」
「あの桂木博士が、なにか企んでいないか、心配なんです」
ユミが俯いていると、ハルが手を握った。
「大丈夫よ、ユミちゃん!」
「ハルさん?」
「今度は、あなたを渡したりしないから、安心して!」
ハルの言葉に、ユミの顔が明るくなる。
「ありがとうございます!」
二人が見つめあっていると、テレビのニュースが聞こえてきた。
「今日は、新月ですねぇ」
「そうですね。月が見えないと、なんだかさみしい感じが……」
アナウンサーたちの会話に、全員がテレビの方を向いた。
「へぇー、今日は新月なんだ」
ハルはユミの手を離し、テレビの内容を聞く。
「あまり気にしてなかったけど、真っ暗は嫌だなぁ。ねぇ……」
ハルがマサたちを見ると、全員青ざめていた。
「あれ、皆どうしたの?」
ハルが首を傾げていると、マサが口を開いた。
「ヤバい、今日は新月なのか……」
「困りましたな……ここでは、ハル殿に迷惑をかけてしまいますぞ」
「そうですね……」
「多分、お嬢は驚くと思うぞ」
マサたちはハルから離れ、小声で話していた。
独りぼっちのハルは、さみしい気持ちになる。
「一体、新月がなんなのよぉ……」
「それは、俺から話そう」
庭の方から声がしたため、ハルとマサたちは振り向く。
そこには、レンが立っていた。
「あっ、レンさん!」
「やぁ、ハル。元気だったかい?」
「はい、私はいつでも元気ですよ!」
「それはよかった」
「レン、あんたいつもタイミングよく現れるな」
「そうだろうか。たまたまじゃないかい?」
レンは首を傾げたが、マサとイグは疑いの目で見つめる。
それに気づかないハルは、レンに近づいた。
「それより、桂木博士の居場所がわかったんですか?」
「いや、まだだ。そんなことよりも……」
「そんなことって、大事なことだろうが……」
マサがため息をついていると、レンが全員の方を向く。
「まずは全員、薫のいる研究所に来てくれ」
「薫さんの研究所に、ですか?」
「あぁ、詳しいことはそこで話すよ。外に車を待たせているから」
ハルたちは、お互い顔を見合わせる。
だが、レンに促され、軽く荷物をまとめることにした。
★★★
「あんたは、いつも突然やってくるな」
揺られる車の中、レンに向かってマサが口を開く。
「おや、悪かったかい?」
「全然悪くないですよ!」
突っかかるマサをなだめつつ、ハルはレンに微笑んだ。
「もう、マサ。レンさんには情報とかいろいろお世話になっているんだから、突っかからないの!」
「ふんっ」
そっぽを向くマサに、ハルは呆れてため息をつく。
どうしてこうも、レンさんに突っかかるのかしら……と、ハルは思った。
座席に座るだけでも、時間がかかった。
誰がハルの隣に座るかで、もめたのだ。
必然的にレンは決まりで、後はジャンケンをして、マサに決まった。
だが、それがよくなかった。
マサはレンをよく思っていないため、今もこうして突っかかっているのである。
「ふむ、どうやら俺は、マサに嫌われているようだな」
「そっ、そんなことないですよ、多分……」
言い切れないのが悲しくなる、ハルであった。
「そういえば、皆新月と聞いたら、様子が変わった感じがしたんですけど」
「あぁ、それは……」
レンは腕を組み、隣に座るハルを見つめる。
「契約しているアニマは、力を使えるが、新月の時だけは力を失ってしまうんだ」
「えっ、じゃぁ契約している意味がないんじゃ……」
「その答えは、夜になったらわかるよ」
微笑むレンに、ハルは首を傾げる。
それをマサたちは、つまらなさそうに見ていた。
「そろそろ、研究所に着きますよ」
運転していた研究員は、ちらっとハルたちを見た。
「やっぱり遠いですね」
「街中につくるわけにはいかないからな」
「それは、そうですよね」
皆で雑談をしていると、あっという間に研究所に着いた。
「やっと着いたー」
長時間、車に揺られていたのと気遣いで、ハルはぐったりしていた。
「今日はもう遅いから、ここに泊まるといい」
「いいんですか!」
先ほどまでぐったりしていたハルだったが、すぐ笑顔になり、研究所に入っていく。
「じゃあ、俺たちも中に入るか」
「ちょっと待ってくれ」
マサたちも行こうとすると、レンに止められた。
「君たちは、別の部屋に行ってもらうよ」
「はぁ?」




