03 アニマ狩り
「マサ、あそこが私の家だよ」
三人組との一件が終わり、ハルたちは家に帰っていた。
ハルの家は、木造建築の二階建てである。
「ふー、やっと帰ってきたー。ありがとね、マサ」
「それは構わないんだが、さっさと中に入ろうぜ」
「そうだね。ここが本当に私の家なら、ここに鍵があるはず……」
ハルは近くにあった植木鉢を持ち上げる。
しかし、そこに鍵はなかった。
「あれ? 確かここに隠したはずなのに」
「おい、ハル。玄関に顔認証って表示があるぞ」
「えっ、顔認証?!」
「確かに、そんな所に置いていたら、物騒だもんな」
「わ、私の世界なら、それでも大丈夫だったのよ!」
少し恥ずかしくなったハルは、そそくさと玄関に向かう。
そして、パネルに顔を近づける。
『ピッ』と音がして、玄関の鍵が開いた。
「この世界って、進歩しているのね……」
でも、木造にこの機械は違和感ありすぎだよねと、ハルは思ったのだった。
「はぁー、やっぱり家の中は落ち着くわー」
「だらしないぞ、ハル」
カーペットの上に寝転がるハルに、マサはため息をついた。
「えー、いいじゃない。自分の家なんだから」
そう言ってハルは、テーブルに置いてあったリモコンを取る。
テレビをつけると、ちょうど女性がニュースを読み上げていた。
「ただいま入ったニュースです。ビルの屋上で爆発がありました!今のところ怪我人はいません」
「あっ、これってさっきのことじゃない?」
「みたいだな。それにしても、早すぎねぇか?」
「近くの人が、すぐ通報したのかもね」
テレビを見ていたハルは、ちらっとマサに視線を送る。
それに気づいたマサは、少しムッとした顔になった。
「言っとくが、俺は悪くないからな」
「いや、あの爆発はマサのせいでしょ」
「ふんっ」
機嫌を損ねたマサは、そっぽを向いた。
「まぁいいや。今日は疲れたし、ご飯食べて明日買い物に行きましょう」
そして、夕食の準備をするため、ハルは台所へと向かった。
★★★
次の日、買い物をするため、ハルとマサは家を出た。
そして必要な物を買い、帰り道を歩いていた。
「ふぅー、向こうの世界のお金が使えてよかったよ」
「しかし、いっぱい買ったな……」
「これでも、まだ少ない方だよ」
二人が話していると、向こうからレンが歩いてきた。
「やぁ、お二人さん。昨日はよく眠れたかい?」
「あっ、レンさん!」
ハルがうれしそうにしたので、マサが間に割って入る。
「よく眠れるわけないだろ」
「あれ、でもマサいびきかいて寝てたじゃない」
「だ、黙ってろハル!」
「はははっ、仲が良くてけっこうなことだ」
レンに笑われて、マサはそっぽを向いた。
「レンさんは、見回りでもしているんですか?」
「それもあるが、君たち『アニマ狩り』を知っているかい?」
「アニマ狩り?」
首を傾げるハルに、レンは小さく頷く。
「アニマだけを襲って、契約の指輪を奪う輩がいるらしいんだ。なにか知っていることはないかい?」
ハルとマサは、顔を見合わせた。
「わかりません……『アニマ狩り』というのも、初めて聞きました」
「そうか……」
「レンさんは、どうして『アニマ狩り』を探しているんですか?」
「俺には、アニマがちゃんと契約できるかを見届ける役目がある、と前に言ったな」
レンに言われて、ハルは頷いた。
「だから、見過ごすわけにはいかないんだ」
その時のレンの目は、真剣な眼差しだった。
「しかし、帰ってるところすまなかった。では、君たちも気をつけて帰るんだよ」
レンは地面を蹴り、高く跳んでどこかへ行ってしまった。
「なんだったんだろう……なんだか気になるね」
「……そうだな」
マサを見ると、不機嫌な顔をしていた。
家に帰ったハルたちは、昼食の準備をするため、台所に向かった。
ふとハルは、先ほどレンと話したことを思いだす。
「そういえば、なんでアニマだけを狩っているんだろう?」
「さぁな。指輪を奪うってことと、なにか関係があるのかもな」
マサはあごに手を当てて考えたが、結論は出なかった。
「それに、俺たちアニマは『人間を襲えない』というルールがあるしな」
「そうなの?」
「まぁ、それをちゃんと守っている奴が、今回の犯人なのかもな」
「普通ならちゃんと守るんじゃない?」
「甘いな。そんな奴は珍しいぐらいだぜ」
「そんなもんかなぁ」
ハルは首を傾げながらも、準備を進める。
「でも、私たちも気をつけないとね。昨日のことがあるから」
そこでハルは、はっとした顔をする。
それは、あの三人組を思いだしたからだ。
「もしかして、あの三人組のことじゃない?」
「なんだと?」
「だって、あなた襲われていたじゃない」
「そうだが、俺は違うと思うぜ」
マサは手伝いを終えると、テレビの前に座った。
テレビをつけると、アニマ狩りについてのニュースが流れ始める。
「また出たみたいね」
昼食の準備を終えたハルは、リビングへと向かう。
そして、表示されている住所を見て驚く。
「やだ、この近くじゃない!」
「少し用心した方がいいな。相手もアニマみたいだしな」
テレビには、犯人と思われるシルエットの写真が映し出されていた。