20 扉の先へ
マサたちと合流したハルたちは、研究所の裏にある山を登っていた。
「あっ、あの……洞窟はまだですか?」
「うーん、もうちょっと先かな」
「ハル殿、体力ないでござるな」
「ユキは元気だね……」
「いやいや、まだ鍛練したいところでござる!」
「まっ、まだやるの?!」
ハッスルしているユキに、ハルは少し引いていた。
「それに比べて……」
ハルは、視線をマサに移した。
「マサ、なんかやつれてない?」
「ユキに付き合っていたら、予想以上に疲れた……」
ユキ、一体どんなトレーニングをしたの……と、ハルはマサに同情した。
やがて、大きな洞窟が見えてくる。
「ここが、例の洞窟よ」
「あれ? ここの岩になにか書いてありますよ」
洞窟の横には岩があり、文章が書かれていた。
「あぁ、俺が調査をした時に見つけて、薫に報告したんだよ」
そこには、『黄泉の番人が守りしアニマの魂、ここに眠る』と書かれている。
すると、マサが眉間にしわを寄せる。
「なんか、嫌な気配がするな……」
「俺も感じるでござる……」
「そう? 私は空気がおいしいと思うけど」
「もしかしたら、人とアニマでは感じ方が違うのかもしれないね」
薫は気にすることなく、洞窟の方に歩いていく。
「さぁ、行きましょう」
そして、ハルたちは洞窟の中に入っていった。
★★★
洞窟の中は意外と明るく、歩くのに苦労はしなかった。
「中は意外と明るいですね」
「私たちも、ここまではこれたのよ」
すると、薫は先を指さす。
「でも、奥に大きな扉があって、全然動かなかった」
薫の言葉に、レンも頷いた。
「だから、それ以上は調べられなかったんだ」
しばらく歩くと、その大きな扉が現れた。
「確かに、大きい……」
「だが、嫌な気配はここが一番強いな」
「なんかビリビリするでござる……」
「二人とも、大丈夫?」
ハルが、心配な目でマサたちを見つめる。
「それより、ここを見て」
「うーん……ちょっと見づらいけど、なにか描かれていますね」
そこには、うっすらとだが指輪の絵が描かれていた。
「君のはめている指輪は、そこに置いてあったんだよ」
「えっ、最初から研究所にあったんじゃないんですか?」
「この洞窟から持って帰って、研究するつもりだったんだよ」
「そうだったんですか……」
「ハルさん、すまないが指輪をかざしてみてくれないかい?」
「わっ、わかりました」
薫に言われて、ハルは指輪を絵のところにかざした。
すると、指輪が光りだし、扉が音を立てて開いていく。
「うそっ、開いちゃった……」
「やっぱり、その指輪がないとダメだったのね!」
扉が開いたことに、薫は大喜びだった。
「さぁ、中に入りましょう!」
薫が興奮しながら進もうとすると、何かにはじかれてしまう。
「ちょっと、どうして入れないのよ!」
怒る薫をよそに、レンはあごに手を当てて考える。
そして、ハルたちに視線を移した。
「試しに、君たちが入ってみてくれないか?」
「はっ、はい」
ハルとマサ、そしてユキが進むと、あっさりと中に入れた。
すると、ハルの指輪が光りだし、低い声がハルの耳に響いた。
『選ばれし者よ、よくぞ参られた。さぁ、進むがいい……』
「えっ、今なにか聞こえなかった?」
「俺は聞こえなかったぞ。なぁ、ユキ」
「俺も聞こえなかったでござる」
「そう……でも、どうして私たちだけ入れたんだろう」
「もしかしたら、その指輪の契約者とアニマだけが、入れるのかもしれないな」
「そんなー……」
突きつけられた事実に、薫は肩を落とす。
「大丈夫です、薫さん。私たちが中を見てきますから」
「うぅ……仕方ないわね」
まだあきらめきれない薫だったが、ハルたちを見つめる。
「じゃぁ、調査をよろしくね!」
「はい!」
そしてハルたちは、扉の奥へと歩いていった。
★★★
中に入ってからは、ずっと一本道が続いていた。
「なんか、不気味なところだね」
「確かに聞こえるのは、俺たちの足音だけでござるな」
「やめてよ、ユキ! 私、怖いのダメなんだから!」
ハルの叫びが、洞窟内に反響する。
それに驚いたコウモリたちが、音を立てて飛んでいく。
「きゃぁっ!」
「大丈夫でござるよ、ハル殿。ただのコウモリでござる」
「おい、油断するなよ」
騒いでいるハルたちに、マサは呆れて肩を落とす。
「この気配は、大型アニマの時のような……」
「その時と似ているの?」
ハルの問いに、マサは静かに頷いた。
「しかも嫌な気配が、ずっとつきまとっているみたいだ」
「さっきから言っている、『嫌な気配』ってなに……」
ハルが言い終わる前に、周りから黒い影が襲ってきた。
「きゃぁっ、なにこれ!」
「ハル、下がっていろ! サンダーボルト!」
マサが電撃を放ったが、また影たちが集まってきた。
「これでは、キリがありませぬぞ! 火炎!」
ユキの炎が、影たちを消し去っていく。
だが、影は減るどころか、増える一方である。
「どうしよう……これじゃ、前に進めないわ」
ハルが戸惑っていると、突然洞窟が揺れ始めた。
そして地割れも起き、ハルの足元の地面が崩れ始める。
「えっ?」
「ハル!」
「ハル殿!」
マサとユキが駆けつけようとしたが、ハルは下へと落ちていった。
「そんな……」
ユキは青ざめた顔で、その場に膝をついた。
マサも、ハルが落ちた先を見つめながら、歯を食いしばっていた。
「ハル……」
ハルは落ちていく。それはもう、慌てながら。
「きゃーっ! 落ちてる、落ちてる! 私、こんなところで死にたくない!」
ハルは手足をバタつかせながら、思いつくまま名前を呼ぶ。
「助けて、マサ、ユキ、レンさん、薫さん」
そして、もう会えない少女の名前が浮かんだ。
「ユミちゃん……!」
そう呟いたハルの手を、誰かが掴んだ。
「えっ?」
「ハルさん、なんであなたがここにいるんですか!」
ハルが顔を上げると、手を掴んでいたのはずっと会いたかった少女だった。
「……ユミちゃん?」




