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ロスト・ハート・マリオネット ~魔法学院の人形使い~  作者: 天空海濶
“魔専アステリア女学院”中等部一年生
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第二十四幕 別チーム

 ──アタシの名前はボルカ・フレム。の名門、“魔専アステリア女学院”の中等部一年生さ。

 そんなアタシは今、友達と一緒に入った部活動でダイバースをしている。

 今回は迷宮脱出ゲーム。先に出口へ行った方が勝ちという単純なルール。


「さて、出口はこっちで合ってるか?」

「ボルカさん……何の考えも無しに進んでいたのですか……?」

「取り敢えず真っ直ぐ行けば何かあるだろー」

「それじゃ永遠に着きませんわよ……」


 こればチーム戦で、アタシのチームメイトは金髪縦ロールが特徴的なルーチェ。

 今のところアタシ達は直進しているだけでヒントも出口も見つからない。普通は環境とか痕跡とか探して手順を踏むのが一番だけど、性に合わないからなー。


「敵も居ないしなぁ」

「居ない方が良くてよ」


 元々痕跡も少ないし、どちらにせよ突き進むだけだな。

 さて、目の前にあるのは分かれ道だ。


『ァ……アア……』

「……! アンデッド……! ゾンビですわ!」

「右側がアンデッドモンスター……よし、そこに行こう!」

「え!? ボルカさん!?」


 今回は魔法を主体にしよっかな。

 アタシは杖を取り出し、それに魔力を込めて放出。正面の魔物を焼き払う。


「行こーぜ、縦ロール!」

「先程も言いましたが名前で呼んでくださいまし!」


 アンデッドは火に弱い。不死身性や再生力を踏まえ、全部燃やせば何の問題も無いからだ。

 あるかは分からないけど、魂的な物が存在するなら器である肉体を完全に消し去れば解放されるだろう。


『『『ァア……』』』

『『『……………』』』


「……! ゾンビとスケルトンですわ!」

「よっしゃ、燃やすか!」

「放火犯!?」


 どうやらこの辺りはアンデッドの巣窟みたいだな。元々そう言うダンジョン。とにかく前進あるのみ!

 すると大きな轟音が。


「ティーナ達も何処かで戦ってるみたいだな」

「その様ですわね。しかしスゴく大きな音……とても激しい戦闘みたいですわ」

「だなー。アタシも負けてらんないぜ!」

「張り合わないでくださいまし!」


 なんか大物モンスターとでも戦ってんのかな。少なくともアンデッド相手でこんな音は出ない。

 ま、ティーナのやつ怖がりだかんなぁ。アンデッドを前にして植物魔法を使いまくったらこんな音もするかもな。


『ぁうああ……』

「ヒィ! 幽霊ゴースト!?」

「へえ、見た事無い魔物だな。なんかボヤが掛かって変なの。よし、相手を──」

「逃げますわよ~~!!」

「わ!? ちょ、手を引くなー!」


 どうやら怖がりなのはティーナだけじゃないらしい。

 そんなに怖がりじゃないのってこの中じゃビブリーくらいか?


「はぁ……はぁ……怖かったんですの……」

「大袈裟だなぁ。アタシの魔法もそうだけど、ロールの魔法もアンデッドとか魂特攻って感じだろ?」

「どんどん短縮化されてますね。私の名前……それはそれとして、怖いモノは怖いのだから仕方ありませんわ!」

「そこは威勢でもいいから“全然怖くないですわよ!”とか言えば良いのに。お嬢様なんだから」

「嘘を吐いても何にもなりませんわ。お嬢様も関係ありません。それで先に行かされたらたまったものじゃありませんし!」


 ティーナと言い自分を偽らないのは良い心掛けだとは思うけど、倒せる相手にそんなに恐怖するかね普通。

 取り敢えずそれなりに逃げて来ちゃったし、改めて出口を探してみよう。


「テキトーに歩いて出たとこ勝負でも良いけど、やっぱちゃんと考えて行動すっか~。ティーナとビブリーが相手だとしても負けたくはないからな!」


「始めからそうしてくださいまし。それで、どうしますか?」


「そうだな……っし、アタシの炎を探知機にしよう」


「炎の探知機?」


「ああ。火はほんの少しの風で揺らいだりするだろ? 此処に居る魔物は魔力で無理矢理動いている。普通に生きているのもあるけどな。取り敢えず、そんな魔力の気配や生き物の呼吸を感知して揺らめく炎を点在させるって訳だ。──“サーチフレイム”」


 ちょっとした気配で揺らめく火を顕現させる。

 魔力の消費も少ないこれは探索に便利。そうだな、今度ティーナとパーティを組む事があったらアタシと二人で敵を探れば完璧な布陣が出来上がるかもな。


「便利そうな探知機ですけど、穴だらけの神殿という事もあって外からの風で揺らいでしまう可能性もありますわよ?」


「大丈夫ですわ。アタシの炎は範囲を絞って魔力を中心的にしているもの!」


「……バカにしてらっしゃる?」

「とんでもないですわ。ローさん」

「ついにルまで消えましたの!? 私がローテンションになってしまいますわよ!」


 この子を揶揄からかうのは面白い。良い反応をしてくれるんだ。

 けどアタシの知るこの子の魔法はかなり役に立つ……って言い方はなんか失礼だな。とにかく彼女の魔法もスゴいんだぜ?

 頼れる仲間だ。


「お、反応があったな。向こうに何らかの魔物が居るぜ」

「そう簡単に仰有おっしゃられても……如何様な魔物なのかしらと判断しなくてはいけませんわ!」

「真面目だなー。けど見た感じ通り道だし、行くしか無さそうだぞ?」

「そうですわね。如何なる存在にも対応出来るよう警戒しておきましょうか」


 炎にあった反応を頼りにアタシ達は奥の方へと進む。

 ま、軽いノリだけどちゃんと警戒はしている。問題点を上げるなら炎魔法が通じない魔物が居たら困るくらいだけど、このダンジョンは多分大丈夫だろう。

 少し進み、より大きく揺れ動いた辺りで停止する。


「この先みたいだな。ロ。準備は出来てるか?」

「はい。勿論ですわ……って、ロ……!? もはや名前の形が残ってません事よ!? 何なら金髪ロールの時点で名前ですらありません!」

「ハハ、ジョーダン。ジョーダン。それじゃ、行くぞルーチェ」

「はい。ボルカさん……!」


 何はともあれ速攻第一。どんな存在かも分からない今、やれる事はそれだけだ。

 アタシとルーチェは杖を持ち、一気にそこへ飛び出した。


「先手必勝! “フレイムランス”!」

『……!』

「あれは……!」


 そこに居た魔物へ向け、炎からなる槍を放出。燃え盛る槍は突き刺さり、そのまま引火して広がった。

 一瞬だけ見えたのは虫っぽい姿。それなら火は絶大な効果を与えるだろう。急襲は成功したと見て良さそうだ。

 けど思ったよりも大きな魔物だったな。


『ピギャア!』

「……!」


 その時、燃える炎の中から魔物の声がした。

 結構火力は高いと思うけどまだ生きているんだな。中々耐久力がある魔物なのかもしれない。

 また警戒を高め、アタシは魔力を込めた。次の瞬間にその魔物は飛び掛かり、アタシ達は身をひるがえしてかわす。


「あの巨体でこの俊敏な動きか。しかも火だるまなのに全然動けてる」

「ボルカさん。おそらくあの魔物、ワームだと思います……!」

「ワーム。龍に近いとも龍の原型とも言われる爬虫類型の魔物か。だとしたら厄介かもな」


 ルーチェが確認した通りならワーム。それならあの大きさも耐久力も火への耐性も分かる。

 しかもワームって攻撃力も高いらしいな。思った以上に厄介な魔物が現れたのかもしれないぜ。


『ピギャア!』

「煙……! ボルカさん!」

「ああ分かってる。絶対に吸っちゃダメなやつだこれ。ワームも火や毒で攻撃してくるらしいしな」


 口と思しき場所から吐き出されるは猛毒のガス。

 受ければ毒の種類とか特定出来ると思うけど、それまでの時間が危険だ。ルーチェが居るとは言え、致死量を食らったら意味がないからな。

 毒ガスからは離れ、相手の出方を窺う。


『ピギッ!』

「……! まさか……!」

「そう言うことですの……!」


 ワーム自身の体に引火した炎は消し去り、そのワームが火炎を放射する。

 こんな事する知能がアイツにはあるって事か……!

 アタシとルーチェは一気に距離を置くよう離れ、次の瞬間には火が毒ガスに引火して大爆発を引き起こした。


「っぶね~。技の組み合わせとか出来る個体なのか。あのワームは」

「本能のようなものでしょう。狩りの方法を自覚しているのだと思いますわ」

「そう考えるのが妥当だな。けどやっぱ炎魔法は通じ難いか。ちょっと苦労するかもな!」

「お気楽ですわね……思った以上に大変という事ですのに」

「ま、なるようになるさ。こうなりゃトコトンやるだけだ」

「言われずとも……!」


『ピギャア!』

「っと、“ファイア”!」


 再び火炎を吐き、アタシは自分の炎で相殺。効きにくいだけで無効って訳じゃない。地道に蓄積させていくしかねえな。

 アタシとルーチェの戦闘が始まった。

 早く倒さないと先にティーナ達に脱出されちまうな!

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