第 7話 ルータの町
よろしくお願いします。
眼が覚めて、上半身をゆっくり起こし一つ伸びをする。
「うーん。もう朝か」
早朝に起床して、下に降りて厨房で忙しなく働いているおじさんに声を掛ける。
「おはようございます」
「朝飯かい」
「はい、お願いします」
昨日と同じ、巨大な目玉焼きとパンと牛乳。
目玉焼きの白身は直径三〇㎝くらいある。
巨大でも美味いからいいけど、これが毎日続いたら飽きるかも……いや、贅沢はいけないな。
食べ物に感謝して、ありがたく食べよう。
装備を身に付けたその朝は、ギルドには寄らずに直接南の検問所へ向かう。
門番に証明書を見せて、一路草原へ早足で歩いて行く。
いつもは返答してくれないのに、始めて女の子の声にお願いするけれど、果たして応答してくれるのだろうか。
薬草採取お願いします。
【左へ七六歩前進です】
おおっ。通じた。一・二……七六.
【右下です】
返答してくれて嬉しかったことは言うまでもないか。
最初に見つけたのは、毒消草だった。
【左へ九八歩前進です】
一・二……九八。
【三歩左へ前進です】
一・二・三。
【足元です】
またも毒消草だった。
【直進一二歩です】
一・二……一二。
【目の前下です】
今度は紫色草だった。
順々に草原をしゃがんでは歩きしゃがんでは歩き、右往左往しながら順調に採取した。
昼も回ったころ、下ばかり見て歩き回っていたので、方向感覚を失っていたようだ。
顔を上げ、ふと辺りを見ると森に近くなっていることに気が付いた。
まあ、森の近くに来たって言っても、気にする事なんて無いのだけれどさ。
【森の奥五〇m先に、スケルトン一体、スケルトンナイト一体がいます】
え?スケルトン? ま、魔物がいるの?
【気づいていません、倒せます】
はい? 倒す? いやいやいや無理でしょう。逃げるよ、初めての魔物だしさ。
ましてやスケルトンなんて戦ったことも見たこともないし……。
【……】
え? 何?
【倒せます】
えー? 森に入るのー?
【……】
どうしよう、やっぱり逃げた方が。
【タ・オ・セ・マ・ス!】
はい、行きます。
うわっ。最後の一言は頭に響いたな。
何だか怒っていたようにも聞こえたし、思わず行くって言っちゃったよ。
行くと言った手前、覚悟を決めて行くしかないか。
森に入り、奥に歩いて行くと聞いた通り二体がいた。が、近づいた俺にはまだ気づいていない。
【スケルトンの頭を砕いてください】
わかったよ。やりますよ。
よし、ここまで来たらやるしかないな。
腰の剣を鞘から抜いて、一呼吸する。
「フゥ。……よし」
一気に走って近づきスケルトンに向けて剣を振りかぶり、頭部眼がけて力強く振りおろすと砕く事無く綺麗に鋭利に切断して倒れた。
そして崩れるように灰になるスケルトン。
「え? 今までと違う凄い切れ味だよこの剣。やっぱり父さんの手入れが良かったのかな。それに簡単に倒せたしさ」
灰になった跡の横で、剣を眺めていたら、視線を感じた。
――あ、もう一体いたんだっけ。
それに眼が無いのに視線を感じるなんて……ハハッ。
緊張感がないな、俺。
スケルトンナイトは俺に気付き剣を構え襲ってきた。
【右上から左下へ剣の攻撃が来ます】
了解。
振り下ろされる直前に屈むように右下へ避けると、スケルトンナイトの剣は大きく空を切った。
あ、これなら倒せる。こいつの剣筋遅いしよく見えるよ。
そのまま横から踏み込んで、スケルトンナイトの頭に剣を、斜め上段から頭部眼がけて叩き込むと、やはり綺麗に切断して崩れるように倒れ、灰になった。
フゥ。初めての魔物だったけど何とか倒せたかな。
【落ちています】
え?
灰を見直したら中に小さく光る石を見つけた。
スケルトンの灰も確認したら、こっちにも小さな石が落ちていた。
本には、時折ドロップする、書いてあったけど、こんなんでいいのかな。
……ま、いっか。
しかしこれがドロップってやつか、初めて見た。
魔石も手の中に握れる大きさだ。
スケルトンからは青の魔石、スケルトンナイトからは紫の魔石が出たので袋に仕舞い込み帰ったらさっそくギルドで換金しようと考えた。
【倒せます。と言いました】
【そうだね、倒せる事を知っていたんだね。君のお陰で俺も一歩が踏み出せたよ、ありがとう。
【……】
しかし、こうも簡単に倒せるなんて、結構強くなったのかな俺。
いやいや、父さんには一太刀も当てられない程の大差で勝てないし、世の中には、上には上がいる、と言っていたし、自信過剰になってはいけないな、気を引き締めよう。
気が付けば腹が減るのも忘れ、昼食も食べるのも忘れ、今現在に至る。
午後も大分過ぎていたので、とりあえず終了して町に戻り、その足で直接ギルドへ向かった。
ギルドに入ると、夕方には早いので、広間には数人の人がテーブル席に座っているだけだ。
中に入れば、先にセシルさんがカウンター越しから俺を見つけると、なんだか一瞬身構えたように感じたのは気のせいなのかな。
そのままカウンターに歩み寄る。
「こんにちは、ミツヒさん。袋を持っていると言う事は、今日も薬草の買取りですか?」
「はい。それと魔石もお願いします」
今回も隣の部屋に通され、身構えるセシルさんの前でテーブルに薬草を、並べるように、大量に、並べきれなくなって上に重ねて出すと、何故だかセシルさんの眼が大きく開いて、止まったまま固まっているし。
「セシルさん? セシルさん?」
「え? あ、し、失礼しました。またもや凄い数ですねミツヒさん。少しお待ちください」
額に汗をかきながら数え始めるセシルさん。
何故だか、すみませんご迷惑おかけして。と罪悪感が湧き出てしまった。
そして薬草をより分け選定した。
赤色草一〇株 青色草一〇株 銀貨 二枚
紫色草一六株 緑色草二一株 銀貨七四枚
毒消草一九株 銀貨七六枚 合計一五二枚
「す、凄いですね。いえ、凄いを通り越して呆れますよ、ミツヒさん」
あとこれも、とドロップした魔石を出しテーブルに乗せる。
青の魔石、銀貨三枚 紫の魔石、銀貨五枚 合計 八枚
ヨロヨロ、と奥に入って行くセシルさん。
そして額に手を当てながら千鳥足で、ヨロヨロ、と出てくるセシルさん。
今回は銀貨一六〇枚になったので、がさばるし重くなるのも面倒なので金貨に変えてもらおう。
「セシルさん。換金なんですけど金貨で貰ってもいいですか」
「え? あ、はい、そうですね。重くなりますからね。いいですよ」
再び奥に入って銀貨を金貨に変えて来てもらった。
あ、二度手間だったし、セシルさんに悪い事したな。
今後は気を付けよう、と心に誓ってみる。




