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私達の最良の時/私達は幸いなる少数  作者: MV E.Satow maru
第3章 私達は幸いなる少数
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2021年12月(1)

古城こじょうミフユ


 遂にコンサートの週がやってきた。コンサートホールの設営は昨日、金曜日の夕方から始まっていた。今日は設営完了次第バンド・リハーサルをやってその後オケも交えての通しリハーサルをやる予定になっている。

 楽器は昨日夕方に運送会社の人に預けてあり、それらは今日朝一番に会場に搬入されていた。楽器の搬入もスタッフの方がやって下さっていて舞台まで運んでくれていた。なので私達はバンド・リハーサルに間に合うように昼前に会場に入るだけで良かった。今日は服装もラフなままなので気楽だ。


 私達はホールの裏手の出入り口に設けられた関係者受付で到着を告げた。


「あ、ティエンフェイの皆さんですね」

「はい。今日はよろしくお願いします」


朱里しゅり先輩が代表して応じた。

イベンター会社の人がすぐ楽屋に案内してくれた。

「ティエンフェイ様」。そうドアに貼り出された小部屋に入った。


「明日もこちらですので。楽器は舞台に運んであります。接続は自分達でされると聞いてますが?」

「はい。私達でやりますから大丈夫です。もう舞台に上がって準備していいんですか?」

「あらかた設営は終わってますので。PAの人は舞台上手側の袖にいますから楽器接続関係はその人と相談して下さい」

「ありがとうございます」


普通はローディーの担当の人がいるんだろうけど学生バンドなのでそういう人を私達は置いていない。


「先に舞台の方へ行っているね」


 そういうと私は楽屋を抜け出してホールの舞台上手袖に行った。琴乃さんとPAの方が音響操作卓の所にいたので挨拶に行った。


「琴乃さん、今日と明日はよろしくお願いします」

「あら、冬ちゃん、もう来たんだ。こちらこそよろしく。オーケストラの人達とは通しリハで会ってもらうけど今までの公演で映画の劇中音楽を何回も聞いていてどんな子達が演奏してるのかなってとっても楽しみにしてるからね。チケットはSOLD OUTだし。まずはバンドのリハ、よろしくね」

「はい」


 このコンサートホールの座席数は2000席だとか聞いている。ちょっと足がすくみそうな数字になっているけど、名古屋のシークレット・ゲスト出演でちょっとどういうものか分かった……と思う。


 そんな事を思っていたらいきなり背中をポンと叩かれた。


「ハーイ。ビューティフル・ウィンター。琴乃さん、こんにちは!」


ホーちゃんだった。今日はセミロングの髪をツインテールでまとめてきていた。この人、黒みがかったブロンドにこういうのは似合う。かわいらしい。本人も分かってるなあと感じる。


「ハーイ。アドミラル」


と返しておいた。ホーレイシア・コリングウッドという名前はどちらも歴史に名を残した海軍提督の名前と関わりがある事を上京した時に本人から聞いたので思いついた戯れ言だ。

振り返って彼女とハグした。


「ホーちゃんも今、着いたの?」

「うん」


ホーちゃんは琴乃さんともハグをした。


「遠いところお疲れ様、ホーちゃん。ブラス・フリートとコメット・ストリングスの運送会社扱いの楽器や機材関係も着いてると思うけど問題ない?」

「はい。さっきみんなと確認しましたがちゃんと着いてます。担当の人が丁寧に対応してくれていてありがたいです」

「良かった。二人とも13時からバンド・リハーサルだからね」『はい』


 ちょうど、他のみんながやって来た。琴乃さんやホーちゃんと、PAの人に挨拶して舞台上の自分の楽器の所へと散って行った。私もみんなの楽器の組み立て・接続を手伝わなきゃ。


 舞台の配置は観客席側から見て中央前方右側、上手にフリート&コメットが、左側つまり下手にティエンフェイが陣取った。ドラムセットが2つも展開した上でその後に山台が組まれて約52名の東京シネマティック・オーケストラが配置されている。オケとしては小規模だけど私達の方でも20名近くいるので総計80名近い人がこの舞台上で演奏する事になる。


 バンド・リハは各楽器ごとにマイク、モニタースピーカーの調整をしてもらう事から始まった。この間、ブラス・フリート&コメット・ストリングスは楽器のチューニングや軽く音出しをしていた。


 バンド・リハはフリート&コメットとティエンフェイによる『Finest hour in my life』ダブル・ヴォーカル版に一番時間を掛けた。事前に智絵美ちえみちゃんと私で東京へ練習に行った甲斐はあったと思う。こちらも大した修正はなく音響確認などの意味の方が大きかった。


 15時からオーケストラのリハーサルとなった。興味があったホーちゃんと中谷ちゅうやちゃんと私の三人は観客席側で見学した。舞台上には映写用スクリーンが三面もつけられているのが見える。

 指揮はオーケストレーション、編曲担当の大井秀和先生の弟さんの大井和彦先生。奏者はこの映画のためにプロオケを中心に集められた管弦楽のプロフェッショナルだ。

 そんなオケのリハは音響確認や前回公演での注意事項の再確認程度でさらりと終えた。


「え、これだけ?」


中谷ちゅうやちゃんは訝しんだ。一緒に見ていたホーちゃんが絵解きをした。


「オケの人はシネマ・コンサートで全国を巡って来ていてこの神戸が千秋楽でしょ。ここの音響とかチェック出来れば充分なんだと思うよ。この後、通しリハだしさ」

「なるほど」

「一旦楽屋戻ろうか。すぐ呼び出しだろうし」


と私が二人に言うと「そうだね」という事になり席を立った。


 16時から通しリハに入った。ホールが暗くなると中央のスクリーンでは「Sync.Thread」の上映が始まった。


 アヴァンタイトルからシームレスにOPインスト曲「Strand,Thread,Shuttle」の演奏が始まった。

この曲はフリート&コメット合奏だけどオーケストラのヴァイオリン、チェロ、コントラバス、トランペット、トロンボーン、チューバの人が加わってのアンプラグド演奏になっていた。

私がフリート&コメットの演奏に歌で入るときは楽器にもマイクを入れてアンプで流さざるを得ないほど広いホールなんだけどオケからの増強が入る事でこの曲はアンプなしでその魅力をホールの隅々に響かせた。

 曲の演奏を終えると一旦映画上映が止められた。

指揮者の和彦先生が腕を使って大きく○とサインを出していた。何故か秀和先生は顰めっ面しているけど茶目っ気ありすぎる弟に怒っているらしい。

 フリートとコメットの人達は応援演奏に入ってくれたオケのカウンターパートの人と握手やハグをしていた。ホーちゃん、光さん、薫子ちゃん達も納得の演奏が出来たようだった。

後でホーちゃんに聞いた話では他の会場ではオケの人が演奏していたとかでその成果みたいで納得。


 映画上映と演奏は和彦先生のキューで程なく再開された。ここからはもっぱらOST管弦楽曲なのでオケの人達の仕事になる。

劇中バンドの練習シーンなどの音楽は流石に合わせられないので、そこは映画音源そのまま流した。これは他の公演でも同様。


 映画のB Part「始まり」の歌の演奏はティエンフェイと智絵美ちえみちゃんの独壇場だ。いつものティエンフェイの音楽に智絵美ちえみちゃんのギターと歌声が乗っている。


 そしてC Part「絡まる糸」は私とフリート&コメットが演奏した。


入りのタイミングは散々練習してきた事だったので私も智絵美ちえみちゃん達もきちんと合った。琴乃さんは歌の入りの様子を見ていずれも問題なかったようでサムアップしてくれた。


 物語は佳境を迎える。そしてG PARTからエンドロールにかけて掛かる曲は再び映画音源が使われた。それは知っていたけど思ってもみない演出が入っていた。


 映画終了後、ホーちゃんのトランペット・ソロが入りそして、私と智絵美ちえみちゃんのダブル・ヴォーカル版『Finest hour』と中谷ちゅうやちゃんが作詞、ふーちゃんが作曲の新曲を演奏して終了した。


 終了した瞬間、スタッフの人からは拍手が鳴り響いた。オケの人達も足を踏みならしていて、指揮者の和彦先生もまたまた○とやっていて作曲家の秀和先生はまた顰めっ面しつつも拍手されていた。


 琴乃さんはマイクで「みんな、良かった」と言われた上で奏者やPA、映写スタッフに細かい指示が出たので、指定された所を演奏して楽譜に注意事項を書き込んだ。


こうしてこの日のリハを終えた。


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