四話 HWM社
そんなこんなで家出してきた僕がやってきたのは僕の会社であるHWM社。
周りが高層ビルで埋め尽くされている。
その一角が僕の会社。
どうしてここに来たのか。
それは、ここにも寝泊まりする場所があるからだ。
それに、ここは僕の家からも遠いから外を出歩いていても知り合いに会うこともないだろうし。
「ここなら姉さんは知らないだろうし」
姉さんがキチンと反省するまで見つかる訳にはいかないからね。
反省したかどうか知らせるように家族の護衛に付けているキツネに任せてあるからすぐに分かるし。
さてと。
僕は正面入口から入る。
まだ就業時間が終わってないのか、中は何人もの人が忙しなく動き回っていた。
「あれ?今日は何かあったかな?」
普段はこんなにバタバタしてないんだけど・・・。
「すみません。ちょっといいですか?」
僕は受付に行って、受付嬢に話しかけた。
「何かあったんですか?」
「学生の方ですか?申し訳ありませんが現在は立て込んでいまして、御用をお伺いすることが出来ません。それと、部外秘ですので何があったかはお教えする事は出来ません」
「分かりました。それはともかく、中に入ってもいいですか?」
どうせこんな騒ぎだし、僕にも連絡が来るだろう。
「申し訳ありませんが関係者以外の方の立ち入りは禁止となっております」
そう言って僕を止める受付嬢。
「それなら大丈夫ですよ。僕は関係者だから」
僕はそう言うと社員だけが持つ社員カードを見せる。
「え?」
それを不思議そうに見つめる受付嬢。
「どうして、学生のあなたがそのカードを持っているんですか?」
もちろんこれは本物。
社長の正体を隠している僕が別に作っておいたものだ。
僕が僕として社内に入ることもある。
でもその時に毎回毎回僕の正体を知っている幹部達を呼び寄せるのも効率が悪いし、そもそも彼等の仕事の邪魔だ。
というわけで、作っておいたわけだ。
「どこでそれを手に入れたのですか?」
だか、目の前の受付嬢はこれが本当に僕のものだとは考えなかったようだ。
「それは社員にしか配布されてないものです。学生のあなたが持っているはずがありません」
そう言って睨みつけてくる受付嬢。
「いやいや、それなら知ってるはずでしょ?これだけじゃ中には入れないことを」
そう。
このカードだけでは部屋の中やエレベーターなどは入れないし、使えない。
社内には社員認識用のセンサーが設置してある。
カードとセンサーの情報が一致しないとすぐに警備員に捕まっちゃうという仕組みになっているというわけだ。
「それは・・・」
高い買い物ではあったけど、会社的にも安全面的にも安心だ。
それにこういう疑われた場合にも信用されるし。
「なんなら確認しますか?」
カードを受付嬢に渡す。
「た、確かに本物です・・・」
カードにある顔写真と受付をする受付嬢しか知らない秘密のマークが確認されたためか、本物と認めた。
「でしょ?」
「も、申し訳ありませんでした」
そう言って頭を下げる受付嬢。
「いえいえ。それじゃ、僕はこれで」
僕は歩いてエレベーターに向かった。
それを受付嬢は心底不思議そうに見つめていた。
ごめんね。
しっかりと仕事をしている時に僕が混乱させちゃって。
それじゃあね。
そうして、僕はエレベーターに乗った。
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