一話 出発
僕は自分の部屋のデスクチェアに座っていた。
約束の時間まではもう残り少ない。
「よし!これで準備完了かな?」
僕はいざという時のために念のためと手を回していたところに連絡していた。
『はい。こちらも指示通り、諸々の手続きと準備が完了いたしました。いつでも行動に移して大丈夫です』
「分かった。それじゃあ、よろしく頼むよ」
『了解』
電話を切り、そのまま立ち上がって姉さんの部屋へと向かう。
姉さんの部屋の前まで来た。
僕はそのままノックする。
「姉さん、準備は出来た?」
そう言いながら部屋に入る。
「もう少し~」
入ったはいいが、姉さんはオキガエの途中だったぜ☆
「ナツ~。後ろのファスナー上げてくれない?久しぶりに着たせいか分からないんだけど、うまく出来ないの~」
「わ、わかったからその恰好で抱き着いてくるな!」
ライダースーツをはだけさせた状態で抱き着かれたら、思春期真っ只中の高校一年生の僕には大ダメージだ。
そうでなくても姉さんは美少女なのに!
「ちくしょー‼これじゃ出発出来ないじゃないかー‼」
僕の叫びが家中に響き渡った。
・・・
その後、腕にくっ付いていた姉さんを引っぺがし、ファスナーをどうにかさっさと上げてすぐに姉さんを置いて一人で玄関まで走ってきた。
決して逃げてきたわけではない。
明らかに僕を見る目が獲物を狙う目になってた姉さんが怖くて逃げだしてきたなんてことは断じてない。
ああ、ないとも。
「お待たせ」
「姉さん、ああいうことするなら今度からは手伝わないよ」
来た姉さんにすぐに文句を言う僕。
こういうことはしっかりとしておかないとね。
「ご、ごめんなさい。許して。ね!」
「しょうがないな」
ウィンクしながら手を合わせて謝る姉さんにため息をしながら答える。
「それじゃ、出発だ!」
まるで遠足にでも行く小学生のようなノリで玄関から出て歩き出す姉さん。
僕はそれに若干の呆れの気持ちを持ちながら後に続いた。
・・・
待ち合わせの場所である廃校になった学校の体育館にやって来た僕と姉さん。
入り口の前で立地上校舎が見渡せるので夜の廃校を二人で眺める。
「夜に学校に来ること自体がないのに、さらに廃校だもんな。これが映画なら完全に僕らはホラー映画の犠牲者だ」
「なつ~。やめてよ~。私、怖くなってきちゃうじゃない!」
「ごめんごめん」
「もし、怖くて眠れなくなっちゃったらナツのベッドに潜り込むからね!」
「誠に申し訳ありませんでした。以後、このようなことにはならないよう気をつけますので今回は許しては貰えないでしょうか?」
「ありえないほど丁寧に謝ってきた⁉ね、ねえ?そんなにイヤ?私と一緒に寝るのそんなにイヤ?」
めちゃくちゃ不安そうに僕を見てくる姉さん。
夜で暗くてしっかりと顔は見えないけど、よく見ると涙目だ。
「イヤじゃないよ。この歳で姉さんと一緒に寝るのが恥ずかしいだけだよ。だから安心して」
僕にすがるように抱き着いていた姉さんの頭を撫でながら言う。
「うん」
姉さんは僕の言葉に安心したのかコクンとあっさり頷いた。
「それじゃ、中に入ろうか。狭い世界でふんぞり返っている蛙さんを広い世界へ放り出しに」
そう言って僕らは体育館に入った。
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