四話 リング
最初に連れて行かれたのは定番の服屋だ。
ここで僕は姉さんのファッションショーの観客になるとばかり思っていた。
しかし、いざ服屋でファッションショーをしたのは僕だった。
次々に持ってくる服たち。
店員さんもだんだんとノリノリになり出し、姉さんと一緒に僕を着せ替え人形にしたのだ。
結局、買ったのは僕が個人的に気に入った服と姉さんが選んだ服の上下だ。
もうこの時点で僕のHPのゲージは黄色に突入。
次にやって来たのはランジェリーショップ。
ここでは何のひねりもなく僕に下着を選ばせた。
周りにいた女性が生暖かい視線で僕達を見ていた。
まさかドラマやアニメの展開そのままを体験するとは。
穴があったら入りたい気分を実際に味わってしまった。
ここで僕の体力ゲージは赤のラインに突入。
頭の中では撤退の二文字が点滅状態。
トドメは装飾店だ。
えっ?
トドメがなんで装飾店かって?
決まってるじゃないか。
RINGだよ。
姉さんがまあまあお高い宝石店兼装飾店である店に僕の目でも予測できない未知の動きで入っていった。
もちろん姉さんを追いかけて僕も店に入ったよ。
そこで姉さんが見ていたのは指輪だった。
しかもただの指輪ではなく、婚約指輪や結婚指輪が置いてあるコーナーだった。
さすがにこれはいくらデートだと言っても無理だ。
「姉さん、さすがにそれは無理だよ」
僕がそう言うと姉さんはハッと何かに気づいた。
「そ、そうだね、・・・うん」
どうやら無意識でここまで来ていたらしい。
姉さんはそのことにさっき気づいたようだ。
潜在意識までブラコンなんだな。
軽く戦慄するよ。
「・・・」
「・・・」
姉さんは僕にバレないようにしながら指輪を見ていた。
「はぁ~」
僕はしょうがないなといった感じでため息をついた。
「姉さん」
「ん?何、ナツ」
「こっちのデザインの指輪も見てみようよ。結構いいのがあるよ」
「どれどれ?」
姉さんは婚約・結婚指輪のコーナーの隣にある親しい人同士でつけるペアリングコーナーがあった。
どうやらこの店のオリジナルらしく、ディアリングと言うらしい。
「あっ」
「ん?どうしたの、姉さん」
「これ、いいなーって思って」
そう言って指を指したのは『いつまでも一緒』という意味の指輪だ。
名前はトゥゲザーリングと言うらしい。
ちょっと中二病っぽい。
っていうかまんまだし。
「でも、これなかなかのお値段だね」
僕も値段を見てみると確かに高い。
姉さんの手持ちじゃ買うのは難しいだろう。
「ふむ」
僕は少し考え、近くの店員さんを呼んだ。
「すみません。ちょっといいですか?」
「はい。どうしましたか?」
「このリングをください」
「はい。それでは指のサイズを測らせていただいてもよろしいですか?」
「はい。お願いします」
「え?えっ?えっ⁉」
僕と店員さんのやり取りを見て姉さんは狼狽する。
「ナツ。これ買えるの⁉」
「うん。大丈夫だよ」
「でも、ナツと私のお小遣いは同じだったはずだよね?」
「うん」
僕と姉さんのお小遣いは同じ額だ。
普通は年上で女の子の姉さんの方がお小遣いは上だろう。
しかし、僕も姉さんも普通の一般家庭よりは多くもらっているので僕と姉さんの間でお小遣いの額の差はなくてもいいのでは?という僕ら子ども二人の意見により同額になったのだ。
もちろん、お小遣いの額は常識の範囲内だ。
だが、ここでイレギュラーが生じる。
それは僕の総帥という立場だ。
僕の仕事ぶりからさすがにこれでタダ働きはダメだろうという理事長の考えにより、給料がもらえることになったのだ。
まあ、姉さんみたいにあそこの学校に在学しているわけでもないし。
額は時給が高いアルバイトをしている人の平均ぐらいだ。
まあ、アレの収入は完全に貯金だ。
あのお金は正直使い辛いし。
というわけで僕の収入は姉さんの倍ぐらいになっているのだ。
もちろん、使わなかったお金は貯金に回している。
ぶっちゃけ新品の普通の車ぐらいなら平気で買える。
まあ、そうでなくても僕には他にも収入があるし・・・。
「まあ、ここは普段の感謝の気持ちだと思ってくれればいいから」
そう言って僕は先に会計を済ませる。
「それではどの指にしましょうか」
店員さんが聞いてくる。
「じゃあ、中指で」
中指の大きさなら他の指にも付けれるしね。
「分かりました。それでは測りますね」
そして僕と姉さんの指の大きさを測った。
「それでは少々お待ちくださいね」
そう言って店員さんは指輪を取りに店の裏に入っていった。
まあまあ時間が掛かると思っていたけど、早くに同じサイズの指輪を見つけることができたのか、すぐに戻ってきた。
「お待たせしました。こちらになります」
すでに梱包されていた。
「ありがとうございます」
僕たちはそのまま店を出る。
「・・・」
姉さんはさっきからずっと無言だ。
少し心配になり姉さんを誘導して近くのベンチに座る。
「どうしたの?姉さん」
「・・・」
「とりあえず、はい。これは僕からのプレゼントね」
そう言ってさっき買った指輪を姉さんに渡す。
「・・・」
「姉さん?」
指輪を受け取ってくれたけど反応がない。
どうしたんだ、姉さんは。
と、思った瞬間。
「ナァァツゥゥゥゥ‼」
姉さんが勢いよく僕に抱き着いてきた。
「嬉しいよおーーーーーーーーーー‼」
「うわっ‼ちょっ。姉さん、こんなところで大声出さないでよ」
案の定、周りから視線を集める。
「ありがと~~」
そう言いながら僕の腕に抱き着いてくる。
やれやれ。
ここは我慢しますかね。
はい。
ここまでが回想でした~。
読んでくれて感謝です。
次の話もよろしくお願いします。
ディアとかトゥゲザーとか正直ちょっと恥ずかしい・・・。
まあ、オリジナルで、作者の創作リングではありますが、もし、どこかで本当にあったらごめんなさいと言うことで。
それと、装飾店の指輪を出す速さですが、これも作者の想像なので気にしないでいただけると幸いです。
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よろしければそちらもよろしくお願いします!




