九話 作戦会議?と二人目のメシア
姉さんが嬉しさのあまり僕の腕に抱き着いて離れないまま玄関前までようやく着いた。
姉さんは満面の笑みのままだ。
「姉さん。そろそろ離してよ。もう家に着いたことだし」
ここに帰ってくるまで本当に大変だった。
帰っている最中にすれ違う男達からは嫉妬と羨望の視線が僕に集中砲火。
近所のおばちゃん達は僕達のことをなまじ知っているためか、微笑ましいものを見るように温かい目を僕達に向けてきた。
本当に、本当に!大変だった!
僕が!
「今日はもうずっとこのままで過ごしたい」
「いや、流石にそれは勘弁して」
僕はすでにグロッキー状態だ。
このハイテンション姉さんに下校の間だけでこんなに疲れているんだ。
明日はもう仕方ないとしても今日はもう勘弁して欲しい。
ぶっ倒れちゃうよ。
色々決戦の日になるな、明日は。
「ぶー!」
「なんか、若干精神年齢が下がってない?」
「お兄ちゃんって呼ぼうか?」
「もう勘弁してください・・・」
何が悲しくて姉に兄と呼ばれなきゃならんのだ。
母さんが聞いたら大変なことになってしまう。
主に母さんの中の僕に対する評価に姉に妹を強要する変態が追加されてしまう。
それだけは本当に阻止しなくては。
「僕は夕食の用意をするから。姉さんは着替えてきたら?」
「そうする~」
姉さんがようやく僕から離れる。
「今日はずっと一緒にいたいから夏月の料理しているところ、見てるね!」
そう言って姉さんは二階に行ってしまった。
「ハァ~~~~~。凶悪過ぎ」
僕の顔は真っ赤になっていた。
姉さんの笑顔に弱い僕としてはこのことは姉さんには知られないようにしておかないとな。
バレたら一発アウトだ。
姉さんは僕に武器として満面の笑みを使ってくるだろう。
そんなことになってしまったら僕はそれを防げる気が全くしない。
「とりあえず、夕食作るか」
僕はキッチンへと入った。
・・・
甘かった。
僕が甘かった。
姉さんの本気を舐めきっていた。
こんなことは簡単に予想できたはずなのに・・・。
「それでね!夏月と一緒にここにも行きたいの!」
夕食を食べ終わってから姉さんは父さんと母さんの二人にあっさりと僕とのデートのことを話した。
そして現在、姉さんは母さんと一緒にデートプランを練っていた。
僕はもちろんのこと、父さんもそっちのけで。
男が入れる余地はあの空間には全くと言っていいほどない。
「僕も疲れていたのかな?うっかり姉さんに口止めするのをすっかり忘れていたよ。父さんだけならともかく、母さんにまで知られてしまうとこうなることは分かっていたはずなのに!」
僕の声からは後悔の念が滲み出ていた。
「まあ、覚悟しておくんだね。母さんが絡んでいる以上、その時点で明日は相当大変になることは確定事項だ。ほら、母さんが美香に夏月の行動パターンからの返し方とかまで伝授してる」
「ハ、ハハハハハ」
乾いた声しか出ない。
最後の希望の光として父さんに泣きつく。
「お願い!助けて、父さん!」
「無理」
潰えた。
「まあ、本当に危なくなった時の対処法ぐらいは教えておいてあげよう」
「メ、メシア!」
このフレーズ、僕気に入ったよ。
そうして、母さんと姉さん、父さんと僕という二つのグループになって明日の練った。
気がつくと結構いい時間になっていたのでお開きだ。
まあ、父さんの教えてくれた対処法も母さんにはバレていて通用しない気がするにはするが、仕方ない。
これ以上は何も出来ないし、何も策がないよりはマシだ。
ベッドに入ったが、姉さんに対する恐怖でドキドキしているのか、それともデートにドキドキしているかは分からないが、心臓がうるさくて中々寝付くことが出来なかった。
まあ、おそらく、その両方だろうなと考え、ウンウンと唸っていたらいつの間にか眠っていた。
疲れてたんだね、やっぱり。
読んでくれて感謝です。
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