八話 メシア
今回はちょっと長くなっちゃいました。
キリがいいところで切るのって難しい・・・。
そんなわけで今回の話もどうぞ!
そんなこんなで次の日。
不良との約束の日まで後、1日。
まあ、そんなにびびったり、緊張しなくてもいいんだけど。
そんなことを考えているけど、いつも通り家で考えているわけではなくて、今はちょうど授業中。
ただ、いくら僕が策を講じても、イレギュラーがあったらすぐにボロボロと崩れる。
策とはそういうものだし。
ちなみに、杉山さんは余裕なのか、僕の緊張している、もしくは怖がっている顔を見るためか、学校に来ていつも通りにしている。
僕にも普通に話し掛けてくる。
腹黒だけじゃなくて、Sもあるかも。
どうやら僕が怖がっているのを我慢していると勘違いしているっぽい。
時折、すっごい嫌な笑顔を僕にだけ見せてくる。
ちなみに、杉山さんにはもう常に通過の目を常時使っている。
もう、遠慮する必要もないしね。
それと、なんだか最近頻繁に高原さんが僕を訪ねてくる。
大抵は僕とおしゃべりしてご飯を食べて帰っているんだけど。
たまに妙なことを聞いてくることがあるんだよね。
不良関係で何やら。
僕の交友関係にいる不良のこととか。
もしかしてこの前の電話、聞いていたのかな?
「心配だ。無茶しなきゃいいけど」
「なにが?」
どうやら考え事をしていて気づかなかったが授業が終わっていたらしい。
杉山さんが自分の腹黒さを隠さない笑みで問いかけてくる。
「いや、友達がちょっと無茶しそうでね。突っ走らなきゃいいけど」
「ふーん」
どうやら期待している言葉ではなかったらしい。
実に残念だといった感じの顔をしている。
「高波君、約束の日は明日だから。忘れないでね?」
「もちろん。忘れてないよ?」
そう言うと杉山さんは僕の耳に口を近づけて言う。
「まあ、来ないならこっちからみんなとお邪魔するけどね」
どうやら言外に家を襲撃すると言っているらしい。
「心配しないで。ちゃんと行くから。それで約束の場所なんだけど、どこに行けばいいかな?」
僕が全然怖がっていないことにようやく気づきだした杉山さんは面白くなさそうに言う。
「うちの高校の近くに廃校になった小学校があるでしょ?そこの体育館に夜の七時に来て。そこで君の答えを聞くから」
「りょーかい」
さて、それじゃ姉さんの活躍を期待しますか。
よほどのことが起こらなければ僕の目も使わなくてもいいだろう。
今日の夜にでも姉さんが帰ってくる。
厄介ごとを頼むことだし、明日は久々に姉さんのご機嫌取りのためにデートでもしますかね。
ちょうど約束の時間は夜だし。
朝から約束の時間までは姉さんとデートだ。
姉さんが暴走しないようにしっかり手綱を持っとかないとな。
僕は不良どものことよりも姉さんとのデートの方が怖い。
何故なら、姉さんは僕と二人で外出中に限ってさらに女性のチェックが厳しい。
食事のためにレストランに入った時のうウェイトレスの女性すら警戒していた。
何なんだ、うちの姉は。
まあ、とにかく家に帰ったら早速頼むことにしよう。
僕が杉山さんを無視して長考していたせいか機嫌が悪くなっていた。
もちろん顔は完璧に笑顔のポーカーフェイスを保っていたが、僕の通過の目には意味がない。
まあ、いいや。
このままスルーだ。
チャイムが鳴り、次の授業が始まった。
杉山さんも自分の席に帰っていった。
その後は何事もなく放課後になる。
掃除当番でもないので僕は一人でさっさと帰る。
杉山さんが何か僕に話しかけようとしていたが僕は気にすることもなくすぐに教室を出た。
ここで予想外だったのは杉山さんが追ってきたことだ。
下駄箱で杉山さんが僕に追いつく。
「待って!高波君!」
さすがにこれでは逃げられそうにない。
僕は仕方なく振り返る。
「どうしたの?杉山さん。僕に何か用?」
「うん。一緒に帰らない?」
「えっ⁉」
どうやら怖がらない僕に痺れを切らしてさらに脅そうとしているらしい。
さすがに毎回毎回通過の目使うのは疲れるな。
まあ、明日までだし我慢我慢。
「どうかな?」
周りには帰宅しようとしている他の生徒たちがいる。
そんな場で学校でもなかなか有名な杉山さんが僕に一緒に帰ろうと誘っているのだ。
杉山さんも周りの人も断らないし、断れないだろうと考えていた。
周りのギャラリーは若干ジェラシーを僕に向けてきていたが。
杉山さんの問いにどうやってこの状況から逃れようか考えていると校門の方から救世主がやって来た。
「ナ~~~~~~ツ~~~~~~~~~~~~~‼」
「メ、メシア‼」
「え?どうしたの、ナツ」
「いや、こっちの話。どうしたの?」
「せっかく私の上司がお休みくれたことだし、時間を出来るだけ有効活用しようと思ってね。ナツに少しでも早く会いたくて学校まで来ちゃった」
姉さん、満面の笑顔。
正直、自分の都合で休ませた手前、姉さんの笑顔が眩しくて直視出来ない。
「それで?そちらの女の子は誰かしら~?」
姉さんから若干嫉妬という名の殺気が漏れ出す。
「ク、クラスメイトだよ。これから帰るから挨拶してたんだ」
「ふーん?」
「さっ。帰ろ!せっかく帰って来たんだから今日は特に気合を入れて晩御飯を作るよ」
「えっ、本当に⁉じゃあ、ナツの作るハンバーグ食べたい!」
「いいよ~。それじゃ、早く帰ろうか。それじゃ、僕は帰るね。またね、杉山さん」
姉さんの登場に茫然としていた杉山さんと周りのギャラリー。
僕はそのまま姉さんを連れてさっさと帰った。
まあ、今回は車で来たわけではないようなので大分有難い。
目立つのは勘弁である。
まあ、姉さんが来た時点で色々とアウトな気がするが。
「それで?さっきの子は本当にただのクラスメイトなの?」
「まあね。それと、姉さんにお願いがあるんだけど、いい?」
「なあに~?」
「実はまた面倒な相手に家のことがバレてね。さっき下駄箱で話していた杉山さんなんだけど」
「あちゃ~。ばれちゃったか~」
「うん。それで、その子がまた厄介でね。どうやら不良と繋がりがあるらしくて。脅されているんだよね」
「今から狩ってくる」
姉さんが本気でキレた。
「待って待って!明日廃校になった小学校に来るように言われているからその時にお願いしたいんだ」
「ふう」
姉さんが怒気を収めていく。
「そう。それならその時にしっかり分からせてやらないとね」
姉さん、男前過ぎ。
「まあ、僕の問題を姉さんに丸投げに近いことを頼むことだし、明日は朝から約束の時間までデートでもしようか。それなら報酬にもなるでしょ?」
僕がそう言った瞬間、姉さんの時間が一瞬止まる。
「ナツ。もう一回言って」
「姉さん、デートしよ」
「いっ!」
一拍おいて
「やっほおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「姉さんの行きたいところについていくから。それと、手を繋ぐまではOKを出す」
「大盤振る舞いじゃない!これは明日一日はフル稼働ね」
めちゃくちゃテンションが上がってる。
(やば~。早まったかも)
「さ、帰りましょ!」
上機嫌な姉さんが腕に抱き着き、僕を引っ張っていく。
(早まったことしたな。もう確信だわ)
読んでくれて感謝です。
次の話もよろしくお願いします。




