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第1話:無能の烙印と失われたメンテナンス

はじめまして、新作の連載を開始いたします!

本作は「魔法の呪文より、道具やシステムを最適化した方が強いのでは?」という発想から生まれた、ストレスゼロの追放ざまぁ&スローライフコメディです。


サクッと読めてクスッと笑えることを意識して執筆しました!

痛快な物語をお届けしますので、どうぞお楽しみください!

「君、明日からもう来なくていいよ」


国内最大手クラン『蒼天の剣』。その第一会議室。

豪華な革張りのソファから、副マスターが解雇通知書を突き出してきた。


「理由はわかっているね。君のランクはF。戦闘スキルは皆無だ」


「はい」


「我がクランは先日、最新鋭の魔導武具を総額十億円で一括導入した。メーカーの永久保証付きだ。もう、君のような無資格の『雑用係』が装備の留め具をいじくり回す必要はない」


俺、天羽あまはカケルは、手元の紙切れを見た。


通帳の残高は数万しかない。今日のスーパーのタイムセールには行かなければ。


「聞いてるのかね? 荷物をまとめてすぐに出て行きたまえ」


「あ、はい。お世話になりました」


深く一礼し、踵を返す。

ただ、去り際に一つだけ気になった事実を口にした。


「あの、その最新武具ですけど」


「なんだ。未練がましく」


「魔力回路が詰まって熱がこもるんで。たまに裏蓋開けて、排熱スリットのホコリ取ってくださいね。扇風機の掃除と同じなんで」


「……は?」


「じゃ、失礼します」


呆け顔の副マスターを残し、俺は部屋を出た。


俺のスキル『論理最適化』。

視界に半透明のホログラムウィンドウが浮かぶ。スマホの動作確認画面と同じだ。

昨日まで俺がメンテナンスしていた十億円の剣のログは酷かった。


『魔力フロー:過負荷』

『排熱処理:不全』


作った奴は馬鹿だ。

威力を上げるためだけに火力を限界まで上げ、熱を逃がす穴を完全に塞いでいる。そのまま使えば、反動と熱で一瞬にして自壊する。


だから俺は毎日、魔力の通り道を少し削り、熱を逃がすための隙間を作っていた。塞がった換気扇のホコリを取るのと同じ理屈だ。


ホログラムの赤いエラー表示が『正常』になるように。

ただ、それだけ。家電の裏側に溜まったホコリを掃除しただけだ。


数日後。関東最大級のAランクダンジョン深層。

『蒼天の剣』のエース剣士が、十億円の魔導剣を高く掲げた。


「いくぞ! 最新鋭の力!」


眩い光がダンジョンを照らす。

エースは得意げに笑い、ボスに向かって渾身の一撃を振り下ろした。


ガァァァァァンッ!!


ボスは無傷。

エースの手元で、魔導剣の刀身が根元から爆散していた。


「え……?」


逃げ場のなくなった莫大な魔力と熱が、エースの右腕を直撃する。


「ぐあぁぁぁぁっ!?」


エースが血を吐いて吹き飛んだ。


「な、何が起きた!?」


「くそっ、援護しろ! 魔導銃を撃て!」


後衛が引き金を引く。銃身が破裂した。


「ぎゃああああっ!」


「盾を構えろ!」


重騎士が大盾を突き出す。ボスの軽い一撃を受けた瞬間、盾の内部で魔力が大爆発を起こした。


「なんで全部爆発するんだよぉぉぉっ!?」


阿鼻叫喚の地獄。最新鋭の装備は、ただの自爆兵器だった。


同日、クラン本部の緊急会議室。

モニター越しに惨状を見た副マスターは、泡を吹いていた。


「どういうことだ……!? メーカーの保証は!」


そこに、最高峰の魔導具師が青ざめた顔で駆け込んできた。


「保証もクソもありません! あの装備は『欠陥品』です!」


「はあ!?」


魔導具師は、持ち込まれた残骸を指差して震えた。


「カタログスペックだけです! 実戦で使えば、排熱処理が追いつかず一瞬で自壊する構造なんですよ!」


「し、しかし……昨日までは完璧に稼働していたぞ」


「それが異常なんだ! これを見てください!」


残骸にある、微細な溝。魔力回路のズレ。


「あり得ない。致死量の魔力反動と熱を、このわずかな溝一つで完璧に空気中へ分散させていた……! 物理法則をねじ伏せている!」


「何を言っているんだ?」


「神業ですよ! 一歩間違えば即死する暴れ馬を、完璧に乗りこなすどころかハツカネズミのように手懐けていたんです! 天才どころの騒ぎじゃない、化け物だ!」


魔導具師は畏怖に声を震わせる。


「誰ですか!? いったい誰が、こんな恐ろしい最適化を施していたんですか!?」


「だ、誰って……」


副マスターの顔から血の気が引く。

思い当たるのは一人。先日ゴミのように追い出した、あのFランクの雑用係。


『たまに裏蓋開けて、排熱スリットのホコリ取ってくださいね』


あの言葉が脳裏に蘇る。


「あ、あれは、ただのホコリ取りで……」


「ホコリ取り!? この奇跡のプロセスが掃除なわけあるかァァァッ!! 今すぐその人物を呼んでこい! さもなくばクランは明日にも全滅だぞ!」


その頃。俺は実家のアパートで、安売りのカップ麺をすすっていた。


「うーん。近所のスーパー、品出しスタッフ募集か」


スマホをスクロールしていると、突然画面が切り替わった。

着信表示。『副マスター』。


「はい」


『あ、天羽くぅぅぅんッ!!』


鼓膜が破れそうな悲鳴。俺はスマホを少し耳から離した。


『頼む、戻ってきてくれ! 君がいないとクランが壊滅する!』


「いや、俺ただの雑用係ですし。明日面接なんで」


『特別技術顧問として迎える! 報酬は月額二百万! いや、三百万だ!』


「無理です」


一方的に通話を切る。


俺はふと、部屋の片隅に積まれた古い段ボールの山に目を向けた。


どこからか、微かな隙間風が吹いてきた気がしたのだ。


その奥から、微弱な『魔力のエラー(バグ)』の匂いが漏れ出していることには、まだ気づいていなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ただのホコリ取りでクビになった主人公ですが、ここから100均グッズと家電ロジックを使った痛快な無双が始まります。


この後、1時間おきに【第4話】まで怒涛の連続更新を行います!


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