村に行こう
間に合わなかったんで18時のみ更新になります。
明日から一話投稿にしようと思います。
玲二はクゥの指差す方向に向けて森の中を歩きながら、会った時から思っていた素朴な疑問を聞いてみることした。
「なぁ、クゥは目が見えないんだよね?」
「あっはい。そう言えば言ってませんでしたね。」
まぁ、目を閉じてたし、姿が見えないって言ってたから、そうじゃないかとは思っていたけど。
「いやね。目が見えないのに相手の外見を言い当てたり、人間よりも遥かに目が良いはずの俺でも見えなかった攻撃を読んだりしてたから、なんかこう・・・魔法的な力で実は見えてるとか・・・」
少なくともそう考えなければ不可能なはずなのだが・・・
「いえ、これは生まれつきだと母から教えられました。ですから、魔法とかではないですよ。」
マジかよ。生まれつきでその能力って・・・超人なんてレベルじゃない。
「それに、私にわかるのは凄くザックリとしたことだけですよ。例えば・・・私には玲二さんは人型でガッチリとしたしたからだ身体をしていることはなんとなく分かりますがそれ以上は全然ですよ。先ほどの戦闘もそうですが、私は、あの異形の筋肉の動きと呼吸、風の切る音に異形が発する匂いでタイミングを計っています。あと攻撃が近づくと全身がピリピリするしますから。」
「いやいや、十分に凄いからね。普通何もわからないよ。」
「やはり、そうなんでしょうか・・・」
「あぁ、俺だってそうだからさ。」
「・・・ですよね。」
クゥは物憂げな表情をしてしまった。あれ、しまった地雷踏んだ!?もしかして思いだしたくない事を思い出させてしまったかもしれない・・・
「あ~、その・・・ごめん。嫌なこと思い出させちゃったかな?」
「いっいえ。レイジさんのせいでは、ないですから。」
そんな会話をしながら森の中を進んでいると木の影で何が動いたような気がした。
「何かいるな。」
「はい、来ます。野生の異形です。数は三体、狼型が二、鳥型が一です。」
クゥが俺に報告するのを待っていたかのようなタイミングで姿を現した。足が六本生え、顔中に無数の目玉、首の根元まで裂けた灰色の狼が二匹と頭部がまるで南国の花のように肉の花を咲かせた一本足の白鳥のような鳥がこちらに向かってくる。
すげぇ、数も種類もぴったりだわ。しかし、なるほど、あれが野生か・・・キモイ。
「OK、掴まっまててくれよ。」
「はい!」
迫ってくる狼型異形は、思ったより小さかった。足首より少し高い程度だった。鳥型も同様でちょっと大きいラジコンヘリぐらいしかない。
「・・・・ちっっさ!」
思わず呟いてしまった。遠くにから走ってきた時はもっと大きく見えた気がしたが。
「小さくても異形です。油断しないでください!!」
クゥに怒られて、いかんかんと気を引き締め、低くキックを放つ。
「ギャク————」
蹴りが直撃した狼型異形は短い断末魔あげ、破裂した。
「・・・・・」
もう一匹の狼型異形が足首に嚙みついてきた。全く痛くないけどね。
そのまま反対の足で踏み付けるとあっさり潰れた。
そしてさっきから地味にウザイ体当たりをしてくる鳥型異形をビンタで叩き落とすと地面に叩きつけられ絶命した。
「・・・いや、弱くね!?」
余りに弱すぎて、思わず声が出てしまった。
「まぁ・・・こうなる気はしていました。」
クゥも同じような事を思ったようだ。
「え?野生ってこんなに弱いの?」
「それは違いますよ。レイジさんが強いだけです。あんなのでも大人三~五人で対処する異形ですよ。」
「マジかよ・・・」
そりゃ人類追い詰められるわな。こんなんがうじゃうじゃ居たら・・・
「ですが、野生は大体こんなもんですよ。先ほど戦った複合型異形が強すぎただけですよ。」
あぁうん。やっぱりあいつがおかしかったのね・・・
それから、時折出てくる野生の異形を適当に倒しながら、川を越え、森進んでいくと暗くなってきたので今日は休むことにした。食料はクゥが教えてくれた木の実を俺が取って確保した。まぁ、俺は腹が減らないので全部クゥにあげよう。
「なぁ。クゥの住んでる村ってどんなところなんだ?」
「そうですね・・・」
少し考え込むような仕草をする。
「ただの村ですよ。特産品とか観光名所とかありませんし、狭いですし。」
「食料とかどうしてるんだ?」
「一応小規模ですが小麦と野菜畑がありますね。あと、少ないですが羊と鶏が居ますかね。」
ということは、主食はパンぽいな。一応卵と肉もあるようだな。
「なるほどね。一応卵や肉もあるんだな。」
「はい、と言ってもとても貴重なものですから、年に一度の祝いの席でしか食べられませんけどね。」
野生動物も絶滅しているし、生存圏が小さいから家畜も多くは飼えないから当然といえば当然だろう。
「あとは————」
それから暫く間、玲二とクゥは焚火の前で談笑していた。
翌朝、日が昇り始めた頃に村に向けて出発した。
「なぁ。あとどれぐらいで着くかわかりそうか?」
歩いても歩いてもかわらない変わらない景色に玲二は少し不安になる。
「もうじき着くとは思います。」
「もうじきね、分かった。」
「はい、すみません・・・」
「え?なんで謝るの?」
「私は、ただ肩の上に乗ってるだけで何もしていませんから・・・」
どうやら、俺がなかなかつかないから怒っていると思ったのだろうか。
「いやいや、別に怒ってないよ。それに何もしてないなんてことないでしょ。クゥがいなかったら俺はあの異形の殺されたかもしれないからさ。」
「そう言ってくれると嬉しです。」
そう言って、クゥは笑ってくれた。あぁ~可愛いなぁ畜生!!
「あっ!ありました。村の入り口です。」
クゥが指差した方を見ると、五メートル位の赤茶色の壁が四方を囲んでいるのが見えた。
「へぇ、あれが村か・・・」
なんか村というか、都市みたいな立派な壁があるけどね。
なんてことを考えながら歩を進ませると、壁の内側から武装した人達がぞろぞろと出てきて、こちらに武器を向けた。
あっ・・・厄介なことになりそうな気配がビンビンにしますね。
コメントや評価して頂けると作者の励みになりますのでよろしければお願いします。