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e-Sportsは君と共に  作者: むじく
1章 始まりの時
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20/22

ビギナーズラック?

「おっし」


自分の負けでもチームが勝てばそれで良いのである。

明人が小さくガッツポーズをした横でそれぞれが勝利の余韻に浸っていた。


1回戦とは違いリスクを負う場面もあり、少々疲れ気味に見える。


「はー、面白かったですっ。」


「成瀬君が上手く起点を作ってくれたわね。一番先に落ちたけど一番貢献したんじゃないかしら、多分」


「二言多くないか?その前後は本当に必要か?」


「でも凄く緊張しました。誰かの役割があって、それぞれが上手く動くことであんなに有利に戦えるんですね!」


「次は通用しないけどね。この場だから上手くいったような感じもあるし。」


「でもチームで戦ってるーって感じがしてあたしも楽しかった。出来れば生還したかったけど」


それぞれが思い思いの感想を述べる中で五鈴が視線を変えて感心する。


「夕凪さん、良い立ち回りだったと思う。その場には居なかったけどあの対面を持ちこたえてくれたおかげで有利なまま試合を運べたわ。ありがとう。」


心から言ったように聞こえるそれは、彼女を認めているのだろう。


明人からすればどちらも上手いという認識は変わっていないが五鈴が褒めるぐらいなのだから少なからず上の方なんだと思う。


「ん...普通です。」


「うん」


その返答に納得し次の試合の打ち合わせに入った。


そのまま第三回戦も無難に勝利した明人達は決勝戦に臨む前、


「相手チーム、..チームAなんだけど別格ねあそこ。みんな経験者みたいな動きしてる。多分指揮官が上手いのね」


今までの戦い方を見て冷静に分析をする。こういうイベントであってもしっかり別試合も見ているところが律儀な五鈴らしい。


「でも実際は私たちと同じような初心者さんですよね?私負けたくないです...。」


「大丈夫、あたしたちだって五鈴さん達に教えてもらったし。このままの勢いで勝とうよ」


ここまで3戦やってきたが、五鈴を除くと夕凪と咲宮の射撃能力の高さが目立つ。


咲宮は状況次第では明人にも勝る攻撃を誇り、毎試合相手を一人は確実に倒していて相当自身が付いたようだった。

夕凪は一度も戦死することの無い安定感でこのチームを支えている。

空見も必要どころでは良いプレイを見せるのでチームの総合力としても急造にしては悪くないと明人は思っていた。


だがそれ以上の懸念材料があちらのチームにあるらしい。


会場に入ると主催者が最後の試合だからとムードを盛り上げていく。

決勝戦を勝てばその賞品は豪華、これが大一番であることは間違いなかった。

その中、先の話し合いにあった五鈴の作戦もきっちりと頭に入っている。後は神のみぞ知るというやつだろう。


最後の戦いということもあり相手チームと向き合って挨拶から入る。チーム代表の五鈴が一歩前に、それと合わせて相手の代表もこちらに寄る。

本来ならそこで軽く挨拶を交わすだけで良かったのだがそうはならなかった。


「あれー?もしかして五鈴じゃない?」


相手の代表が五鈴のことを知っているらしい。

見たところ同じ高校生のように見える。相手の姿はこの場では目立つ派手な衣装に身を包み軽いノリが好きそうな言葉遣い。

どう考えても五鈴との繋がりなんて0、あり得ない組み合わせである。


「──ッ!」


その言葉を受けて五鈴の表情が一瞬にして強張る。


「私のこと覚えてないかなー?ほら同じチームだったじゃん。」


「田崎..」


「そーそー。覚えてたんだ。まー結構組んでたしね。懐かしいな~。」


田崎と呼ばれた女性の口調は単に思い出したというだけ。それ以上の感情は無いように聞こえる。


「なんかあった?まどうでもいいけどさ。」


「なんでもない。」


「ふーん。ってか、なんでここに居るの?てっきり辞めたのかと思ってたし。」


「その話は今関係ないでしょ!?」


場を凍り付かせるような五鈴の声。ここまで感情を表に出す五鈴を誰一人として見たことがなかった。

重たい空気の中ただ一人気にならないように口を動かす。


「うんうん、それでこそ五鈴だね。思い出したなー嫌な記憶。」


「...。」


「─私も辞めちゃった。プロ目指すの。」


「えっ...」


突然自虐的に言ったそれに反応し目を丸くする五鈴。


「毎日辛いし。練習全然しなくなったし。だから今こうやってたまに遊んでんの。そしたら五鈴いるんだもん、驚いちゃったー。あははっ。」


「えーそれでは各選手席についてください。」


主催者の合図でそれぞれの選手が席に移動し始める。


「おい、五鈴。」

「大丈夫。勝つわよ...絶対に。」


「...おう。」


全員がヘッドセットを装着し、目の前の画面に神経を研ぎ澄ませる。本イベントを締めくくる最後の試合が始まった。

開始マップに合わせた作戦も皆には共有されている。



「─やっぱり相手が一枚上ね。」


「じゃあどうするんだ?」


「相手の意表をかくしかないでしょ。大丈夫、私を信じなさい。」


今までも五鈴の作戦通りにやってきて成果が出ている。そこで反論しよう物は一人もいるはずもない。

だからこそ、こんな状況を予測することは出来なかった。



「まずいです、みなさん囲まれてますっ!」


マップは砂丘がメイン。

広いマップ、その遠くの方で孤立した空見が明人たちに呼びかけた。


相手の裏をかこうとしたのだがその作戦が単純に読まれていたのかたまたまハマらなかったのか、リスクを背負った作戦だっただけに五鈴たちは苦渋の選択を強いられる状況になっていた。


明人たちは周囲から迫ってくる敵チームにじりじり詰められている状態、少しずつではあるものの逃げ道をつぶされ一刻の猶予もない。


五鈴は唇を噛む。


「まずいよ...これ。」


片面を咲宮と夕凪が、もう片面を明人と五鈴が守っているものの挟まれていることには変わりない。そんなときでも五鈴の口から次の指示が出ることはなく、


「夕凪が足止めします。その間に逃げて下さい」


切羽詰まっている状況から1つの希望に縋るようにして、明人たちは中央に造られた道からの脱出を図る。

敵チームに対して何秒か無防備な状態をさらしてしまうが背に腹は代えられない。明人が考えるとしてもそれ最善のように思えた。


「なんとか逃げ切れたか...。咲宮。」


「大丈夫。一度千羽ちゃんと合流しないと」


「...後は、頼みました。」


身を挺した夕凪のお陰で追っ手を振り切った二人だったが、ふと一機足りないことに気づく。


「五鈴!?何してんだ!?」


五鈴は先ほどから挟まれていた持ち場を離れずに敵車両と戦っている。

一人孤立するかのように思えた五鈴の戦車は敵一体が相手をして、残りは明人たちを追うために追尾してきていた。


「私が相手の司令塔を倒す。倒したら勝てる。成瀬君達は持ちこたえてて。」


「...分かった。咲宮、空見、ここからは俺が指示を出す。まずは敵の居ない場所に...」


その答えは五鈴が目の前の戦いに集中するのに十分なものだった。今までの試合を見てからからこそ分かる。今対峙している敵は田崎だ。


戦車のスペック的には五鈴の方が微有利というだけで体力が同じだけ残っている今、どちらが勝つのか実力がモノをいう勝負。

それはどれだけ努力を続けてきたか、それだけ。そして先ほどの田崎の発言である。


「努力しなくなった人に私が負けるわけない...。」


違いに急所を当てられないように車体を動かしつつも、発射する直前の秒以下の時間で敵の弱点を狙う攻撃で一瞬の隙もない。

五鈴の持てる技術を全て駆使して田崎に真っ向勝負を挑む。


「こんのッ...!」


田崎の砲弾が五鈴の弱点にヒットし、大きなダメージが入ってしまう。

細かな技術で少しずつ差を作ってもこういった一発が入ってしまうと集中力が途切れてしまうところだ。それでも、


「まだまだっ...私はこんなものじゃないっ!」


その集中力に叶う人間はこの場にはいなかった。

僅かな差ではあるが勝ちは勝ち。五鈴は田崎を倒すことができた。


こちらに運が向いてきている。司令塔を倒した今相手の指揮系統は混乱しているはずなのだ。


「よし..次は!...あ...えっ...」


ゲーム画面上で点灯している敵味方の数は2対3。

もちろん負けているのは五鈴のチーム。その生き残っていた一人でさえ、


「くっそ...」


体力は0となり、状況は1対3。

数的有利を活かして戦うこのゲームにとってその差は致命的だった。


結果、それ以上敵を倒すことは出来ず敗北。2位という形でトーナメントは幕を閉じた。

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