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記憶を封じられた新米冒険者、森で誰にも見えないはずのS級冒険者を拾いました  作者:


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稼ぎ時の夕暮れ草原

 森の入口での採取や指輪の登録を終えた私は、ふたたび草原側へと戻ってきた。


 本来なら、登録を終えたばかりの転移陣を使えば、すぐに帰れる。でも今日は、あえて歩いて戻ることに決めていた。


 理由はひとつ。素材の採取と、異常出没しているスモッグラットの狩りだ。


 この平原で採取をしていると出現する可能性ありとは書いてあったけど。ここ数日はドーム周辺でスモッグラットの異常発生が続いている。


 今なら稼げる。


 珍しい現象にはリスクもあるけれど、報酬もある。スモッグラットが落とす物は赤い輝石と毛皮だけでなく、大きめの個体からは牙や肉まで手に入る可能性があるらしいのだ。


 明日の午前中には病院へ行きたい。診察代は5000リル。今の所持金では足りない。けれど、今からもうひと踏ん張りすれば、余裕で足りるはずだ。


「……行こう」


 決意とともに、私は森を背にして草原を歩き出した。東門まではゆるやかな下り坂。空は夕暮れ色に染まりはじめていた。


 風が少し強くなってきたせいか、草むらが不規則に揺れている。耳を澄ませ、気配を探りながら慎重に進んでいくと――


「いた……!」


 低く唸るような音とともに、灰色の体が素早く草をかき分けて飛び出してくる。スモッグラット。しかも、大きい。


 通常の個体よりも一回り以上もある体躯。目つきも鋭く、動きが鈍そうに見えて、地を滑るような速さで接近してくる。


 私はすぐに弓に矢を番え、素早く狙いを定めた。足止めを狙って、地面ぎりぎりに矢を放つ。


 ズッ。


 矢が草を貫いた瞬間、スモッグラットの動きが一瞬止まる。


「今だっ……!」


 私はすかさず短剣を抜いて接近し、急所めがけて一閃。


 鋭い悲鳴のような声とともに、魔物の体が崩れ落ち、霧のように消えていく。そして赤い輝石がその場に転がり、肉厚な皮膚の下から牙が一本飛び出し、淡い光を放っていた。


「……牙と、肉。やっぱり大きい個体は違う」


 指輪に意識を集中し、回収する。赤い輝石、毛皮、牙、そして肉の断片がすべて、そっと吸い込まれていく。


 《スモッグラット素材:輝石×1、毛皮×1、牙×1、肉×1》


 草むらをかき分けながら、さらに進む。注意深く進んでいると、再び……今度は二体同時に飛び出してきた。


 弓で片方を引きつけ、もう片方には身を低くして距離を詰めてからの突き。連続して動きながら、二体とも倒すことができた。


 《素材入手:輝石×2、毛皮×2、牙×1、肉×1》


 その後も、注意深く歩きながら周辺を探索し、さらに一体を討伐。合計で四体。うち大きめの個体は二体。牙と肉を複数得られたのは、大きな収穫だった。


「……これで、少しは足しになるはず」


 ようやく東門が見えてくる頃には、空はすっかり薄暗くなっていた。ドームの境界線に近づくと、赤い障壁が淡く光っているのが見える。


 私は手を伸ばし、その光をくぐるようにしてドーム内へと入った。


 今日の目的は果たせた。


 あとは、素材をギルドで換金して、明日の診察に備えるだけ。


「……うん、頑張った」


 静かにそう呟いた私は、疲労の中にも、小さな手応えを感じながら、街の光の方へと歩き出した。



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