13 酒屋のリンジー
ドウェインの商会のお詫びは終わり、あとは何かを購入するだけだったが、なかなか品物が決まらなかった。
「魔道具っていっぱいあるけど、何を選んだら良いか分からないわ」
「シェリル様は魔道具をお持ちで?」
「えぇ。……この人に押し付けられたものを」
そう言って私は呪いのペンダントを見せる。
「これは……また色々やりましたね」
ちらりとフィランダーの顔を見て呆れた顔を浮かべるドウェイン。
「誰が付与したか分かるのですか?」
「えぇ。付与は私が教えましたからね。こちら弟子のフィランダーです」
彼が呼び捨てで言うと、本人は照れた表情を浮かべた。
「ドウェインは俺の師匠なんだ。凝ったデザインにしたい時だけ依頼してるんだけど、シェリルにはどうしても俺の力だけでやりたかったから……シンプルなデザインに……」
「付与は完璧なのですが……デザインはまだまだですね。なら、凝ったデザインのものを用意しましょう。シェリル様は主にどんなものを身につける事が多いでしょうか?」
「私? ……あんまりつけないのよね。ペンダントは楽で良いけど……ネックレスに興味があるかな。パーティーの時にドレスと合わせてもいいと思うのよね」
ペンダントは普段も使用できるアクセサリー。一方ネックレスはパーティーや訪問着に合わせる事が出来るペンダントより格上のアクセサリーだ。
「ではネックレスを用意しましょう。少々お待ちくださいませ」
ドウェインは奥へ行き、しばらくすると三つのネックレスを持って帰って来た。
「まずは真珠のネックレスです。シンプルですがどんな場所にも合います。持って損は無い一品ですよ。こちらは付与してないものです。水の魔力と相性が良いので、フィランダーに付与してもらうのが一番かと」
「買った」
「は?」
「フィランダー。落ち着きなさい。シェリル様に選んでもらいましょう」
「……はい」
フィランダーが大人しくなったところでドウェインは次のネックレスを出した。
「次にアクアマリンのネックレスです。ちょうどフィランダーの瞳の色と同じものが手に入ったので、いつか奥様にと思い私が造ったものです」
今私がしているペンダントと同じ雫型。大きさはそれより若干大きく、その周りに銀が巻きついている様なデザインだった。銀のところに小さなダイヤモンドが入っているのがポイントだ。
「私からの結婚祝い……としたかったのですが、買って頂けると幸いです」
「買おう」
「フィランダー……」
「では次に……」
ドウェインは無視して最後のネックレスを取り出した。
「こちらは魔石を使ったネックレスになります。青色の石なので水の魔力を持つ魔獣だったのでしょう。石は表面を薄く削った以外は加工はしておりません」
まるでサファイアの様な色の丸い石だった。
その周りに波が立っている様な銀細工が石を際立たせている。
小さな真珠のチェーンもついているからか、今まで見たものよりも高額が予想された。
「これも素敵ですね。……選べないなぁ」
「全部買います」
「え!?」
「お買い上げ、ありがとうございます」
「ちょ……」
「お金を落とすにはちょうど良い金額なんだよ」
私が止める間もなく三つともお買い上げし、ドウェインはホクホク顔で「ありがとうございます」と私達を送り出してくれた。
一旦ドウェインの商会を出て、私に回復魔法をかけたあと、次の目的地へと歩く。
これから行くのは最近出来たばかりの店だそうだ。
着くと少し可愛らしい外観のお店だった。
中へ入ると私と同じくらいの歳の女性店員がいた。
「いらっしゃいませ」
「失礼。こちらの店主かな?」
「あ! きょ、今日でしたっけ? あぁあ私、リンジーと申しますぅ」
「初めまして。次期領主のフィランダー・ヘインズです」
「妻のシェリル・ヘインズです」
「ど、どどど、どうぞこちらへ」
動揺しているリンジーは、テーブルと椅子が置いてある所へ案内してくれた。
椅子に座って周りを見ると、どうやらお酒を売る所らしい。
「ここは……お酒を売っている所?」
「はい。それ以外にもジュースを売ってます。……本当はバーをやりたかったんですけどね。あんなに恐い人達が来るんだと思うと……ちょっともう……」
「それは……申し訳ない」
「いいえ。村で反対されていたのを押し切って来たので……自業自得ですよ。この時間ですので、ジュースになさいますか?」
「あぁ、頼む。ジュース代は払うから、一番高いのを勧めて欲しい」
「え!? ほっ、本当ですか!? ではこのブドウジュースがオススメです。これ最高級ワインに使用するブドウから作られています」
「それで良い?」
私はうなずきリンジーは一旦奥に引っ込んでから、コップに注がれたジュースを持って私達の前に出してくれた。
飲むと濃厚なブドウの味が口の中に広がる。
「美味しい」
「ワインと違ってエグ味がない分飲みやすいね」
「お口にあって良かったです」
「ジュースは他にもあるの?」
「はい。色々ございます」
「なら何本か欲しいな。なるべく金額が高いもので」
「あ、ありがとうございます!」
結果ジュース六本買い、三本だけは贈答用に包んでもらった。
「これ誰かにあげるの?」
「うん。土産がわりに」
ホクホク顔のリンジーはとても良い笑顔でお礼をいう。
「ありがとうございました」
「そういえば、君はどこの村から来たの?」
「ランガ村です」
「あ、そこもしかしたら、あとで行くところだ」
「本当ですか!? なら、蜂蜜がオススメですよ」
「蜂蜜?」
「えぇ。果物が多いですから、花も多いのです。蜜があるところに蜂が来るようになったので、養蜂も盛んになりました。でも、まだ数が多くなくて……村に行くなら必ず買って欲しいものです」
「それは良い事を聞いた。土産の参考にするよ」
「ありがとうございます。あ、でもお酒とジュースはうちで買ってくださいね?」
ちゃっかりしているリンジーに私は好感を持った。
リンジーは第三章の1話で被害に遭った酒場の女店主です。




