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04 デートはどこへ?

主人公視点から使用人視点に変わります。





「次はルースのが聞きたいなぁ」

「私がここに居るのはパトリック様に会った事がきっかけですね」


 パトリックとは、王都の騎士団長でフィランダーのお父上の事である。


「へぇ。どこで会ったの?」

「……王城です。実は私、女騎士になりたくて王都に試験を受けに行ったのです」





 農家で育ったルースは教会で勉強しながら剣も学んでいたらしい。

 おとぎ話に出てくる女騎士に憧れ、女騎士になると言って家を出たのだそう。


「でも結果は不合格でした」

「え……ルースの実力なら……」

「それが……筆記がダメダメで……途方に暮れていたところをパトリック様に拾ってもらったのです」

「なんかルースが子犬か子猫みたいな表現ね」

「でもあながち間違えではないです。今更故郷には戻りづらかったので……」


 それでルースの話が終わった。






「最後はセリーナかな?」


 すると彼女の目が泳ぎ始める。


「……私は、皆みたいに真っ当な形で働いてくる訳ではないので……」

「真っ当?」

「セリーナは元々この邸に忍び込んだ密偵だったのですよ」

「ネル!!」

「えぇ!? まさかの影!?」


 セリーナは罰が悪そうな顔でうなずいた。


「……元々他領のスラム街で育ったんですよ。気付いた時には親はいなくて……周りの大人になんとか助けられながら生きていたんです。それで娼婦になるのが嫌でフリーの密偵の仕事に就いたのですが……初任務がよりにもよってここだったのです」


 ヘインズ邸に忍び込んだセリーナは庭であっさりバーナビーに捕まってしまったのだという。


「それで……依頼人を白状させられて……死ぬのとここで働くのとどっちが良いと若に言われて……」

「え……じゃあ無理矢理?」

「あー……でもここで働けて結果的に良かったと思います。給料も良いですし……ただ、忠誠心は他の人より欠けますね」

「……セリーナの様にここの使用人になった人は他にも居るのかしら?」

「シェリル様。心配しなくて大丈夫ですよ。ちゃんと個人の意思は組んでくれてますから。それに有益だと思ったからここで働けるんですよ。ここに忍び込んだ人全員殺すって事はないです」


 「多分」って言葉が聞こえる気がするけど……。

 まぁ……敵だったって事だしね。それくらい脅さないと味方になってはくれないか。


 改めてフィランダーが領主らしい怖い人って事は分かったかな。





 ※





 ちょっと! 若の事をこき下ろしてどうするのよ!!


 そんな圧がネルから届いた。


 ごめん。つい……。


 セリーナは申し訳ないという顔を浮かべる。

 そんな中、ルースが口を開いた。


「シェリル様。私、シェリル様の恋愛観を聞きたいです」


「良くぞ聞いた!!」とネルとセリーナは心の中でルースを褒め称えた。


「私も聞きたいです」

「本当はどんな人がタイプなのですか?」

「え~? タイプ? 前に言ったじゃない。結婚する気はなかったって」

「そ、それでも知りたいです」

「うーん……真面目な人。顔のタイプは……前に言ったけどパトリック様ね。……顔が整っているからというよりは真面目な印象を受ける顔だったからかなぁ……」

「シェリル様は真面目が好きなのですね」

「好感が持てるのよね。一途そうっていうのが良いのかも」

「あぁ~……若様とは真逆ですね」

「そうなのよ。あとは……一緒にいてホッと出来る人かなぁ。フィランダーの隣って落ち着かないのよね。綺麗過ぎて」

「美形の欠点ってあるんですね」

「だって私の隣に居るのよ? 比べられるに決まってるじゃない」

「あぁ……」


 それに関して侍女達は何も言えなかった。







「私達は若の隣に居るのがシェリル様で良かったですよ」

「でももっと美人の方が良かったんじゃない?」

「いいえ。シェリル様可愛いではありませんか。それに使用人に優しい人なんて私達からしたら最高ですよ」


 侍女達が力強くうなずくとシェリルはたじろぐ。


「そ……そう?」

「ほっ……他には? 他にもこれが理想だったって事があるんじゃないですか?」

「他か……」

「例えばもし旦那様が出来たらこうして欲しかったとか」

「ん~……旦那様になる前にやりたかったのは……やっぱりデートかな」

「そうですよね……」

「食べ歩きとかして見たいんだけど……無理そう」

「あ! 顔!! 顔を隠せばいいんじゃないですか? ローブを被って歩いてもらえば……」

「不審者になれと?」

「二人で冒険者風の格好をするのですよ。それなら怪しまれません」

「意地でも顔見ようとする人が現れそうだけど……。それにフードが取れたら終わりじゃない?」

「あ……」


 どう考えても難しいという結果になった。


「デートなら演劇じゃダメなんですか?」

「演劇って苦手なのよ。特に歴史もの。史実が真実って訳じゃないでしょ? それより食堂巡りとか商店巡りがしたい」

「それは分かります。私も演劇観るより食べ物の方が気になります」

「屋台の食べ歩きもいいですよね」


 ネル以外は花より団子寄りで、話が恋愛から食に移ろうという空気を変えたのはシェリルだった。





「ねぇ、皆は旦那様とどんなデートをしてるの?」


 その問いに侍女三人の顔が一気に赤くなる。


「ネルは? どんなデートをしたの?」

「え……と、私はですね……先程言った演劇です。たまに休みが合う時は足を運ぶ事があります。あとは……本屋巡りですね」

「なるほど。セリーナは?」

「私も先程言った屋台の食べ歩きです。たまに馬に乗って遠乗りもありますね」

「あ、それもいいね! ルースは?」

「私は王都へ行って食堂食べ歩きです。ニールは料理長ですから、料理の流行りを学ぶために行きます。私は武器に興味あるのでよく武器屋にも寄りますよ。なので冒険者風の格好で行くのです」

「だからさっき冒険者風の格好って言ったの?」

「はい。その方が食堂にも立ち寄りやすいですし、武器屋に行っても違和感がないので」

「確かに。店主にとやかく言われなそう」

「そうなんです! 最初に訪れた時に嫌な目で見られてしまいまして……それ以来気をつけてます」

「変装も面白いわね。皆がどういうきっかけで旦那様と付き合う事になったのか聞いてもいい?」


 侍女達が予定していたのはシェリルから話を聞き出す事だった。なのに攻守交代とばかりにシェリルが侍女達の事を根掘り葉掘り聞き出そうとして来る。


 不味いと焦ったが良い案は出てこなかった。



お忘れかもしれないので補足を。

ネルの旦那は副執事長のユーイン。

セリーナの旦那は庭師長のバーナビー。

ルースの旦那は料理長のニールです。

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