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14 逃走

冒頭残酷なシーンありです。作者的に……。



 ビルは指導していた兵と二人で偵察任務に就いていたらしい。しかし、時間になっても二人がなかなか戻って来ない事からおかしいと感じた騎士達が確かめに行った。


 すると、一人の遺体を発見。着ていた服装からビルだと分かった。顔は……人ではない何かによって叩きつけられた様な跡が複数残っており、誰だか判別出来ないくらい酷い状況だった。


 そしてもう一人の兵士の姿が見当たらない。ビルの遺体の状況から、やったのは恐らく魔法が使える人物。騎士の上層部はその兵士こそ敵側のスパイだと断定した。






 伝令の言葉に、私は身体の力が入らなくなった。今日は使いものにならないと、私は暇を頂き寄宿舎へと戻った。

 部屋の扉を閉じた途端、身体の力が一気に抜け床にへたり込んでしまった。


「ビル……嘘でしょ? 嘘だ。そうなんでしょ?」


 胸のネックレスを両手で掴むと、目からは涙がとめどなく流れ続ける。


「グズッ! ……あぁ……あー……ビルゥ……ビル……ビルゥ……」


 その日は泣いて泣いて……泣き倒して、何とかベッドに飛び込み、また泣き続けた。


 次の日の朝。ジェネ様からの手紙が部屋に届き、強制的にその日は休みとなった。






 散々泣き倒したその次の日は、痛々しい顔になりながらも復帰した。


「ご心配、ご迷惑をお掛けしました」

「ホリー……まだ、休んでいても良いのよ?」

「いえ……これ以上はさすがに休めません」


 今は戦時中。これ以上迷惑は掛けられない。


 ビルを殺したテナージャが憎い!


 私はその気力だけで立っていた。


 ビルの葬儀はごく近親者で行い、ロッドフォード子爵は戦争中を理由に弔問を一切断った。私も勤務が終わった後に王都にあるロッドフォード子爵邸に向かったが、門前払いを食らってしまった。






 その後、伝令から最悪の知らせが届いた。


「と……砦が、崩されました」

「はぁ……やっぱり」


 この事を予想していたのか、ジェネ様は意外と冷静だった。


「お父様とお兄様は?」

「まだ……何も……。捕まってはいない様ですが……」


 王も王太子も戦場に行っている。不安で仕方がないだろう。ビルがあんな事になってからジェネ様の顔色がさらに悪くなった。


 すると廊下から声が聞こえた。


「お逃げください!! ……うっ!!」


 さっき退出した伝令の声だ!!


 私とダーシーさんは急いでジェネ様を連れ本棚の隠し通路へと急ぎ、三人で部屋から脱出した。







 脱出先は元々人通りが少ない城下町の一角。歴史的建造物として、国が立ち入りを禁止した古くて小さい修道院だった。


 聖職者が使っていたとみられる机の下に繋がっており、そこから私は顔を出した。ゆっくりと動いて周りに敵がいないか確認する。修道院の中を隈無く見て、敵がいない事を確認し、すぐに机の下へと向かう。


「大丈夫です。上がってきてください」


 私が声をかけると、ジェネ様とダーシーさんは階段をゆっくり登ってきた。ダーシーさんが登り切ると、今出て来たところを近くにあった小さな本棚を動かし重石をした。本棚には本もぎっちり入って居るため、充分重しになるだろう。


「すぐにここから離れましょう」


 ダーシーさんはすぐにジェネ様を誘導し、外へと出た。私もジェネ様を護りながらついていく。






 外に出ると、城下町には人が居なかった。

 城下町に住んで居た平民達は皆、近隣の山へ避難していたため、今居るのはシランキオの兵士や騎士、そして侵入して来たテナージャの兵士と騎士だ。


「ここからまず、近くの村へと向かいます。動物や魔獣もおりますので、慎重に動きましょう」


 ダーシーさんが先陣を切り、ジェネ様がその後ろを着いて行く。私は殿を任され、ジェネ様の後を追いつつ、周囲に注意を払う。修道院の裏には穴が空いており、そこを潜ると鬱蒼と木々が生えているところに出た。シランキオの王都の周りには森が広がっている。ここを出入り出来るのは王族のみ。平民ですら入ってこれないところにあった。


 その森を抜けると、近隣の村へと続く秘密の裏道が現れる。そこから村へと避難するのだ。






 幸い動物や魔獣と出会う事なく、順調に村へと進んで行った。


「良かったです。魔獣がいると厄介でしたので」

「本当。妙に静かだわ」

「魔獣達も不穏な空気を察知したのではないでしょうか」

「そうかもね。臆病な魔獣は逃げ出す事もあるらしいから」

「とにかく、急がなきゃね」


 ジェネ様の言葉に、私とダーシーさんは同時にうなづいた。






 歩みを進めて行くと、もうすぐで村の入り口というところに人が居た。運悪く敵兵だった様ですぐに隠れたが見つかってしまった。


「女だ!! 王女が居たぞー!!」


 私達はすぐに方向を変えて全速力で走る。


 どうして……この道に敵が!?

 村の人だって知らない道なのに……なぜ!?

 それに……どうして「王女」ってすぐに分かったの!?

 まさか……情報が漏れている?


 混乱しながら私はジェネ様の後ろを護りながら、走るしかなかった。





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