46 正しい嫌がらせの返し方
「どなたから来たか分からない贈り物など、受けとるわけがございませんよね」
急遽、呼ばれた、知らん貴族の知らん令嬢の開くお茶会なんて、出てやる義理も何も無い。
メンバー見ても、勝ち気そうな、でも幼い雰囲気の残るお子ちゃま達ばかり。なぜ、私を呼んだのか、不思議なんだけど。
もしかして、若く見られてるとか?
なーんて。でも、私が何も出来ない守られるだけのお嬢様だと、なぜか勘違いしているお子ちゃま達が多いようで。一度現実を見せないと学習しないらしいと知ったので。
ええ、売られた喧嘩は買いますとも。もちろん、全力でね。
この所、とにかく贈り物がすごくて。リーさんが受け取らないと知るや、扉の前に無断で置いていくのが流行りらしい。
最初は、念のためと好奇心とで開封していたんだけど、嫌がらせとしては(私にとって)微妙でアホみたいなものばかり(虫とか腐敗した食べ物とか)が送られて来るので、とうとう切れたのだ。
「ラムダス家に養子になったとは言え、庶民の出なのでしょう?貴族らしい振る舞いに慣れるのは大変ですわね」
「見た目だけよろしくても、ねぇ。教養がございませんと、ほほほ」
なーんて会話に私が傷付くとでも思ってるのかしら。左から右に抜けていくだけなのにね。いいとこのご令嬢方は、繊細でいらっしゃる。
庶民も何も、生まれた世界が違いますからね。育ちも何もって話ですよ。そもそも畑が違います。
それに見た目は、誉めていただきありがとうございますって話だし、教養は、自分がどのレベルか分からないから比べようがない。
ただ、ミレー様やリーさんは、太鼓判を押してくれてるけどね。
「そう言えばですけど」
今、思い出した様に声をあげれば、揚げ足を取りたいからか、すぐに反応があった。
「なんでございますの?カテリーナ様」
「先日から、どなたからか分からない贈り物がたくさん届くんです」
周りの令嬢達の表情が一瞬でキラキラと輝きだした。それはまるで、私が贈ったのよとでも言い出しそうな雰囲気で。
「まぁ、素敵。どのような物だったんですの?」
白々しい。周りの令嬢もおほほうふふと笑っているけど、底意地の悪さが表情に出てますよー。
「え、知りませんよ、中身なんて」
そう答えれば、皆が一斉に驚いた。
「どなたから来たか分からない贈り物など、受けとるわけがございませんよね」
冒頭のセリフに加えて、おほほと笑ってみる。
当たり前じゃない?開ける方がアホでしょう、そんなの。
「ですが、きっと送ってくださった方は、この中身が良いものだと思って送ってくださったと思うので、送り返しました」
「え?」
皆、可笑しい位にポカンとしているけど、そんなにビックリする事?
「送り主のクローゼットの中に、戻るよう返しました」
私が言ったことの内容を、もう一度よく考えているようだ。ご令嬢達の、瞬きの回数が倍増してる気がする。
「あ、実行犯の主のクローゼットにちゃんと戻りますよ?あるじです、あ、る、じ」
言ってること、分かります?分かりますよね?と、視線を順に合わせていく。
「私、ミレー様に色々教わってるんですけど、魔方陣改良の才能があったようで。ミレー様にお手伝い戴いた結果、調度良い魔方陣が出来上がったので試しに使ってみました」
にやりと笑って、
「どなたの所へ戻るのか、楽しみですわよね」
コテンと首を傾げてみる。ご令嬢の皆様はみるみるうちに顔色を悪くして、退席していった。侍女の皆さんも慌ててたなぁ。
生ぬるい嫌がらせなんて、痛くも痒くもないわ。
わはは。




