ベル姉様はオチャメさん? 2度目の朝は、ドキドキです♪
姉様の抱擁から解放されて、状況の説明を聞きました。
………。
『……つまり、リュニベール様は、ユナに会いたいが為に、仕事を放棄してきたと』
『ダメじゃんね~♪』
『他の女神様方や、フェリシア様に叱られませんか?』
「…可愛い“妹”との約束は…世界の安定に勝る…よ…?」
いやいやいや。
待って、姉様!?
お仕事ほっぽっちゃ駄目デスヨ!?
姉様のお仕事は、世界の調整の筈です。
お仕事を放置してしまうと、何かの切っ掛けでクラウディアが崩壊しちゃうかも知れませんよね!?
「…大丈夫…。…眷属達がいるから…」
ぷるぷる震えて血の気の失せた私をみて、姉様がちょっと焦った様に、やや早口で私の不安を否定してくれました。
………。
「………半日くらいなら………」
「!?」
ほっとしたところに、姉様がポツリと呟いて、視線をそっと逸らします。
姉様~!?
それって、眷属さん達が物凄く大変な思いをするんじゃ!?
『あははははぁ~。大丈夫かな~?』
『眷属…。リュニベール様の眷属とは、ドラゴン達であろう?
主がいない状態で、魔素濃度の調節以外の仕事など、無茶振りではないのか?』
『ですから、半日が限度なのでしょうね…』
3匹が小さく纏まって何か言ってますが、声が小さいので聞こえません。
というか、本当に姉様がここにいて大丈夫なのでしょうか…。
会えたことは、本当に嬉しいのに、なんだか素直に喜べません…。
姉様にも、姉様の眷属さん達にも、申し訳ないです。
『ユナ~、心配なら、フェリシア様に聞いてみれば~?
朝の挨拶、まだでしょ~?』
アルタイルが肩に戻ってきて、お母さんとの会話を薦めてくれます。
そうですね♪
悩んで落ち込むより、相談してこれからを決めましょう!
*~*~*~*~*
結果として、姉様はお母さんに叱られました。
転移体憑依なら未だしも、実体化するとは何事ですか! との御叱りです。
………。
すみません。『え!? そっち!?』とか思ったのは、私だけじゃないよね?
うん。
シリウス達3匹も、お互いに目を合わせて苦笑? してます。
聖獣って、表情が豊かだよね~♪
…クラウディアに来てから、何度目の現実逃避だろ…。
と、取り敢えず半日だけなら、姉様がクラウディアにいても大丈夫らしいです。
姉様が実体化したのは、転移体憑依に使う“転移体”が用意出来なかったからだそう。
転移体を造るのに、時間がかかるので、『“直ぐに会いに行く”という約束を守れなくなるから』というのが、姉様の言い分でした。
姉様がクラウディアに実体化したのは、今日の深夜1刻らしいので、昼間の13刻が門限だ。
それまでは、一緒にいられます!
早めに起きられたので、現在時刻は朝の7刻前。
8刻から数えても、5時間は一緒にいられますね♪
そうと決まれば、サクッと朝ご飯です!
…と、着替えて無かった…。
ダメでしょ、私………。
*~*~*~*~*
朝の準備は大変ですね~♪
昨日は、着替えてから洗面所に行きましたが、何度も扉を開閉するのは、3歳児には面倒です。
いくら開閉の力は少量で済む(魔道具ですからね…)とはいえ、ほぼ体当たりと仰け反る感じですから…。
しかも、ドアノブの位置がちょっと高い。
軽く爪先立ちデスヨ?
なので、今日は多少お行儀が悪くても、先に洗顔と歯磨きを済ませに行きました!
寝間着のまま室外に出るのは、なんだか気が退けましたが、着替えの前に水を使うのは、アリかもです♪
着替えた後だと、たまに失敗して、胸元や袖が濡れちゃいますから。
寝間着なら、洗濯に出せますが、室内着やお出掛け着だと、選び直して着替えなきゃいけなくなりますからね…。
洗面所から戻って、着替えを選びます。
姉様は、魔法で身体を作っているので、身支度は必要ないらしい。
……ちょっと羨ましいかも…。
1人でぱたぱたと動きまわり、着替えを済ませます。
本日は、ワンピース。
初日に着てたシンプルなのじゃなくて、リボンとフリルが可愛らしい、ほんのりお嬢様風のオレンジ系のワンピース。
初日は、薄紫のAラインワンピースだったから、今日のワンピースはちょっと華やか。
腰の後ろを大きめリボンで絞る形です!
昨日は移動の事を考えて、露出を最低限に抑えましたが、今日は1日お家の中か、出てもお散歩くらいで戻るつもりなので、好きなお洋服を着てみます♪
以前は似合わないと思ってたジャンルのお洋服も、お母さんそっくりな外見ならば似合うのですよ!
中身は兎も角、外見はお人形さん並みに、人外の可愛らしさですからね~♪
可愛いのも、格好良いのも、シンプルなのも、綺麗な物まで着こなせちゃう♪
美人さん(美幼女?)て凄い!
他人事ですね~♪ 浮かれてますね~♪
浮かれてますよ? いけませんか?
だって嬉しいんだもん!!
「…おいで、ユナ…。…背中のリボン…曲がって…る…」
にゃんですと!?
浮かれて姿見の前でクルクル回ってたら、クローゼットの扉に寄り掛かった姉様に呼ばれました。
はい。
ばっちり観られてましたね…。
だって、空気を孕んでふわりと靡くスカートが、ちょっと楽しかったんですよ~ぅ。
軽く黒歴史デスカ?
いやいや。小さい子の“お遊び”で流してくだしゃい!
あうっ! 焦ったら、心の声まで噛んじゃった…。
しょんぼり落ち込めばいいのか、ほんのり照れればいいのか、分かりませんね。
でも、折角の可愛らしいお洋服。
ちゃんと着なくちゃダメ駄目です!
姉様が直してくれるなら、サクッと甘えておきましょう♪
「…ん…出来た…♪」
いそいそと近付いた私を、くるりと半回転させて、腰のリボンを直した姉様は、とっても満足そうな声で保証し、振り返った私の頭を撫でてくれます。
くしゃくしゃと髪をかき混ぜる様に撫でて、お花が綻ぶみたいに笑う姉様は、笑い方がお母さんにそっくりですね♪
「ありがとぉ、ねぇしゃま」
笑顔の姉様には、満面の笑顔を返しましょう♪
会いに来てくれて、ありがとう。
大好き、ベル姉様。