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道の先に 【旅】

読みに来てくださりありがとうございます。

遂に最終回です。

 塩気を含んだ爽快な風が麦色の髪を撫でた。

 丘の上から見た眼下の海は日の光をめいいっぱい浴びて青く揺れていた。


「先生、どうして夏の海は青く見えるのですか?」

 そう隣の青年に問うのは緑の色のTシャツにジーンズを履いている十代後半の少女だった。

「そうだねぇ、夏の妖精が海を青く染めているんだよ」

 彼女の問いに対して、微笑みながら笑う青年は麦色の長髪と萌えた緑の瞳を持っていた。

「その妖精も先生の詩に出てくる妖精の森(・・・・)の妖精なの?」

「そうだよ」

 全ての妖精は妖精の森から生まれるんだ、と返す青年の耳は人間の耳のように丸かった。

「先生は妖精の森に行った事、あるの?」

 そう聞く少女の瞳はいつかの人間の少女と同じ晴れ渡った空の色をしていた。

「……あるよ」

「あるの!?」

 穏やかな海の波を眺めながら答える青年の言葉に少女は目を輝かせて詰め寄る。その様子はまるで宝箱を見つけた子どものようだった。

「どんなところなの?」

 妖精達はどんな暮らしをしているの? と立て続けに質問する少女に青年は、落ち着いて、と言いながらも嬉しそうに口を開く。

「大きな森に沢山の妖精達が住んでいるんだ。ある妖精は靴を沢山作っていて、ある妖精は地下道に繫がる部屋に住んでいるんだ」

 色んな妖精達が楽しく暮らしているんだよ、と答える青年は少女を見つめて笑った。

「それに、妖精の王様も――」

「アル! もう帰るよ〜」

 話を続けようとする青年の声をかき消すように、少し離れた所から一人の女性の声が聞こえた。

「あ……ごめんね。連れが呼んでいるようだ」

 妖精の事に興味を持ってもらえて嬉しかったよ、と謝って立ち上がる青年は同じように立ち上がった少女に手を差し出した。

「私も嬉しいです。友人はみんな、妖精はただのおとぎ話だって言うんです」

 だから私も大好きな妖精の話が中々出来なかった……。そう苦笑する少女は、どこか寂しそうな顔をする。

「でも、あの妖精の森の詩(・・・・・・)で有名なアルロフ先生にこんな所で会えるなんて」

 満面の笑みで、これまでの人生で一番嬉しいです、と言う少女に青年も同じように笑い返す。

「僕も君と話せて楽しかったよ」

「こちらこそ、ありがとうございました」

 互いに礼を言い、二人は握手を交わす。

 その間を、優しい潮風がスーッと通り抜けていった。


「用は済んだ?」

 少女と別れ一台の赤い車の近くまで戻って来た青年が海を眺めながら羽織っていた麻のカーディガンを脱いでいると、先程声を掛けてきた女性が茶色の髪をなびかせて車から出てきた。

「うん、有意義な時間だったよ」

 そう答える青年はどこか満足そうだ。

「そっちは?」

「こちらも上々よ」

 収穫はあった? と聞く青年に女性の方も笑顔で答える。

「ここらへんの()達も上手くやってるみたい」

 ニコニコと笑みを浮かべる彼女に青年は、それは良かった、と彼女の頭を撫でた。

「じゃあ、次の町へ向かおうか」

 次は港町だっけ? と聞く青年に女性は、そうよ、と暖かく微笑む。


「じゃあ、車をお願いしますね。詩人のアルロフ先生(・・・・・・・・・)

「そちらこそ、道案内頼みますよ|スペイル助手《》」

 そして一瞬の間が二人の間を包んだ。

「ふふふ」

「ははは」

 その何とも言えない間に、思わず二人のは吹き出した。

「じゃあ……行こうか」

「うん」

 そう言って、二人は車へと向かう。


 麦色の髪の青年の腰には、キラキラと煌めく灰が入った小瓶が下げられていた。


【終章 道の先に • 終】


【妖精の森の秘密 -2つの違えた道- • 完】

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

引き続き、カクヨムをメインにこちらでも活動していく予定ですので、フォローなどして暖かく見守っていただけると嬉しいです。 


番外編をカクヨムの方に不定期で投稿していく予定です。

そちらで投稿し次第、こちらにも掲載する予定です。

お楽しみに。


改めて、ここまで読んでくださりありがとうございました。

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