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3-2 神殿にて

 どこまで続くか分からない道が続く。

 光こそあれど自分の周りだけなのである。光の外に出た瞬間、そこは自分の姿すら確認出来ない闇。神殿に辿り着くまでは、出来る限り魔力を温存するしかない。

 十五分程、そんな暗闇の中を歩いているとだいぶ遠くに一等星程の一点の光が見えた。

 どうやらあそこが神殿のようだ。

「神殿までの構造が変わっている……」

 五十年前、二人の葬儀に来た時、こんなにあの入り口から歩いた記憶がない。かといって、構造を変えることができるほど王城の大木の構造は単純じゃない。

「とすると、認識阻害魔法か……?」

 ここまでくると結局は堂々巡りなのだ。城の主、スペイルに聞かなければ分からない。

 取り敢えず見えた光に向かって歩みを進める。

 辿り着いた先はやはり神殿だった。

 先程までの手入れされていない洞窟に比べ、綺麗に並べられた新雪を思わせるほどの白さを持つ大理石のタイルが床を覆い、壁、天井ともに平らにならされている。その壁には右から春、夏、秋、冬、そして夏と秋の間にこの大木がそれぞれ織られた壁一面を覆うほどの五つのタペストリーが掛けられている。

 まさにそこは五十年前から変わらず神殿と呼ぶに相応しい場所だった。

 中央奥、繊細な彫刻が施された大理石の神台。そこには色鮮やかな二つの壺が並べられ置かれていた。その手前には、もうカラカラに色褪せてまった一輪の白薔薇が置かれている。どうやら、だいぶ前に訪れた人物がいるらしい。

「元気にしてたか?」

 アルロフの声がオベロンとティタニアの遺灰が置かれた神殿内に無常に響く。

 手に持っていた二輪の薔薇は強く握りすぎて少し弱りきっているようだった。

 それを朽ちた白薔薇の横にそっと置いてやった。

「お前達の娘は……。スペイルは何を考えてるんだろうな」

 誰も答えないのは分かっていたが、アルロフは問わずには居られなかった。

 暫時の間、アルロフは二人の遺灰を眺めながら立ち尽くしていた。

「なんであのコ(・・・)を一人にしたんだよ」

 自然と目尻に涙がうっすら浮かぶ。

アルロフの瞳に神殿の光景と重なるようにオベロンとティタニアが微笑んでいる光景が重なって映った。唯一長年、自分と近い時の流れで生きてきた彼らを失った喪失感をアルロフは思い出した。

 彼らの死は、突然訪れた。その知らせは、やはり王城からの一通の手紙だった。

 アルロフ達エルフだけでなく、妖精の森中がその事実を受け入れきれなかった。

 人間界で大魔法使いと呼ばれていたアルロフでさえ、二人を生き返らせることは叶わなかった。

「あ――」

 彼らの事を思いせめてもの祈り魔法を発動させようとした時、またあの二つの白い靄が現れた。

 今度は霧のように濃くはっきりと目視することができる。 

 そしてそれらは中央にある王城の大木のタペストリーに向かっていって吸い込まれるようにして消えた。

「?!」

 その二つの靄に誘われるようにして、アルロフは王城の大木が織られたタペストリーに触れた。

 しかしその感触は布越しにに感じる壁ではなく、スカッと壁が無い感覚だった。

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