第17話 元獣人の村へ
今日も長い一日だった。
あの後狩ってきたガナコを解体して一部を使用人の皆さんに分けた。
そうしたらウゴのお母さんがお礼にガナコの毛皮でファナのブーツを作ってくれると言う。
ガナコの毛皮は見かけはモコモコだが軽くて丈夫で何より暖かい。
そんな訳でウゴの家でファナの足サイズを採寸して貰って、それから夕食。
ガナコステーキ食べたらもうファナは眠そうだったので風呂を入れて就寝。
いや、色々有意義な一日だったけれどさ。
さて、ここでファナとゆっくり寝ていたいけれど仕事をするとするか。
寝ているファナの頭を撫でてからログアウト。
今日の出来事のレポートを作成し始める。
◇◇◇
翌朝。
「突然だけれどさ。そろそろファナのお父さん達のお墓を作りに行こう。そろそろ近寄っても危険は無いだろうしさ」
そう提案したのには訳がある。
昨日の件、全滅した獣人村と出現した悪しき存在、儀式の痕跡。
更に俺なりの考察を色々書き込んだレポートを提出した結果。
長い返答と調査依頼等が混じった連絡が俺のメールボックスに届いたのである。
しかも通常のメールとVRMMOとしての運営連絡用のメール、両方でだ。
返答の早さといいただ事ではない。
創造神からの連絡事項はこんな感じだ。
〇 神という存在は『プルンルナ』世界にも『アウカルナ』世界群にも実在しない。あくまでこの世界の住民の思考の中に存在するだけの存在である。
〇 故に悪しき存在という存在も本来は存在するものではない。その実在を確認したならば、それは運営が意図も把握もしていないものである。
〇 報告のあった獣人村跡については当方でも追跡調査を実施する。
〇 報告された儀式の痕跡についても当方で追跡調査を実施する。
〇 同様な痕跡が無いか、可能な限り調査を実施せよ。
〇 なお今回の報告につき基本給を本日から3,213円引き上げる事とする。
基本給の引き上げは何気に影響が大きい。
ボーナスとかにも関わってくるしさ。
でも俺が気になったのは他の内容だ。
悪しき存在は本来存在するものではないという返答。
では俺の魔法で悪しき存在と認識されたものは何なのか。
そしてあの儀式の意味と読めない文字は何だったのだろうか。
神様の指示でなくとも俺は調査を続けるつもりだった。
万が一の事態があってファナが危険な目にあったら大変だからだ。
そして少しでも手掛かりがありそうだと言えばやっぱりファナがいた獣人村。
何せ他に俺は獣人の村は知らないから。
ファナも他の獣人の村は知らないそうだ。
でもファナがいた村にその辺の資料になるものがあるかもしれない。
それに墓をつくっておきたいというのもある。
ファナの持ち物もあれば持って来たいし。
「そうですね。ありがとうございます」
「何なら俺一人で行ってもいいけれどさ」
「いえ、行きます」
道そのものは前回行った時に把握している。
少し遠いが『健脚』で行けば問題無い。
村長を誘おうか考えたが今回は置いていくことにした。
いざ悪しき存在等が出たりした結果、俺が強力な魔法を使える事を知られるとあまり具合が良くない。
ファナと2人ならいくら強力な魔法を使っても大丈夫だし。
「それじゃ遠いから最初から飛ばしていくぞ」
「わかりました」
最初から『健脚』で飛ばす。
なおファナも危なげなくついてきている。
ひょっとして俺よりファナの方が速いかな。
でも前に出して確かめるのはやめておく。
本当にファナの方が速いとちょい悲しいから。
これでも創造神から直々にチートな力を授かっているのにな。
この季節は下草の葉が落ちているから走るのも楽だ。
前回と同様2時間で元獣人の村に到着。
やはり人の気配は全く無い。
死臭は既に無くなったようだ。
なお谷間の村跡と違い異様な空気は感じない。
「やっぱりもう誰も居ないんですね」
「とりあえずファナの家に行こうか」
「わかりました」
辺りを観察しながら歩くが特に注意が必要そうなものは無い。
人がいなくて荒れただけ。
盗賊とかそういったものが入った感じも見当たらない。
ファナの家は屋根が一部崩れていた。
「もう壊れ始めているんですね」
「住んでいる人が居なくなると早いみたいだ」
家の中へ入る。
「まずはお父さんやお母さんをお墓へ運ぼうか」
「そうですね」
そんな訳で両親の部屋。
既に死体は白骨化している。
ベッドで寝た姿勢の骨と床で倒れている骨。
浄化の魔法をかけた後、それぞれ袋に入れる。
なおこの辺では骨壺は使わない。
袋に入れて代々の墓へ入れるのが慣習だ。
「この村の墓地はどの辺だ?」
「南西側の少し高いところです」
袋を持って村の外れへ。
「このお墓です」
代々の墓らしいところへお骨を入れる。
「地界の神サーベイの元で平穏な暮らしを」
ファナの言葉にあわせておれも頭を下げる。
ちなみに地界とはここの宗教で説かれている死人の国だ。
どこかの宗教と違って天国と地獄のように別れていない。
サーベイはそこの主神とされている神である。




