第16話 お家へ帰る前に
「結局これはどういう事だったんでしょうか」
ファナが俺に尋ねる。
そういえばファナにはまだ何も説明していないよな。
「後で説明するよ。もう一つだけやっておきたい事がある」
念の為、もしくは魔に捧げられた犠牲者の魂を救う為。
「最高完全浄化!」
周りが光の壁に覆われる。
光の粒を漂わせながら光の壁が周りへと広がっていく。
光の壁はやがて村だった場所全部を覆い、光の粉に変わって消えて行った。
後には明らかに明るい雰囲気になった元の景色。
「嫌な雰囲気が消えました」
ファナがそう感じたなら任務完了だろう。
「それじゃ帰るか。歩きながら説明する」
もう走査する必要が無いから『健脚』を使う。
実は魔力が残り少ないから魔獣や猛獣に会いたくないというのもある。
強力な光属性魔法2発と整地魔法なんて使ったのだ。
チートな俺でも魔力は半分以下しか残っていない。
『健脚』で猛烈な速度で移動しつつ今までの事をファナに説明する。
「さっきの村が流行病で全滅しかかっているのを利用した連中がいたのだろう。そして生き残った村人をあの祭壇で何らかの存在に捧げる儀式をした。その結果あの村の空間が魔に汚染され、悪しき存在の住処になり、影響で付近の獣が魔獣化したりした訳だ。魔獣と言えど基本は獣だからな。魔や悪しき存在を嫌って逃げて来たんだろ。グチャグチャの森の方へな」
「何の為にそんな事をしたのでしょう。それに悪しき存在とは何ですか」
「理由は俺もわからない。あと 悪しき存在も実は見たのは初めてだ。悪しき存在はあるべき形や姿を壊す存在だと神学上では説明されている。でもその実態は誰も知らない」
「悪の神みたいなものでしょうか」
「人にとって理解できないという意味ではそうかもしれないな」
今の説明でファナに誤魔化した部分はいくつかある。
例えば儀式の理由。
大魔王という存在と何か関係があるのではないか。
創造神からの調査を進めた結果ここに行きついたのだ。
単なる勘よりは可能性が高いだろう。
あとは流行病。
これすら実はこの事件にかかわっている可能性を俺は感じている。
単なる流行風邪ではなく、治療術士がいない獣人の村を狙ったのではないか。
獣人の集落は国の領土の周囲に位置している事が多い。
そのことを利用してこの国の周囲でああいった儀式をする為、流行病を流したのではないだろうか。
ただのこの辺で時折発生する流行風邪にしては死亡率が高すぎる。
勿論こんな事ファナには言えない。
何せファナの集落も全滅したのだから。
俺の思い違いならいい。
でもファナのいた集落も調べておく必要があるかもしれない。
墓作りとか供養とかいう理由で行ってみてもいいかもしれないな。
ただ行くとすれば明日以降にしよう。
魔力の残りの問題もあるしそれに疲れた。
もう家に帰ってご飯食べてファナの頭をなでながらゆっくり寝たい。
以前はファナと一緒に寝るのにちょっと抵抗があったが今は毎夜しっかり同じベッドで寝ている。
寝ているファナが可愛いのだ。
なのでついつい頭をなでなでしたり犬耳をなでなでしたり。
そうしたら犬耳がぴくぴく動いたりするのがまた可愛い。
別に俺はロリコンとか変態じゃないぞ。
ファナが可愛いだけだからな。
「サクヤ様」
ファナに呼ばれでどきっとする。
やましい事を考えていた訳じゃないぞ。
家族として当然の権利だからな。
そう弁解しそうになるのをこらえて尋ねる。
「どうした、ファナ」
「今日はこのまま帰るんですよね」
このまま帰らないという事は……
いかん俺は何を考えているのだ。
思考の一部を抹消!
「そうだけれど何か?」
つとめて自然にそう答える。
「良ければ少し狩りをしていいですか。ここまで遠くに来るのも久しぶりですし、途中にそこそこ大きなガナコがいたと思います。あれを狩っていったらエリク達も喜ぶと思いますので」
良かった、そんな事か。
いや別に俺はやましい事を考えていたんじゃないぞ。
そんな色々な心の声等を無視していつも通りの口調で答える。
「そうだな。じゃあここから先はファナに任せる」
魔力が少ないけれどそれくらいはいいだろう。
それに俺はファナの頼みには弱いのだ。
「それじゃ行きます」
俺はファナのふさふさな尻尾を見ながら道なき草地を走っていく。
それにしてもファナ、タフだよな。
犬の獣人だから狩りが好きというのもあるんだろうけれど。




