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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第十二章: みんなで伝説探究

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012_05_とにかく前に進むだけ

「あれ、明るい……? それに上と違って、けっこうキレイに残ってるけど……」


 はしごを降りた先の地下室は、天井に取り付けられたライトの白い光に照らされて明るかった。どういう仕掛けなんだか分からないけど、暗い中を探すよりもずっといいから助かるな。地下室は現実の私の部屋(六畳)よりちょっと狭いくらいかなあ。本がびっしり並べられた本棚と机だけがおかれた飾り気のない部屋だった。書斎か研究室って感じかな。


「写真立て……? あれ、この二人、もしかして……」


 わたしは机の上に唯一置かれていた写真立てを手に取った。そこには驚いたように、不思議そうに茶色の大きな目を見開いた、白い髪に褐色の肌をしたかわいらしい女性と、いたずらっぽい紫の瞳で、面白そうに笑っている、金髪で色の白い――なんというか、全体に色素が薄い――男性の二人が写っていた。女性の肩に回された腕に、ふわふわとした金の羽根が見える。ってことは……。


「まるでそのまま、姿を写し取ったかのような絵だな……。この腕の羽根、【超越者】か? 女性の方は我々と同じ竜人だな。とすると、この二人が幸福な未来の祖先ということか……? とにかくやはりここが、件の超越者のいた場所だったようだな」


 ツバサも写真を覗き込むと、そう頷いた。何か他に、手がかりないかな? あ、写真の裏に何か書いてあったりしないかな? どこで撮ったとか、誰ととか、いつとか。わたしは写真立てから写真を引き抜き、裏返す。


「あ……何か書いてあったけど読めない」


 そうだった、書いてあっても読めないんだった。がっくり肩を落とすわたしに、ツバサも首を振った。


「超越者の文字だな。残念だが私にも読めない。だが……お前達の仲間の、あの町にいた学者達なら読めるのではないか?」


「うん、そうだね。研究所の人達なら、解読してくれるかも。さっき連絡したし、きっと協力してくれるはず。文字は読めないにしても、何か他に手がかりになるものもあるかもしれないから、もうちょっと探してみよう!」


 さらに何かないか探して、わたしは机の引き出しを開けた。引き出しにはペンとか文房具っぽいものがきちんと整理して入れられていて、その横にひもがくるくると巻き付けられたカードがあった。巻きついたひもを外してカードを見ると、カードの表面にはさっきの男の顔写真と何か文字が入っている。あれ? この字ってさっきのと一緒かな? さっきの写真の裏と見比べてみると、同じものがあった。これがきっと、この男の人の名前なんだろうな。じゃあこれ、IDカードだ。うん、首から下げるひももついてるし! 何かの役に立ちそうな――


「これは……この絵は……!」


 IDカード(多分)を見つけてニヤニヤしているわたしの耳に、ツバサの驚いた声が飛び込んできた。慌てて彼のところに行くと、彼は本棚の前で、開いたページを見つめて立ち尽くしていた。何が書いてあるのかと、わたしは彼の持っていた本――っていうよりノートっぽいかな――をのぞきこむ。


「これって……!」


 わたしは思わず息をのんだ。わたしが見たのと違って白黒で、ラフに書かれているし、破れたりインクが薄れていたりでよく分からないけれど、丸や四角や三角が並ぶこの図柄はごくごく最近見たものだった。


「ミライのサ……あーいや、何でもない。えっと……そうだ、そんなに驚いてるってことはツバサはこれが一体何か知ってるの? 詳しく聞かせてくれない?」


 サプライズなんだからツバサには言わない、ってミライと約束したんだった。今更、な気もするけど、できるだけ言いたくないな。それに、ミライがこれと同じ図柄を刺繍してたのは見たけど、一体この図がどんな意味を持ってるか、っていうのは知らないんだよね。ツバサが知っているなら、せっかくだし教えてもらおう。


「部族の戦士長だけに着用を許された布の柄に似ているな。もしかすると、我らが英雄はこの絵を元に図柄を作ったのかもしれない」


 ツバサはじっとノートを見つめたまま答えた。ミライが刺繍してた柄って、そんないわれがあったんだ。部族の戦士長専用ってことは……じゃあツバサが着るのに一番ふさわしい服を作ってた、って事なのか。やっぱりツバサのために、って思ってたんじゃないか! だったらどうしてそのツバサの元を離れて、また破壊神を復活させるなんて……。っと、今は答えの出ないことを考えてる場合じゃなかった。


「ええと、ツバサ達の英雄がこの人に会ったのは、この人が破壊神の完全封印の話をしに来たときだよね……男はこの絵――この絵はここに残ってるから、コピーか清書したやつかも――を持って、竜人のところに来た、って事だよね……。じゃあこれ、何かその方法に関係あるものかもしれないってこと!?」


 これって有力な手がかりなんじゃ、と嬉しくなってつい声が大きくなる。


「ねえ、他のページに何か書いてな……あ、読めない」


 舞い上がってツバサの手からノートをひったくり、ページをめくって気が付いた。超越者の文字だから読めないってさっきやったばかりなのに、すっかり忘れちゃってた。隣でツバサが苦笑していた。ま……まあ、この図がどう関係するのかは分からないけど、何か手がかりが見つかっただけでも一歩前進だよね!



「あら? リンとツバサ……二人?」

「あれ? ちょっと見ないうちに半減? 離職率高いなあ。やだなあ、白騎士団(ホワイトナイツ)ってそんなブラック職場なの?」


 ふいにそんな声が聞こえて振り返ってみると、マドカさんとレイさんが降りてきていた。その後から研究員さんたちもはしごを降りてくる。さっき連絡して、もう調査のためにみんな来てくれたってことか。


「何があったのか、話してくれるかしら?」


 マドカさんはキッと素早くレイさんを睨みつけてから、わたしに向き直って尋ねた。


「あ、はい。ここに来る途中で金騎士団(ゴールドナイツ)と運営のショウさんが襲ってきて――」


 わたしはマドカさんに今までの経緯を説明した。


 襲ってきた狙いはゲートを開く方法を知っているミライだったこと。


 カンがそのミライを人質に取って強硬派に寝返ったこと。


 そのカンにそそのかされて、ミライがまた破壊神を復活させようと、最後の遺跡の封印を解くカギである宝剣を持つ強硬派と一緒に行くと決めてしまったこと。


 それから、この部屋の持ち主のことと、ここにある超越者のノートにツバサ達の部族に伝わる図柄が描かれていたこと、などなど。


「そう……報告ありがとう。二人とも大変だったわね。カンとミライの事は、置いておきましょう。今はどうしようもないわ。破壊神を何とかする方が先だわね。もう早速研究所から研究員さん達に来てもらってるし、解読もじきにできると思うわ」


 黙ってうなずきながら話を聴いていたマドカさんは、わたしが話し終えると、いつも通り落ち着いた表情でそう答えた。そして、

 

「でも、ツバサはともかくリンもそんな事があったにしては随分落ち着いているわね。無理してる……というわけでもなさそうだし……」


 と、やや意外そうにわたしを見た。そう、自分でも意外なんだけど、これらの出来事は割と落ち着いて話せたんだ。辛い事って、思い出すだけで辛くなるはずなのに。かといって、もうどうでもいいとかいうわけでもないし、忘れたわけでもない。なんだかちょっと不思議な感じ。


「ホントはさっきまですっごくへこんでたんですけど、今はもう大丈夫です。

 そうですね、さっき、ツバサとも話したんですけど、まずは破壊神を何とかする方法ですよね。で、ミライが最後の遺跡の封印を解く前にそれを見つけて、彼女を連れ戻しに行って、とにかく復活を止めます。

 カンの事は、一発殴って説教。それでも邪魔するつもりなら、やっつける感じで!」


 わたしはきっぱり答える。彼が何を考えてたとしても、わたしのやることは大枠変わるわけじゃない。とにかく破壊神の復活を止めてゲートを閉じる、だ。以上終了!


「うわ、それだと何にしても一発殴るのは確定じゃない。容赦ないなあ。っていうか君も意外と武闘派なんだね。ツバサの影響……じゃあなさそうだねぇ」


 レイさんは苦笑交じりに言いながら、ちらっとツバサを見ると肩をすくめた。


「お前達が思っているほど我々は好戦的ではないぞ」


 ツバサは心外だ、とむっとした顔で首を振った。レイさんは少し怯えた顔で後ずさる。


「と、いうわけで、マドカさん、また修行、お願いできますか? あのサボり魔に色々後悔させてやらないと」


 わたしがそう頼むと、マドカさんは少しの間面食らっていた。けれど、やがて何だかおかしそうにふっと笑うと、


「もちろんいいわよん。アタシがみっちり鍛えてアゲルわ。

 ま、でもあのコも意外と頑張るから、舐めてかかっちゃダメよ?」


 と言ってパチンとウインクした。よーし、修行だ修行。わたしの邪魔をする人には、だれであろうと勝たなくちゃ!


 強くなるぞ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 『012_05_とにかく前に進むだけ』 やることが変わらないなら落ち込んでる暇はないよね! 幸いカンたちならやっつけても死ぬわけじゃないし!! それにこういう時は動いていた方が気が紛れるも…
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