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フォルトゥナ・エクスプローラ・オンライン  作者: 須藤 晴人
第八章: いやいや対人戦闘!

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008_09_ミライと語る女子トーク

「実は……付き合ってる人がいたんだけど、ずっと浮気してるんじゃないかって疑惑があったんだよね――」


 ミライが知りたいといった黒雲の弱味――わたしが淀んだ黒雲(カン)以上にどんよりしている原因――を、わたしは話すことにした。


 ネネと一緒にいるのを見て、浮気疑惑を問い詰めたけど否定された事。だからそれを信じることにしたこと。


 一緒にいる時間を増やそうと、Fortuna eXplorerに誘おうとしてたこと。でももう既に、ネネと一緒に参加していたこと。


 彼らが白騎士団(わたしたち)に戦いを挑んできたこと。ユキにとってネネは必死で守る対象だけど、わたしはただの敵でしかなかったこと。


 彼を倒して、もう彼とは関わらないことにしたこと。


 ずっと黙って聞いていたミライは、わたしが話し終えると、


「ちょっと待ちなさい、何よそれ? 破壊神の尖兵たる黒雲が恋愛で悩んで落ち込んでいるっていうの!?」


 がばっと立ち上がり、ものすごく驚いた顔でわたしに詰め寄った。そこはそんなに驚くところなの? 一体わたし達を何だと思ってるんだか。


「って、そうか。ミライから見たらみんな同じよくわからない黒い人型の影なんだっけ。これ、わたしたちの本体じゃないんだ。本体は、ミライとそう変わらないよ」


 彼女は目をぱちくりさせていたけど、少しすると、「本体は神の国にいて、仮の姿でこの世に降臨するのね」、とか言ってなんだか納得したようだった。ちょっと……いや大分違う。でもこれ以上、わたしには説明できないし、仕方ない。それで通すしかないか。


 まじまじとわたしを見る彼女は、黒雲も自分たちと同じような存在と知って、こちらに興味を持ったようにも見えた。


「でも……自分を裏切った相手と、自分で戦って決着を付ける。それができるのは羨ましいわ」


 彼女は少しうつむいて、そんなことをポツリと呟いた。羨ましい? 自分も戦いたいってこと? あー、そう言えば竜人は男女の力の差が大きいんだっけ。そうでなくてもその相手がツバサだとしたら、絶対勝てそうにない。


「ミライは――」


「それで? 裏切り者を始末してどんな気分かしら?」


 自分を裏切ったツバサを許せないの、とわたしが質問しようとするのを遮り、ミライが有無を言わさない調子で聞いてきた。


「始末ってわけじゃないけど……別にそれで気が晴れたとかはなかったなあ。もういいや、って思っちゃった。結局ずっと、つまらないって思われてたみたいだし。

 だからもう忘れようって思うんだけど、でもやっぱりモヤモヤするっていうか……」


「何故? その女と別れないから? 嫌われたから? まだそいつを好きなのかしら? そもそも何が好きだったのよ?」


 彼女はわたしの顔をのぞき込んで、矢継ぎ早に尋ねた。彼女の紫色の瞳に、わたしの戸惑った顔が映りこんだ。


「うーん……今はもう、好きじゃない、かな。浮気してたのがよりによって嫌いな女なのも、自分のこと好きじゃないってわかったのも、確かにあるな。でも、何か分からないけど、それだけじゃないのかも」


 ミライはわたしの話をじっとうなずきながら聞いていた。


「それから、何が好きだったか、かあ……。

 仕事教えてくれたり、困った事の相談に乗ってくれたり、わたしの事色々助けてくれた。バイトも勉強もバンドも頑張ってて、何でもできて憧れだった。人気のスポットとかもよく知ってて、一緒にいろんなところに連れて行ってくれて楽しかったし――」


「はん、何だ、単に自分に優しくしてくれる男にひょいひょいついていっただけじゃない。話を聞く限り、実際は自分より弱い女を庇護下において尊敬されたいだけの男ね、きっと。

 結局貴女は自分に都合の良いところしか見てないからよ。黒雲も意外と馬鹿なのね!」


 彼とのことを思い出して、悲しくなるわたしに追い打ちをかけるように、ミライは高圧的にクスリと笑った。ヒドイなあ……でも。


「ミライの言う通り、かも。彼がわたしを見てなかったのが悲しかったけど、わたしもそうだった。結局、都合の良いところを見てただけで、それが違ったから嫌になっただけだ」


 きっと、それがモヤモヤの原因だったのかな。話してみて良かった。彼女にお礼を言うと、それが不思議だったのか、ちょっと戸惑った顔をしていた。


 でも何か不思議な感じだな。こんなに聞いてくれるとは思わなかった。彼女はわたしが【裏切者】をどう思っているかに興味があったのかな。そういえば前の時、ツバサのこともそう呼んでたっけ。皇女と結婚したこと、非難してたな。やっぱりそこがポイントだと思うんだけど……。でも絶対、わたしの場合みたいなただの浮気なんかじゃないよね。ツバサはそんな不誠実な感じの人でもなかったし。


「ねえ、ミライは一体、ツバサ――ええと、黎明の翼か――のどんなところが好きだったの? で、何であんなに憎むようになっちゃったの? 何がそんなに許せなかったの?」

 ずっと気になっていたことを思いきって聞いてみた。わたしだって話したんだから、話してくれるかなあ、と思ったのだけど。


「……貴女には関係ないわ」


 ミライはさっと顔をこわばらせ、目をそらすとぴしゃりと言った。急に心を閉ざしてしまったようだった。


 やっぱり、聞いちゃいけなかったのかな。ツバサの事はタブーみたい。そんな風に言うことないのに、ってちょっと思うけど、彼女の事情を考えたら仕方ないのかも。


「余計な事聞いて、ゴメン。わたしの話、聞いてくれてありがとう。おかげで気持ちが整理できた。

 それじゃ、帰るね」


 わたしはそれだけ言って、ミライを残して部屋を出る。


 彼を憎んでいる理由がきっと、破壊神を復活させようって動機の一つだと思うんだよね。それがなくなったら、彼女を止められるんじゃないかな。


 だから、もっとミライとツバサの事、探ってみよう。きっとそこにヒントがあるはずだ。彼女からしたら余計なお世話かもしれないけど、でも頑張ろう。


 とにかく、一旦戻ろうっと。臨時で研究所内のどこかに変わったんだっけ。迷わないように気を付けなくちゃ。

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