012_08_過去の想いを読み取ろう#3
「あのー、ところでレイさんがそんなに言うってことはやっぱりこの図柄、重要だってことですよね。
【超越者】の男は火山の制御装置を直そうとしてたわけだし、レイさんもさっき破壊神を封印するために必要だ、って言ってたから……これはそのための手がかり……でもなんで絵なんだろう? 何かの暗号、とかですか?」
実はずっと気になっていたことをここぞとばかりに聞いてみようとして話しているうちに、ちょっと分かった気がしたんだけど……やっぱり分からなかった。そんなわたしの様子にレイさんは軽い笑みを浮かべると、ツバサの方を見て、
「あ、ごめんねツバサ。ちょっと僕らだけで話させてね?」
と、一言ことわった。ツバサが「構わん」とうなずいたので、わたしは翻訳アプリのスイッチは切り、レイさんの言葉を待つ。
「まあ、そうだねえ……大体そんなところさ。暗号……ってわけじゃないと思うけどね、だって隠す必要はないだろうからさ。君も言ったとおり、どうやら遺跡は火山からエネルギーを取り出すと同時に大規模な噴火を抑制する装置らしい。で、その装置が何をするかってのを一定の規則……記法で図に表したものがコレじゃないかなーと僕は考えてるんだ」
レイさんはちょっと困った顔をした後、そう説明してくれた。わたしにも分かるようにカンタンにざっくり言うにはどうしたらいいか、結構悩んでる様子だった。ごめんなさい、難しい話は分からないんです。でも、おかげで何となく分かった気がする。
「ここに書いてあるように、遺跡――火山の制御装置?――が動くってことですか? あ、プログラムみたいな感じですか? そういえば小学校のときとか、絵を書いたりブロック並べたり、何かやったかも。ああいう感じの何かかな。
で、制御装置の欠陥を調べてたって話だったから……バグってたのを直したのがこれってことですか!?」
ミライの作った刺繍を指差して尋ねると、レイさんは軽くうなずいた。でも、どこか晴れない表情だった。
「多分ね。だからこっちに書き換えれば、制御装置は直せるはずなんだけどね。ただ……日記にあったとおり、修正する前に竜人達がやってきて、火山の制御装置、兼、火山からエネルギーを取り出す装置を使用不能にしてしまった。だからこれの動作確認は出来ていないはずで、本当に正しいかは分からない。それにこっちに書き換える方法も分からないのさ。まあ書き換えるのは、制御装置のところに行って、直接これを打ち込めば何とかなりそうな感じではあるんだけどね……」
彼は首を横に振り、残念そうに呟いた。上手く行くかは分からないけど、でも全く方法がないってわけじゃないんだ。よかった。それならとにかくやってみるっきゃない。
「じゃあ、ミライを連れ戻して、彼女を制御装置のところに連れていって、それでこの刺繍の図案を打ち込めばいい、ってことですね! そしたら破壊神の復活も止まって、ゲートも閉じれるんですよね!?」
わたしがちょっとテンション高めに聞くと、レイさんは困った顔をした。あれ? 違うのかな。何となくまだ何か問題がありそうな感じだけど何だろう? わたしは何が問題なのかとレイさんの顔をのぞき込む。レイさんはどうしようかと暫く考えを巡らせているようだったけど、やがて口を開いた。
「それがちょっとややこしいんだよねえ。ゲートに関しては、制御装置を直しても恐らく閉じない……むしろ拡大する可能性もあるかもしれないね。破壊神の復活――というか、大規模な噴火って言ったほうがいいね――と、ゲートの関係。そうだな……どうしようかな。日記や今までの君達のレポートから僕らが推測したことを説明しようか。ま、大体さっき君が言ってくれたところだけど、少し追加もあるからね。質問があったら、随時止めてくれて良いよ」
難しい話になりそうだけど、いつでも質問して良いって言ってくれたことだし、分からないところは聞いちゃおう。ちゃんとついていけるように頑張ろうっと。
「日記にあったよね、火山が上手く制御できなくなりつつあることを知って、超越者達が打とうとした手は二つ。
一つがこの男が取った、制御装置の欠陥の解析と修正。もう一つが、転移計画。どっちも難航したけど、転移計画の方が先に目途が立った」
レイさんは指を立てて数えながら言った。確かに日記に書いてあったなあ。転移計画ってなんだか分からなかったからスルーしちゃったけど、でもようやく気づいた。
「転移計画……転移……もしかして、ゲートってそれのせいでできたんですか?」
「ご名答。それを使って別の、安全な世界に移住する、っていう荒唐無稽な計画だったみたいだね。補足しとくとそういう話自体は以前からあって、ここに来て加速した、って事みたいだよ。で、恐ろしい事にどういうわけだか別世界への道はできちゃった! ただそれは人を移住させられるものではなかったみたいだけどね。
とはいえ目途は立ったから、後は人が通れるようにすればいいだけさ。それで進捗の悪い欠陥修正はストップさせて、そっちの人員も転移計画を推し進めるために投入したってわけ。日記の主だけは、続けてたみたいだけどね」
レイさんはちょっとおどけた様子で語った。なんとなくだけど、何かイライラを隠してるような、そんな感じがするなあ。何か気に入らないことでもあるのかな? まあでも、そこは気にしても仕方ない。それよりゲートだ。
「じゃあ、超越者達の転移計画でできたゲートを、彼らが滅んだ後、今わたし達が使って――」
「そうそう。技術的には全く解明できてないけど、とりあえず繋がってるから利用してるってだけ。ひっどい状況さ! 何一つ、分かってないんだからねえ!」
レイさんは自嘲するように笑って肩をすくめた。何一つ分かってない、か……。もしかしたらこのあたりが、彼がゲートの事を調べてる動機なのかもしれないな。
「おっと、話がそれたね。転移計画を推し進めたけど簡単には行かなかった。転移ゲートは大量のエネルギーを必要としたみたいだよ。それが、噴火のリスク増大――規模と発生確率両面で、だね――に拍車をかけた。計画の中止を訴える声もあったみたいだけど、結局強行したんだ。それくらい魅力的な計画だったんだろうし、これまでの投資を考えたらもう引き返せなかったんだろうね」
「でもこの計画って、超越者達は自分達がゲートで逃げられたら、後は――残された竜人達は――どうでもいいって事ですよね。そっか、だからこの人は制御装置を直そうってあんなに必死だったんだ」
「きっとそうなんだろうね。そんな中、超越者達に任せておく訳にはいかないと感じた竜人達が攻めてきた。で、混乱の隙を突かれた超越者達は、圧倒的な力を持っていたにも関わらずあっさり全滅――この男みたいに生き延びた人もいるけど、まあ全滅と言ってもいいよね――した。ゲートもメインのエネルギー源が遮断されたために拡大を止めた」
気を取り直してレイさんは一気に語った。転移計画……ゲートについては分かったけど……いや、あれ? ちょっとよく分からないな。
いったん落ち着いて、整理してみなくっちゃ。




