第68話 奥様
「また、待たせてすまぬ。おぬしには今からわしの家内達と顔合わせでもとな。準備に時間がかかってしまっての」
「あ、はい、それはいいのですが、、」
「そうかそうか、では行こう」
また酷い笑みを浮かべた後、扉を押し開けると目的の場所まで歩いて行く。
「おぬしは、貴族の挨拶については心得ておるのかのう」
「い、いえ、」
「そうか、なあーに、難しいことは無い。ただわしの後ろにいればよい」
「わ、分かりました」
コン、コン、
「はーい、どうぞぉ、」
中から女性の声が聞こる。領主は声が聞こえると扉を開けて中に入る。勿論俺もそれに続き中に入る。
「あら、ナイル様。その人は」
「わしの新しい側室じゃよ。エミリー」
「まあ、そうだったんですね。私はエミリー。仲良くしましょうね」
気さくそうなこの女の人はエミリーというらしい。勿論情報は得ているが、それによるとここまで気さくな人ではなく、もう少し控えめな人物と聞いていた。しかしその気さくな笑顔の中に俺に対する哀れみのようなものも感じられた。
「あ、はい。よろしくお願いします」
一応俺は頭を下げて会釈をする。
「それはそうと、わしはまだ領主の仕事ご残っておるんじゃった。二人は少しここで待っててほしいのじゃが」
「分かりましたわ、あなた」
「は、はい。」
「それではのう」
領主はそう言って部屋を出て行った。
「ふう、やっと出て行ったわね」
「え、」
「貴女、貴女は逃げなさい」
「え、どういうことですか」
「だからこの屋敷から逃げなさい。」
「え、どうしてです」
「貴女、ここに居たら死ぬわよ」
「え、」
「あの人は今までずっとそうして奥様達を殺してきたの。だから殺されるわ」
「え、でもなんで」
「あの人は私達の体で弄んでは飽きたら殺してまた新しい人を迎えるの。貴女もそんなことにはなりたくないでしょ」
「はい、で、でもどうすれば」
「そうねぇ、貴女、魔法は使えるの」
「はい、」
「そう、なら大丈夫だわ」
「奥様、少しよろしいですか」
「なに、どうしたの」
「貴女様にはご息女がいたと聞き及んでいるのですが、もしかして」
「そうよ、あの子もあの人から逃げたの。あの子は昔から運動能力が高くて、よく兵舎なんかで武術もしてたから」
「そうなんですか、けど私はいいとして、奥様は」
「私は無理。だってそんなに動けないもの」
「けれど、」
「私のことは気にせず、貴女は自分のことに集中しなさい」
「、、はい、、、」
その時、
「二人とも、待たして悪かったのう。それではお互い自己紹介といこうか」
それからは軽く自己紹介などをして、結局はお茶会のようになったものの各自部屋に戻った。




