58. 国家機密級会議と重鎮達のデレ
王都冒険者ギルドのグランドマスター、
グランツ・ヴォルネア伯爵は、長旅の馬車に揺られながら、
フォレットの門前に到着した。
御者が門番と話している間、
グランツは行き交う冒険者を見ていた。
ふと視線を森の方へ向けると……。
そこには――
魔の森から戻ってくる、*銀翼のフェンリル"の姿があった。
「おや……あれはジークたちではないか?」
長時間の馬車で腰が痛くなっていたこともあり、
グランツは馬車を降りて、銀翼に声をかけた。
「お疲れのところ失礼する。王都ギルドのグランドマスター、グランツだ。
ジーク、久しぶりだな。依頼の帰りか?」
「グランドマスター!お久しぶりです。
そうなんです。ちょうど魔の森から帰ってきたところです。」
「そうか、ご苦労だったな。
ちょうど良い、私もギルドまで歩かせてもらおう」
ジークたちは驚きつつも快く頷き、
一行はフォレットの街へと歩き出した。
冒険者ギルドに入ると、相変わらずのにぎやかさだった。
受付嬢が一行に気づき、慌てて立ち上がり、深々と頭を下げた。
「グランドマスター様!ようこそお越しくださいました!
銀翼のフェンリルの皆さんも、お帰りなさい!
すぐにギルドマスター室へ――」
その時だった。
ドタドタドタッ……!
2階から、よちよちと必死に階段を降りてくる影が2つ。
「じーくぅぅぅぅ!!」
「じーくぅぅぅ!!」
アレクとヒナだった。
ジークを見るなり、2人は勢いよく両足に抱きつき――
大泣き。
「うわぁぁぁん!!おがえりぃ……!よがったぁ……!」
「ひっく……じーく……!」
「あははっ。俺たちは強いから大丈夫ぞ」
「そうだぞー。笑顔でお帰りって言ってくれるとうれしいな」
2人は、涙がぼとぼとこぼしながらにっこり笑って見せた。
「……ふふっ」
ジークは優しく2人の頭を撫でた。
続いてリオンにも抱きつき、
リオンは「お、おお……よしよし」と慌てて受け止める。
2人共、毛並みに顔が埋まってる。
グランツは目を丸くした。
(……これが……“愛し子”……?)
そのまま一行はギルドマスター室へ案内された。
ソファに座ると、
ヒナはまだべそべそ泣きながらジークにしがみつき、
アレクはオルガの膝にちょこんと座った。
そこへ、
フォレット領主レオンハルト・シルヴァラントが到着した。
「お待たせいたしました。
グランドマスター、ようこそフォレットへ、
おいでくださいました」
挨拶を交わし、全員が席についたところで、
ギルドマスターのアルフレッドが口を開いた。
「では……改めて紹介しよう。
こちらが銀翼のフェンリルのメンバー、そして――」
ギルマスはアレクとヒナ、そしてリオンを示す。
「この2人が“愛し子”。
兄アレクが神の愛し子。
妹ヒナが世界の愛し子。
そしてリオンは……創造主から遣わされた神獣フェンリルだ」
グランツとレオンハルトは、
同時に息を呑んだ。
「愛し子に……神獣……フェンリル……」
「愛し子に……あの伝説のフェンリル……創造主から……?」
ギルマスは続ける。
「今回の件は、国家レベルの極秘事項だ。
黒いオーラの浄化方法、魔物の異変、
そしてこの2人の能力は……世界の危機を救うものである」
「当然、どんなに隠そうと、
どこかから情報は漏れるだろう。
心無い者が2人を狙う可能性も高い。
だからこそ、信頼できる者だけに共有して、いざと言う時は動けるようにしておきたい」
レオンハルトとグランツは真剣に頷いた。
ジークが手を挙げた。
「その前に……紹介したい者がいる。
もっちー、出てきてくれるかい」
すると、ヒナの肩から、白い毛玉が姿を現し、
たたたーっと走ってジークの手のひらにぴょこんと座った。
「幻獣カーバンクルのもっちーです。
もっちー、話を聞いていたと思うが、
領主様と冒険者ギルドのギルドマスターだぞ」
「きゅいっ!」
手を挙げて元気なご挨拶をするもっちー。
グランツが目を見開き固まる。
「…………もっちー」
レオンハルトは無言で凝視して固まる。
「…………」
「……幻獣……カーバンクル……?」
「……本物。……神獣の次は、幻獣?」
ジークは続ける。
「実は、このもっちーが、ヒナに黒いオーラの払い方を教えたんです。
そして、もっちーもまた、創造主から使わされたものでした」
重鎮2人はあまりの事で言葉がでない。
「「な……っ!?」」
ギルドマスターが続ける。
「この情報は、絶対に外へ漏らしてはならない。
漏らせば、2人が確実に危険にさらされる為だ。
国王にも極秘で報告をお願いしたい」
グランツは深く頷いた。
「……確かに、これは国家機密だな。
信頼できる者だけで共有しよう。」
ギルドマスターは続ける。
「2人は銀翼に懐いているし、
正直この街には、2人の能力が必要不可欠だ。
フォレットにも馴染んでいるし、できればこのまま、ここで生活させてやりたい。
だからこそ、ここで守りたいと思っている」
レオンハルトも頷く。
「私も同意だ。
私もこの街でなら、領主として全力で守れる。
国王への極秘での謁見は私が行う」
グランツも同意した。
「討伐依頼で2人が必要な場合は、
冒険者に紛れて護衛をつけ必要があるだろうな。
それはこちらで出そうか?」
レオンハルトが首を振る。
「いや、護衛は私の領の騎士をつけよう」
こうして、
今後の方針が決まった。
***
会議が終わると、
レオンハルトとグランツは同時に立ち上がった。
「……あの……フェンリル様……」
「……触れさせていただいても……?」
「よいぞ。あと、私の名前はリオンだ。今後リオンと呼ぶのを許そう」
「光栄です!あ、あの、リオン様、本来の姿を見せていただく事はできませんか?」
レオンハルトがワクワクした目で、前のめりでリオンに聞く。
その質問に、グランツも力が入る。
(み、見たい!!)
「あい分かった」
リオンはそう言うと、ふわりともとの大きさに戻った。
「「おおおおお……!!」」
震えながら撫でる。
レオンハルトは思わず抱き着く……。
「ふわーっ!素晴らしい……!」
グランツは、なんてことを!!と思いつつ、
我慢できず、抱き着く……。
「伝説の神獣フェンリル……感激だ……!」
リオンは、ちょっと引いたが、
(我は気高き神獣フェンリルだ。抱き着きたくなるのも仕方あるまい)
そう思って我慢した。
2人はリオンを堪能後、次に、もっちーへ。
「きゅいっ!」
「「…………(可愛い……!!)」」
だが、重鎮としての威厳を保つため、
必死に悶えをこらえる。
「あ、あの、触ってもいいかい?」
今度はグランツが聞いた。
すると、もっちーは、「きゅいっ!」と鳴いて、
グランツの目の前に行った。
グランツは、思わず小さく『可愛い……』と漏らし、
もっちーをもふった。
とても弾力あるもふもふを堪能した。
レオンハルトも、同様のお願いをして、
もちもちの白い毛玉をもふらせてもらい、
日々の疲れが一瞬で癒された気がした。
2人は気を取り直して、
最後にアレクとヒナに話しかけた。
「今日は会えてうれしかったよ」
「……おれもです。これから、よろしくおねがいします。……」
ヒナがアレクの服をぎゅっと握りながら答える
「……ひなも」
2人はそっと頭を撫で、
『いい子だねー』と言いながら癒されていた。
「では、国王の返事が来たら、また集まろう」
「うむ。良い方向に進むことを願う」
「銀翼の諸君、2人を頼むぞ」
「お任せください」
こうして、
国家機密級の会議は静かに幕を閉じた。




