46. ギルドマスター達の困惑と、ギルド員のお宅訪問(銀翼のゴーレム屋敷)
早朝の冒険者ギルド フォレット支部 ギルドマスター室では、
現在、絶叫を上げている人物が2人いた。
ギルドマスター” アルフレッド・ヴァルハイト”と、副ギルドマスター”ハルト・グレイヴ”。
ハルトは、普段受付カウンターの奥にいて、
受付嬢のサポートや、解体依頼のサポートをしている為、あまり表に出ることはない。
普段は静かだが、仕事の正確さはギルド随一だ。
彼がいなければ、間違いなく、このフォレット支部は回らないだろうと思う。
そんな2人は、現在、緊急用伝達魔法陣が刻まれた石板から転送されてきた手紙をみて
2人そろって絶叫していた。
ギルドマスターは困惑する。
「グランドマスターがここに来るだと!?
普通、先に調査団とか出すだろう!!
なんで最初から本人が直接来るんだーー!?
……あの方の事だ、もう出発しているかもしれん!!」
「なんでグランドマスターが直々に来るんですかー!?
しかも!!なんでそんなに行動が早いんですか!!
ほんと、貴方といい、グランドマスターといい、
副官をなんだと思っているんですかねー!」
「まあ、それについては、いつも感謝しているさ!」
ギルドマスターには頭が上がらない。
日々の業務をどれだけ支えてくれているかを知っているからだ。
「神獣フェンリルが見たいだけだったりして……」
「……ありえるな!はははっ!」
「あははーっじゃないですよ。
王都からここまで馬車で2週間くらいなので、
すぐに準備をはじめれば、十分に間に合います」
「それじゃあ、ギルドで街道沿い付近の魔物討伐依頼を出してくれ。
こちらは王都よりも魔物が多い上に、最近増えているし、
相手がグランドマスターだからな」
「そうですね。依頼を出します」
その直後だった。
『ピーッピーッピーッ』
また、緊急用の石板から転送されてきた手紙が姿を現す。
心当たりがあるので慌てない。
「こっちは領主様からの返事か。なになに?………。
あいつもこっちに来るのかよっ!!」
「ギルマス!領主様をあいつ呼ばわりしちゃいけませんよ。
でも……、どうして領主様もご本人が来るんですかーーー!」
「まあ、あいつは好奇心旺盛だ。
面白そうなことがあれば、首を突っ込んでくるだろうよ。
今回なんて、面白そうな事しかない。しかも、今回は三点盛りだからな……」
「はぁ。まったく。騒ぎになりそうですね。
こちらの街道はどうしますか?」
「あー。こっちの街道は、問題ないだろう。領主と言っても元S級冒険者だ。
だが、こっちのめんつもある。
同じくギルドで街道付近の魔物の討伐依頼を出しておいてくれ」
「わかりました。ではそうしますね。」
「……あと……。
念のためだ。魔の森の中ほどまででいい。魔物の状況確認をしたい。
また、大量の魔物が来ても困るからな。
多いようだったら、予め削っておきたい。」
「それなら、銀翼パーティーですかね。」
「そうだな。指名依頼で頼む」
「わかりました。依頼します」
そういうと、ハルトは忙しそうに部屋を出て行った。
***
銀翼のパーティーホームに、一人の使者が訪れた。
冒険者ギルドから指名依頼の連絡を預かってきたギルド員”トマス”である。
ここはとんでもホームである。
それがこのギルド員の認識。
ギルドホームの玄関に辿り着くにも、前もって登録をしてもらう必要がある。
なんの登録だって?それは、ゴーレムだ。
ここは、ゴーレム屋敷なのだ。
以前、ギルドマスターに同じように指名依頼の連絡を頼まれてきたことがあった。
ギルドマスターもゴーレムの事をすっかり忘れていたようで、何も伝えてくれなかった。
私は何も知らずに、門扉を通り、玄関まで行こうとしたら、
ゴーレムが、『ドドドドドッ!』と地響きを立てて団体で追いかけてきた!!!
めちゃくちゃ怖かった……。
大きくごつくて、「侵入者発見!」とか言って追いかけてくるんです!!
よく見たら、門扉に魔導具の呼び鈴代わりのボタンがあり、呼び出せたんですが。
はじめてくる者が、そんなの、知るわけないじゃないでか!
一般的な家は、ドアノックですよ。それが常識ですよ。はい。
私は一回門扉に外にでて、ゴーレムの団体さんにじーっと監視されながら、
震える手で魔導具の呼びボタンを押しました……。
はい。とても怖かったです……。
私はただ伝言を伝えに来ただけですよ。
伝えないで帰っちゃいますよ。
すると、既にジークさんが来てくれていました。
ゴーレムが騒いでいたので、何事かと来てくれたそうです。
でも、それじゃあ、呼びボタン押さなくてもよかったんじゃないかって?
それは言わないでください。
その時の私にとっては、それが命綱だったのです。あれで呼べば助かると。
ですが、それはもう過ぎたことです。
「警備を混乱させてしまい、申し訳ありません」
「いや、ギルドマスター、言い忘れてしまったんですね。
こちらこそ、怖い思いをさせてしまって申し訳ない。
もうゴーレムは大丈夫ですので、どうぞこちらへ」
ジークさん……。
ジークさんの心遣いが嬉しい。
そんなことを思い出しました。
今回は、もう登録済ですので、玄関で呼び鈴を鳴らして、呼び出すことができました。
もちろん、ゴーレムに追いかけられることもありません。
そして、私は家に入り、伝言をようやく伝えました。
その後、噂のおちびちゃんたちに会い、ほっこりし、神獣フェンリル様を拝み、
よくわからないもふもふと遭遇し、方に乗ってきたので、もふもふさせてもらった……。
……癒されました。
(え?幻獣カーバンクル?幸福を呼ぶという、あの幻獣?もふもふが?
また、なんでいつのまにかまた増えてるんですか?
これは……。帰ったらギルマスの報告しなければなりませんね。
ギルマスの胃が心配でなりません……)
帰りには、防犯用の魔導具に登録していただき、
コックゴーレムが作ったチョコチップクッキーを……貰いました……。
銀翼ホームでもいただきましたが、とても美味しかったです……。
***
ギルド員が帰ってから、銀翼メンバーはさっそく動き出した。
ジークはみんなを集め、ギルドからの指名依頼の話をする。
「王都のグランドマスターと、領主が来るそうだ。
グランドマスターは2週間後くらい、領主は3・4日くらいで来ると予想される。
まあ、領主は元S級だ。もっと早いかもしれないがな。あははっ。
その為、来訪中にこの間のような大量発生が起きないように、
魔の森への調査と魔物の間引きの指名依頼が来た」
一番はじめに反応したのはエルミー。
「え?ご本人たちが来るのですか?調査隊とかではなく?」
ジークがくすりと笑いながら答える。
「あぁ、そのようだ。どっちも根は冒険者だからな。好奇心もあるのだろう。
まあ、それだけではないだろうがな」
それを引き継ぎ、オルガが説明する。
「そうだな……。
今までは、黒いオーラに触れてしまった冒険者を前に、どうすることも出来ず、
目の前で死なせてしまったこともあっただろう。
街や村が呑み込まれても、どうすることも出来ずに
指をくわえて見ている事しか出来なかった。
その黒いオーラを、払って消すことができるんだからな」
フリードもいろいろ思うところがあるのか、うんうん頷いている。
「そうだな。”念願の力”ってところか。
それは、嬉しくてしょうがないだろうね。
ならさ!ヒナのその力と、オレの魔力で、すごい魔法できないかな?
ヒナのロケットパーンチ!みたいな、殴って払って消す!みたいなやつ!」
クロムが面白そうに話に乗っかる。
「確かにあると、黒いオーラ殲滅が捗ると思うけど……くくっ。
”ヒナのロケットパーンチ”って、まったく攻撃力なさそうだよね。ふふふっ。」
「確かに!!
パーンチって元気に言って、すぐ近くに落ちそうだ!!」
オルガの言葉に、全員が同じ光景を想像してしまったのだろう。
みんなして吹き出した。
「面白過ぎる!あはははっ!」
フリードが腹を抱えて笑ってる。
そして、ジークが話を締める。
「ということで、今日は必要なものをそろえ、
明日の早朝から行く。
リオンは森に一緒にいけるか?来てくれると助かる。
アレクとヒナは、冒険者ギルドで預かってもらうことしようと思う
何か質問あるか?」
「我も森に行く。現状を把握しておきたい」
リオンは森に行くようだ。
アレクとヒナはまだ部屋で寝ているようなので、
起きたらそれを伝えよう。
「では、今日は自由行動で、各々準備にかかってくれ。」
「「「「了解!!」」」」
「うむ!」




