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1. 八重の前世 <前半>

ヒナの前世編です

花城はなしろ 八重やえは小さな頃から、それはそれは可愛い顔をしていた。


顔は、目が大きく澄んだ目をしていて、肌は白く、唇はほんのりピンクで、

髪は背中の中ほどまである色素薄目の薄茶色をしており、動くたびサラサラと風に踊っていた。

その家族もまた、八重同様に容姿的に恵まれてた家族であった。

父・母・双子の兄2人。容姿以外は一般的な家族であった。


***


八重はその容姿のせいで、幼い頃に連れ去られそうになったことがあった。

その攫われそうになった時も、犯人に立ち向かって助けてくれたのも兄2人だった。

八重は2人の兄をかっこいいと思った。

自分にとってのヒーローだと思った。


それ以来、兄2人(ようけい)は、

妹の可愛さに危機感を持ち、より過保護になった。


実は、陽と啓も狙われた事があった。

しかし、この双子はいつも一緒にいた、お互いがお互いを支えるように。

この容姿の為か、昔から自分達に取り込もうと企む者達(老若男女とわず)に

声を掛けられることがあったが、

頭の回転もよく、両親の勧めもあって護身術も習っていたため、

そうそう危ない目には合うことはなかった。


まれに力技で来るものがあっても、撃退していた。

双子なのでお互いがお互いを守り、声を交わさずとも息はぴったりだった。


***


八重が小学校に上がり、2歳年上の兄達とは、登下校いつも一緒だった。

その日も学校からの帰り、いつも一緒に帰ってくる道で兄2人は

今日は学校で面白いことがあったらしく、そのことで盛り上がって、

八重は兄達の間に挟まれ、兄達の話を聞いていた。


急に八重の気配がない事に気づいて、隣を向いたが八重がいなく、

いつも寄り道か?と付近を見ても、八重はいなかった。

普段は寄り道しても、大概近くにいたからだ。

2人はとても焦った。


パタパタ音がする方を見ると、

八重がむーむー言いながら男性に口を押えられながら、

逃亡中の男性に抱えられていた。


前にも妹は攫われかけたことがある。

「またかっ!」

兄2人は、あまりの緊急事態に一瞬固まったが、

そこは双子、顔を見合わせてうなずくだけで

お互いの行動方針を決めた。


***


運動神経のいい2人は、あっという間に犯人に追いつき、背中に飛び蹴りをくらわせた。

「ぐえっ!!」

背後からの左右の頭突きで体制を崩した犯人は、八重を取りこぼし、倒れた。

兄2人は急いで犯人から八重を奪い返し、

「もう大丈夫だ」

「けがはないか?」

頭を撫でたり、ほっぺをむぎゅっと手で挟んでみたり、

ケガしていないかと体中を確認しながら声をかけた。

「けが、にゃいよ。ほっぺはなちてー」

兄に笑われながら声をかけられたことで、自分は助かったのだと分かった。



「陽おにいちゃ!啓おにいちゃ!こわかったよー」

兄達に抱き着いて大泣きした。

犯人は攫うことに失敗したことから、八重を諦め、逃走した。

それ以来、八重の中では「兄達=かっこよくて頼れるヒーロー」の図式が出来上がっており、

八重はそんなかっこよすぎる兄達を見つければ、

大輪の花のような笑顔になり場所を問わず駆け寄り、引っ付き虫と化した。


そんな子供たちの様子をみて、父母も心配しながらも、

その逞しく育っている子供たちを微笑みながらお互いを見て寄り添うのだった。


***


花城の家は、父は旅行会社に勤めていた。

母はまだ小さい子供が3人いたことで、専業主婦とをしていたが、

好奇心旺盛で友人に勧められては興味を持ち、いつの間にいくつもの趣味を持った。


その中で一番長持ちしたフラワーアレンジメントの講師の資格を取得し、

家で子供を見ながら教室を開いていた。


週に何度か生徒さんが通ってくるのだが、

これが好評でいつのまにやら生徒さんがどんどん増えていった。

かくゆう八重も小さい頃から看板娘として一役かっていたのも理由かもしれない。


「こん、、に、、ちゃー!」

こんな舌ったらずな時から自由に教室に出入りしていて、

「かわいい、挨拶出来てえらいねー」と褒めてもらうたびに、「ふんすっ!」と胸を張っては、

「そうだろう、そうだろう」とうなずくものだから、そのたびにまわりに温かい目で微笑まれていた。

八重は、褒められて伸びるのである。

教室が終わった後のお茶タイムでも、八重はちゃっかり居座ってお菓子を貰っていた。


***


八重が小学校に通うようになったころから、家族5人で車で旅行に行くことが増えた。

父が旅行が好きなうえ、旅行会社勤務である。

いろいろな場所の見どころを知っているので、季節ごとに家族を連れて行きたがった。

その父の影響か、母や兄2人も旅行好きになった。

もちろん八重もみんなと一緒に行く旅行は大好きだった。


地の物を食べては感想を言い合ったり、季節の草花を見つけてはほっこりと季節を感じたり、

観光地で興奮したり、穴場を調べて行ってはのんびり満喫したり、

毎度新たな発見をしながら楽しんでいた。


旅行先では、母はいつも八重と手を繋いで歩きたいと八重に声をかけようとするが、

それを颯爽と横から陽と啓の兄2人がかっさらい、八重の左右の手は速攻でふさがってしまい、

八重もまた大好きな兄達にかまってもらえて喜んではしゃぐので、

母は微笑みながらもぶーぶー文句を言うのがいつものパターンと化していた。

父はそんな家族の背中を静かに見つめるのもとても好きだった。


観光地などに来ると、その一家の容姿の良さから、

通りがかりの人々が芸能人家族を見るかのように顔を高揚させて見つめ、

あちこちで、「可愛い」「かっこいい」「綺麗」「・・・何かの撮影か?」など、

黄色い悲鳴や、ひそひそ遠巻きにこちらを見て話しをされることもよくあった。


その容姿を自覚している為か、家族は見られることに慣れてしまったのか、

そんな視線などは気にしないのであった。


その中で、陽と啓の兄2人は「可愛い」という言葉が聞こえると、

「自分の妹はこんなに可愛いのだからつい言葉が出てしまうのはしょうがないか」とばかりに、

自慢げに胸を張り、うんうんとうなずくのだった。

そんな容姿でとびぬけているものの、それ以外はごく普通の家族であった。


***


その日も、いつものように家族5人で旅行に行く為、車で移動中、

みんなでおしゃべりしたり、風景を見て騒いだり、お互いによりかかって寝たりと、

おもいおもいに過ごしていた。


旅先で、地の物の地域限定のお菓子がないか気になり、八重だけコンビニによった。

八重の趣味の一つに、その地だからこそ楽しめる、

地域限定のお菓子を探してみんなで食べるというものがあった。


コンビニではよくその地域限定のお菓子が置かれていることがよくある。

見慣れたパッケージだけれど、

なにか特別感がある「地域限定」と地元では食べられない特別な味。

それらは八重を魅了してやまない。


今回もそれらを探しにコンビニに立ち寄った。

母や兄も一緒に行くといったが、

「ちょっと見に行くだけだから」と八重だけぴょんと車を降りて、

ぴゅ~っとコンビニにかけて行った。


「あったあった!期間限定!しかもはじめてみるやつだ!」

八重は高揚する心を落ち着かせ、早く家族に見せて一緒に食べようとお会計に向かう。


笑顔の八重を見た店員さんが顔を赤くさせながらお会計をしてくれたので、

急いで車にかけて行った。


***


コンビニを出たところでものすごい音がした。

八重は思わず目をつぶり、両耳を押さえてしゃがみこんだ。

音がやんだところ目に入ってきたのは、

家族の乗っている車の真横にトラックが突き刺さっている姿だった。


車は元の姿を残しているところがないくらい押しつぶされ、曲がって、傾いていた。

トラックの運転手は即死だろう。

車の中はひび割れたガラスで中が見えなかったが、だれかが動いている様子はまったくなかった。

周りは悲鳴や車のきしむ音で騒然となっていた。


提げていたビニール袋をその場に落としたことも気づかず、頭が真っ白になり、

急いで車に行こうとするも、まわりにいた人数人に掴まれて引き止められた。

振り払いたくも、振りほどくこともできず、泣きわめいくことしかできず、

力が抜けてそのまま崩れ落ちた。


レクキュー隊が着いたとたんに駆け出し、トラックを後ろからひっぱり、

車から少し離したところで、車の解体しながら車内の家族の救出にかかった。


八重はまだ12歳、大好きな家族と楽しい旅行の最中だった。

救急車で家族全員運ばれたが、全員即死だったと後で聞かされた・・・。


***


自分一人だけ残ってしまった。


泣いて、泣いて、言葉も発することさえなくなり、

何かをやろうという気力さえなくなり、そのまま心を閉ざした。


お葬式は親戚があげてくれた。

あまりの悲惨な事故だっただけに、

親戚の誰しもがなんと言葉をかけていいのかと遠巻きに八重を見つめるしかなかった。


どう声をかければいいか悩んだ末、結局当たり障りのない言葉をかけるしかできなかった。

八重はの心にはどんな言葉も残らなかった。


なんで自分はあの時一人でコンビニに行ってしまったのか。

「みんなで行こうよ」と言えば、みんな助かったのではないか・・・。

そんなことばかり考え、自分を責めた。


普段から交流のある親戚は数人いた。

その中の誰かが自分を引き取るのだろうと思っていた。

結局、誰でも一緒だ。大好きな家族ではないのだから。そう思った。


しかし、実際にひきとったのは、遠い親戚だという見知らぬ、

藤ノ宮 真理子という40代くらいの綺麗な女の人だった。

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