君はこういう趣味だったのか(未来)【完】
ひと際巨大な一角獣、ユニコーンが衝撃波でよろめき、動きが止った。
その一瞬をついて接近した勇者フレブレは、一角獣の角、足を剣で斬り落とした。叫び声をあげた一角獣は地面に倒れた。それでも、何とか身を起こして、自分をこのようにした者に罰を加えよう顔を向けようとした。口から、ドラゴンの放つ、ブレスともいわれる火炎或いは雷撃、又は冷気、いたって種類が多いがいっしょくたんにされている、をはるかに、その最高位のものの最大威力、上回る神息吹を放とうとした。しかし、目標を見失っていた。
「こちらだよ。堕ちた一角獣さんよ。」
と勇者は一角獣の後ろに立っていた。次の瞬間、一角獣の首が落ちた。吹き出す血を避けた勇者は、さらに少し体を動かした。ぎりぎりのところを光が、一筋の光がとおった。そして、彼の少し先の地面に突き刺さり穴をあけて突き進み消滅した。
「魔王さま。少し急ぎ過ぎてませんか?ちょっとは休ませてくださいよ。」
と言って振り返って、挑発するように微笑んだ。
その視線の先には、女魔王?女神魔王?、と自称する女?の姿があった。彼には、その女?の姿を説明する能力も知識もなかったが、しいていえばピカソの泣く女或いはアステカ・マヤ文明の神の顔、もしかすると縄文時代の土偶の顔を連想させるものだった。体は、巨乳、いや爆乳、いやいや超乳とも言えるようなあまりに不均等な、さぞや肩が疲れるだろう、正常な感覚からは、流石におぞましいと思える、が胸にあり、まあそれは正常ともいえるが、腕が千手観音、もちろんこの世界の概念にはない、のようにあり、足は普通に2本、直立歩行だった。基本的に、極めて異形としか言いようがなかった。異形といえる魔族でも、どこか既存の生物の要素、キメラ、それがいくつも共存する場合もあるが、をもっているが、今目にしているのはそうではない。
堕ちた何かであり、魔王を称して、魔界を侵食、荒しまわっている存在で、その討伐を魔族、人間と和平を結んでいる魔大公、から、勇者フレブレは依頼されたのである。
「卑しい人間よ。」
「勇者様。加護と回復を。」
女魔王?の呼びかけの言葉の途中に聖女オスクラが駆け寄って、加護と回復魔法を勇者に施した。
「お前は。」
「聖女様。ありがとう。」
と勇者も女魔王?の言葉を無視した。そして、次の言葉が出る前に、飛び出した。
幾筋の光、いくつもの火球、雷球、その他をよけ、弾き、受け流し、一気に間を詰める。女魔王?が張った防御結界に、彼女が放った攻撃魔法のいくつかがぶつかった。弾き、受け流した瞬間からいくつかを魔法で誘導して、女魔王?に返したのである。その中には、自分の攻撃魔法も加えていた。揺らぐ防御結界に渾身の力を注ぎ込んだ聖剣の一撃を加える。防御結界を砕き、女魔王の体を切り裂いた。だが、致命傷ではなかった。
その後、斬っても、焼いても、凍らせても、砕いても、押しつぶしても、執拗に再生して、時には複数になって反撃してくる女魔王?に苦戦しつつも、勇者が荒い息をする頃には、女魔王?は肉片、すっかり炭になっていたが、のまま変化することはなくなった。
「さすがに勇者様だな。あの頃より、強くなっているんじゃないの?」
と声がした。返り血をかなり浴びたエスペランサだった。
「鍛錬を怠っていないからね。そういう君も同じじゃないか?堕ちた聖獣、訳の分からない異形の魔族、魔獣を10体以上は倒しているだろう?」
「全く、自分の戦いの最中にそこまで気を配って、援護までしているんだから・・・。まあ、私達も伊達にS級冒険者パーティーをしていないよ。」
と2人は笑い合った。その二人に、すかさず聖女が回復魔法をかける。
勇者は聖女とともに、時折旅に出ていた。依頼があり、そのついでに各地をまわる。そこでも依頼を受けていた。時々、冒険者パーティーに応援を頼むときがある。今回は、かなり大事でもあり、精鋭の冒険者パーティーと思っているところに、エスペランサ達のパーティーに出会ったのである。
「聖女様。僕にも回復魔法かけてよ。かなり頑張ったんだよ。」
フィエラである。時々彼女も連れて来る。今回のような時には必ずである。必要な戦力となっている。
「分かっていますよ。頑張っていたのは見てましたから。」
と微笑む聖女も、戦っている時は、相変わらずの狂乱の戦う聖女ぶりは変わらなかった。
「回復薬もありますよ。」
と若い金髪の男が駆けて来た。
「ん?錬金術師の?色々と面白い奴がパーティーにいるわね。」
「彼は、そこそこ優秀な王室付錬金術師だったんだけど、他国から解雇された超々優秀な錬金術師がスカウトされてきた余波で、逆に解雇されたという可哀想な身の上でね。僕たちにとっては優秀な錬金術師だからね。」
「全く、甘いんだから。あんたのパーティーってそんなのばかりじゃないの?」
「そういう君のパーティーにも結構そんなのがいるじゃないか?」
そう言って笑い合う2人に彼らのパーティーメンバーが、支援の魔騎士達が集まってきた。
異形すぎる自称女魔王とその一団を討伐して、勇者と聖女、フィエラのパーティーとエスペランサのパーティーに対して、依頼主の魔大公は祝宴、慰労の祝宴を設定してくれた。
勇者は無償では依頼を受けない。もちろん、貧乏な者からは彼らが提供できる程度の夕食だけとか、その身分、財力に応じて、それも決して法外ではない程度のものを求めた。
「しかし、姐さんが勇者様と知り合いだったなんて、驚きだなあ。そう言われてみると、勇者様のパーティーに相応しい力だったけど。」
と本心からそのことに感激している若い、ちょっと童顔だが長身の黒髪の男だった。付与術術士だ。そして、彼女の横に座っていた。
「彼女は頼もしい戦士、魔法聖騎士だったよ。魔王を倒した後、名誉とか興味がないといつの間にか立ち去ってね、心配していたんだよ。でも、無事で、良い仲間達・・・そして良き恋人に恵まれているのを見て嬉しいよ。」
魔族の地ビール、癖が強いが馴れるとなかなかいけるようだった、をジョッキで呑みながら勇者が言うと、
「え、そ、そんな・・・。」
「ちょっと、勇者・・・まあ、そうではある・・・けど・・・。」
「え?今のは・・・。」
「ああ、ようやく言った。今日は、仲良く、激しく、くんずほぐれつなさいな。」
と笑いながらドロレスがワインを飲みながら、飲むたびに少し顔を歪ませていたが。
「そういうあんたも同じじゃないの?」
「あ~、私は、ちゃんと前からはっきり言って、宣言して、やることはやっているわよ、あんた達と違って。」
と自分の隣にいる雑用万能の剣士の方を見た。
当初女だけだった達彼女達のパーティーだったが、次第に男達も加わった。元いたパーティーに規格外の付与術士がスカウトされて、彼はというと実力を評価されずに他のパーティーから役立たずと解雇されたのであるが、その余波を受けて解雇された者とか、同様な過程で解雇された万能雑用係の剣士とかを受け入れていくうちに、女性比率は高いが男も増えていた。そういうところは、勇者も同様で似たような境遇の男女を受け入れていた。どちらも同情はあったにしろ、自分のパーティーに有用な能力を持っているから入れたということは変わらないし、彼らは役に立っている。
「へー。グレイスの好みのタイプって、そんなんだったんだ。」
とフィエラが揶揄うように言った。
「お前が言えるか?」
と勇者が軽く頭を小突いて笑った。
「でもさあ、あいつが浮気しないかと思うと心配で・・・。」
とフィエラがいいだしたので、皆が吹き出した。
「今度は幸せになったんだ。安心したよ。」
宴が終わり、用意された寝室に向かう途中での別れる一瞬、勇者は耳元で囁いた。
彼女は無言で頷いた。
2人の部屋は、それなりに大きく豪華ではあるが、大雑把すぎた。しかし、冒険者の男女初めての夜を過ごすには、やはり豪華だった。
緊張している彼を優しく、彼は年下だった、抱き寄せて唇を重ねる。葉が軽く触れてしまった。自分も緊張しているのがおかしかった。
「あんたも彼に抱かれて、可愛い声をあげなさいよ。」
「それはあんたも同じでしょう?」
とドローレスと互いの脚を抱いて、下半身をぶつけ合うようにこすりつけあい、喘ぎ声を出していたのは何時だったか、と考えた。その後、彼女は万能雑用係の剣士、やっぱり年下だ、と恋人宣言してその夜には男女の関係になっていた。それほど前のことではない。
「あ~ん。」
と四つん這いでエスペランサは喘ぎ声を出し、体をくねらしながら腰を動かしていた。彼は、夜の営みではオリハルコンより上級、せいぜい金級の彼女を翻弄していた。2回戦目で、快楽で頭がいっぱいの彼女は、幸福感でいっぱいたった。聖女が、ドローレスがこうして抱かれている姿も目に浮かんだ。今回の仕事はかなりの大金が入った。今まで、彼と共にかなりため込んでいたから、ある程度の地主にはなれるところまでは来ていた。それで、幸福な生活を・・・と思う自分が不思議と思わなかった。とにかく上を目指していた、あの頃の自分がわからなくなった、かえって。
そして、3回戦が終わり、完全にぐったりしている自分に、
「素晴らしいいです。愛しています。」
と囁く彼に、
「最高。私も愛しているわ。ずっと一緒に。」
と言って抱きしめた時、彼女は今とても幸福だと思い込むことができた。




