40話 守るためなら.....
アルフが激しい衝撃と共に意識を取り戻したとき、彼は柔らかいベッドの上にいた。
周囲は薄暗く、清潔で静かな部屋だ。土埃と血の匂いが染み付いたオークション会場とはかけ離れた、まるで高級ホテルのような場所だった。白髪の少年が施した瞬間移動によって、彼はどこか安全な隠れ家に運ばれたようだった。
「カレン……!」
アルフは飛び起き、横に目をやった。隣のベッドには、カレンが横たわっている。彼女の背中は包帯で厳重に巻かれ、肌の色は蒼白だ。辛うじて安定しているように見えるが、状況は予断を許さない。
アルフはすぐに自分の体を確認した。三つのスキルを無理矢理ねじ込んだ激痛は残っているが、体の損傷による痛みは無かった。
アルフは震える手で、カレンの隣に転がっていた**『権能石』と金貨の入った袋**を掴んだ。そして、カレンの容態を把握するため、スキルを発動した。
「『鑑定』」
【対象:カレン】
状態: 重度の熱傷(III度)。皮膚の広範囲損傷。
生命力: 危機的。生命維持が限界に達しつつある。
必須処置: 高度な治癒魔法、あるいはA級ポーションによる即時治療。
残された時間:およそ10分。
「くそっ!」
アルフは歯を食いしばった。オークション会場で鑑定した時点では残り30分だった命の猶予が、移動の衝撃と時間の経過で、残り10分にまで減っていた。
「計画を練れ……一歩良いところに進める……」
ピーターの言葉が、耳の奥で反響する。泣いている暇も、絶望している暇もない。この状況でカレンを助けるための**「最善手」**は何か? 唯一の理にかなった計画は一つだけだ。
(ピーター・ブレット。あいつは規格外だ。通常の常識で測れない)
アルフは冷静に、そして冷徹に、利用できる全てのリソースを思考した。
(もしピーターがA級ポーションを持っているなら、俺の全財産を差し出しても譲ってもらう。それが最速だ。ポーションの代金は、将来的に必ず返済する。その約束を担保に、金で命を買う)
(あるいは、あの白髪の少年**『ハルト』**の力。彼なら一瞬でB級治癒師のいる場所、医療施設にカレンを運べるかもしれない...瞬間移動による応急処置だ)
(どちらにせよ、鍵を握るのはピーターだ。感情論ではなく、持てるリソースを最大限に活用する...これこそがピーターの教えだ!)
アルフは迷わずベッドから降りると、ピーターを探すため、その静かな部屋の扉に手をかけた。彼は、カレンの命を懸けた最後の計画として、ピーターとの即時取引を決意した。




