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【朗報】ワイ元成金、最期に少女を救い異世界送りになった模様  作者: 限界まで足掻いた人生/大場 雷怒


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39話 医療従事者の苦悩と明日の後悔

瓦礫の上の後悔

S級治癒師マラカイトの応急処置を受け、アズライトが緊急で医療施設へ搬送された頃。


瓦礫の中に埋もれていたシエナは、激痛に耐えながら、自力で瓦礫を押し退けた。彼女の脇腹は巨人の余波でひどく損傷し、左足は折れているのか、立つたびに激しい痛みが走った。彼女は短剣を杖代わりに使い、びっこを引いて、近くの医療施設へ向かい始めた。


彼女の顔には、冷徹な暗殺者の表情はなかった。ただ、止めを刺せなかった悔しさに、奥歯を噛み締め、静かに涙を流している。


(私が、殺せなかった……。核を潰せなかった……!)


彼女の脳裏には、過去の光景がフラッシュバックしていた。かつて、任務に失敗し、守るべき者を失った、あの日の惨劇。


「私は……二度と、無力な自分を許さないと誓ったのに……!」


シエナは悔しさを押し殺し、血の匂いを振り払うようにして、夜の街へと消えていった。


治癒師の表面と内面

マラカイトは、意識不明の重傷者であるアズライトを即座に最優先で奥の病室へ搬送させた後、周囲で倒れている他の冒険者たちに目を向けた。


「治療はするわ。ただし、全員順番よ。文句があるなら、自分で治しなさい」


マラカイトの口調は冷淡で、怪我人に対して一切の同情を見せない、塩対応だった。しかし、アズライトは知っていた。彼女がどれほど他人に対して厳しい言葉を使おうとも、その治癒術は決して手抜きせず、内面では全ての命を平等に、深く慈しんでいることを。


マラカイトは、次の怪我人の治療に移るため立ち上がった瞬間、ローブの内ポケットからアズライトの写った小さな写真を取り出し、一瞬だけ凝視した。


「本当は……あそこ(奥の病室)のお兄ちゃんの所に向かいたいのに......」


その小さな呟きは、周囲の喧騒にかき消された。彼女はすぐに写真をしまい、無関心な顔で他の患者への治療を開始した。


その頃、医療施設の奥の病室。緊急魔術措置を受けているアズライトは、複雑骨折と出血多量により、依然として危険な状態にあった。


治癒師の一人が、彼の意識レベルを確認した時、アズライトは激しく息切れしながら、蚊の鳴くような声で何かを口にした。


「ハァッ……ハァッ……おに、いちゃ……じゃ、ない……!」


周りの治癒師たちは、その言葉を聞き、顔を見合わせた。


「意識が混濁しているわ! 過去のトラウマよ! 早く魔術の出力をもっと上げなさい!」


彼らはアズライトが重篤な状態にあるがゆえの錯乱だと判断し、より魔術に集中するしかなかった。


アルフの意識:計画の再構築

その頃、ピーターに回収されたアルフは、意識が深い眠りと覚醒の狭間にある、曖昧な夢の中にいた。


彼はカレンを守れず、むしろカレンに身を挺して守られたという事実に、激しい自己嫌悪に苛まれていた。


アルフは夢の中で泥の地面に突っ伏し、拳を打ち付けた。


「くそっ! 俺は、何のために生きたんだ……!」


その時、背後から足音が聞こえた。アルフが顔を上げると、そこに立っていたのは、スーツを纏い、角を生やした、前世の自分、田中豪だった。彼の輪郭は、憎悪の象徴のように赤く輝いている。


「何をやってるんだ、アルフ。リリアを救うため、俺は死んだぞ。お前は何故、二度も守れず、逆に守られている?」


幻影の豪は、アルフを軽蔑と失望の目で見た。アルフは激しく怒りそうになるが、何も言い返すことができない。豪の言葉は、紛れもない真実だった。


その時、アルフの右側から、カレンの姿をした少女が歩み寄ってきた。彼女の輪郭は緑色に輝いている。


「お兄ちゃんは悪くないよ。私が勝手に動いたんだ。お兄ちゃんが私を助けようと、命を懸けてくれたのは、私には見えてたよ」


カレンは豪の幻影の言葉を静かに否定した。


しかし、その瞬間、二人の間に、ピーター・ブレットが、どす黒い輪郭を纏って出現した。


ピーターはまず、田中豪の幻影に向かって、軽く手を振った。豪の赤い輪郭は、音もなく霧散し、消滅した。


次にピーターは、カレンの首を掴み、その存在を消し去ろうとする。アルフは止めに入ろうと手を伸ばすが、間に合わず、再び地面に倒れる。


ピーターは倒れたアルフの胸倉を掴み上げ、その目に覗き込む。


「守る? 感情論で動くな。誰かを守る為には、つらい時も、幸せな時も、どんな時も計画を練れ。計画を練れば、その状況を()()()()()()()に進める。それがお前が今、持つべき力だ」


ピーターはそう諭し終えると、周囲の景色が一変した。そこは、切り立った断崖絶壁の上だった。


ピーターはアルフを抱えていた手を離し、彼を崖から真下へと突き落とした。


「お前なら.....」


アルフは恐怖と共に、下にある暗い海へと落下していく。


意識が揺らぐさらに別の場所

金髪の子が、そっと豪の頬に触れた。熱を持たない、氷のような指先だった。 遠くから、何かを呼ぶ声が聞こえるが、それが誰を呼んでいるのかは判然としない。 「一体、何を──」豪は声を出すが、音は虚しく消える。 金髪の子は最後に、ぎこちない笑顔で笑った。

――パチッ!


激しい衝撃と共に、アルフは現実へと引き戻された。彼は飛び起き、全身に冷や汗をかいていた。彼は、ピーターの言葉と、その強烈な「教育」を、現実かどうか曖昧な意識の中で、深く刻みつけられたのだった。なおその後見た光景は思い出せなかった。

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