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瑠奈が退役する事になった。
輝が検査結果から判断した結果だ。
瑠奈はもっと続けたかったみたいだが、精神がB-と初期の3Aから四段階も衰えた事からの判断だ。
輝はこの所ある目的を果たす為、瑠奈にあまりかまってやれなかった。
この事を少し後悔してるが、もう取り返す事は出来ない。
但し悪い話ばかりでは無かった。
美月が身籠もったのだ。
これに一番喜んだのはおそらく瑠奈だった。
美月は何を考えたのか、今回は人工胎盤を使わず自分で生むと言うのだ。
さすがにこれには輝も驚いた。
輝は美月との子作りは義務と考えていたので、思い入れが有ったわけでは無い。
しかし美月は違ったようだ。
明の時はまだ今のように余裕が無かったので人工胎盤を使用したが、本当は生みたかった様だった。
まあこれに関しては輝がとやかく言う事では無い。本人の意思を尊重した。
瑠奈は美月の側役をやってもらう事になったのだ。
但し、瑠奈の推定寿命よりも生きなければ生まれて来る子供を見ることは難しい。
本当にギリギリになると予測しているが、瑠奈にとって”生きたい”と思う事は延命に良い材料になる。おそらく大丈夫だろうと輝は思っていた。
何事も気持ちが大事なのだ。数値だけ見ていては駄目だ。正しいと思い込むその気持ちこそ人は見直す事必要があると思う。但し疑ってはいけない事もあるのは実状だが。
そして今夜は美月の懐妊祝いと瑠奈の退役を労って輝の拠点でささやかな宴が開かれていた。
瑠奈は俺の同僚や部下達から絶大な人気を誇っていた。
宴の席で結構な数の人間が涙を流していた。
まあ、これが人間の退役で余生が普通にあればそこまでの事にはならないのだと思うが、その事を考えると無理も無いと思えた。
特に明は生まれた時からの付き合いなので、号泣している。
美月には結構の人が祝辞を上げていた。
最高事象予測者は伊達では無いのだろう。
これが一般の場だったらひどい事になっていたかもしれない。
宴も少し落ち着いて来た頃、会場に雰囲気のある二人の女性がおとずれた。
会場の雰囲気が変わった。先まで騒がしかった会場が静まりかえり、代わりにざわめきだす。
その二人の片方を見た輝は心穏やかでは無かった。
が、この場では何も出来ない。
相手も輝がこの場で何もしない事は解っているのだろう。
入場したのは九条睦月を伴った一条京華だった。
彼女らは美月の祝辞に来たのだろう。
輝は美月と瑠奈のそばに近づき守る様な立ち位置で彼女を見た。
「お久しぶりね。九条少佐。美月さんもおめでとう。瑠奈ちゃんだったかしら?。ご苦労様でした」
京香が輝達の前に来て祝辞と労いの言葉を掛ける。
輝は何とか表情を崩さず返答する。
「これはこれは。ありがとうございます。しかし貴方程の方が足を運んでくれる程の事とは思えませんが?」
「兄さん!?」
それを聞いて美月は焦燥する。瑠奈は輝の後ろに隠れてしまった。
「あら、嫌われてしまったかしら?。でも私は貴方に会いたかったの。この間の地震の対処は素晴らしかったわ。そのお礼も兼ねてだけど駄目だったかしら?」
「自分は職務を果たしただけです。そのように評価される事はしてません」
「輝ッ!?」
今度は睦月が輝に向かって窘めた。しかし輝は態度を改めない。京華はそんな輝を見て微笑む。
「いいわ。睦月さん」
「・・・はい」
京華に気にした様子はない。
「相変わらずね。でも覚えておいて。私は貴方の事を憎からず思っているのだから」
「・・・・・」
「お祝いの品はあちらに預けてるから、見てちょうだい。今日はまだ行く所があるの。またね」
京華は踵を返す。
今度は睦月が輝達の前にでる。後ろに隠れていた瑠奈も出てきた。
「輝、美月、おめでとう。そして瑠奈、お疲れ様でした」
「ありがとうございます。叔母様」
美月が受け答える。
「叔母さん。まだ続けるのか?」
輝が主語の無い質問を睦月に問いかける。
「何をかしら?」
「いや、今日はありがとう。叔母さん」
「美月、元気な子を産むのよ。瑠奈も元気でね」
二人は睦月に頭を下げる。
そこで睦月も京華を追って踵を返した。
輝はその後ろ姿を見送りながら声をかける。
「もう自分を責めないで。叔母さん」
その声に睦月は一瞬立ち止まった。しかしこちらに振り向く事無く出て行ってしまった。
「兄さん・・・」
美月が輝に心配そうに呟く。
輝が振り向くと美月が悲壮な表情で輝を見ていた。瑠奈も髪飾りが青に近くなっている。
「心配かけたな。こちらが悪くならない様にするよ」
そこに少しの間離れていた明が声をかけてきた。
「お父さん!今の人ってよく画像に出てくる人よね!?知り合いだったの!?」
「まあな・・・」
歓待の声を上げる明に輝は苦笑を浮かべるのだった。
読んで貰えてありがとうございます。
GWの投稿はこれで終了です。
なるべく早く更新したいと思いますのでよろしくお願いします。




