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「いたたっ・・・」
少しの間意識を失っていた様だ。爆風に吹き飛ばされた睦月は体の痛みを自覚する。おそらく左腕が折れてる。
「はっ!」
何とか体を起こし周りの見る。そこは瓦礫と化した廃墟だった。何人もの作業員達が周りでうめき声を上げている。
「っ、室長ーーーーー!?無事ですかーーーーー!」
無事な研究員がこちらに走りよってくるのが見える。
美月は我を忘れ叫んでしまう。
「子供達は!、子供達は無事なの!輝は?!、真月は!?、美月は?!」
研究員はそんな睦月の声を聞いて急いで端末を操作する。
「現在北方向に向かって二名以外避難中です。後三十秒もあれば外に避難出来ると思います」
「北方向!?」
「理由はわかりませんが外に向かう経路が出来たようです!」
「そう・・・」
それを聞いて睦月は少し冷静になる。
「避難状況は、防災設備の稼働はどうなってるの?」
「爆発に巻き込まれなった人間はほぼ外まで避難出来てます。もうすぐ終わります。後はこの場の人間だけです。しかしなぜか北系統の防災設備が正常に作動していません。北方向の火の手がそのままになっています」
「逃げ遅れた二人の救出を最優先に。後は速やかに避難を!」
「解りました!」
周りの作業員達は速やかに避難行動を再開する。
応急処置を施され、担がれた睦月は天に祈る。
『輝、真月、美月、みんな・・・お願い・・・無事でいて・・・』
「真月・・・真月・・・真月ーーーーーっ!」
輝は真月の光を目指し進んでいた。そこまで後十メートル程だ。しかしその十メートルを進むのに様々な障害が待ち受けている。進路を塞ぐ瓦礫、迫り来る炎、常人で有ればとっくに一酸化炭素中毒で倒れ死んでいる。幼い輝にはあまりにも過酷な道のりだった。
瓦礫を消し、迫り来る炎を避け、動かない体に鞭を打ち、やっとの思いで真月を見つける。
おびただしく血を流し、瓦礫の下敷きになった手足。奇跡的にまだ息はあるものの、あの可憐な姿が想像出来ない程それは無残な姿だった。それを見て輝は激高する。
「邪魔だーーーーー!」
のしかかっていた瓦礫はずべて消え去り、真月の姿があらわになる。
「真月、真月、真月ーーーーっ!!!!!!!!!!!」
その声に真月は微かに開いた目で輝をみて微笑む。
「・・・・お・・・に・・・・い・・・・・・ちゃ・・・・・・・・ん・・・」
「真月、しゃべるな!もう大丈夫だ!お兄ちゃんが何とかするから!」
輝は真月に背を向け、進んで来た方向の炎で地獄と化した建物にデバイスを構える。
「消え、去れーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!」
それは子供とは思えない心の奥底から放つ咆哮だった。
睦月は外に脱出し応急処置を終え、研究員と共に自らの足で北側に急ぐ。
泣け叫ぶ子供達の姿が見えてくる。
その中に三人の姿を探す。
美月を見つけ、駆け寄る。
「美月ちゃんっ!、輝君は?真月ちゃんは?何処っ!?」
美月は泣きながら首を横に振る。
「まさか、・・・まさかまだ中なの!」
美月は嗚咽をしぼろぼろと涙をこぼす。とてもまともにしゃべれる状態じゃない。
「救援はっ!」
研究員に尋ねるも答えは芳しく無かった。
「火の手が強すぎます!。一般人では侵入は不可能です」
「そんな・・・・っ」
それを聞いた睦月は建物に向かって走り出す。
「室長、無茶ですっ!」
研究員達は必死に睦月を止める。
「離して!、二人がまだ中にいるの!。行かないと!・・・・」
「駄目です!。もう助かりません!」
「輝ーーーーーーー!!!!!!!、真月ーーーーーーーー!!!!!!!!」
もう無理だ。誰もがそう思った。
泣き叫ぶ睦月の眼前でそれを嘲笑うかのようにそれは起こった。
突然の突風。目を開ける事が出来ない程の眩い光。何が起こったかそこにいる誰もが理解出来なかった。
光がおさまり、睦月は前方を向く。
火の手が上がっていた部分の建物が消え去り、切り取られた様な無残な姿の建物。その先には血だらけでデバイスを構える輝と、無残な姿で横たわる真月の姿があった。
「輝!、真月!・・・・・っ、早く、早くあの子達を!」
呆けていた研究員達に激を飛ばす。
「ハ、ハイッ!」
駆け出す研究員達に遅れを見せずついて行く睦月。
「輝ーーーーーー!っ、真月ーーーーーーー!っ、」
輝は眼前に迫ってくる救援をみとめると意識を失いその場に崩れ落ちた。
輝が目覚めたのはそれから丸一日経ってからだった。
「ここは・・・・」
意識がはっきりしない。
「輝君!、良かった、どこか痛いところは無い?」
傍ら座る心配そうな睦月と美月が視界の入った。
『あれっ?。何で一人で寝てるんだろう。真月は・・・・、真月?!っ』
真月の事を考えるとそこで意識がクリアになる。そして何が起こったか思い出す。
「真月っ!?」
その声と共に勢いよく体を起こす。
「叔母さん!、真月は、真月は何処!」
睦月は沈痛な表情を浮かべる。
「体はもう大丈夫そうね・・・・・」
「真月は?!、真月は?!」
美月がぐずる。
しばらく沈黙の後睦月は口を開ける。
「付いて来て・・・・」
睦月も美月もそれ以上何も言わなかった。
輝は起き上がり、歩こうとしたが床に足を付けると鈍い痛みが走る。
「痛てっ!?」
その声に美月が慌てて自動走行椅子を持ってくる。
「っ、これに座って、兄さん・・・・っ」
輝はおとなしくその椅子に座り歩みゆく二人についていった。
『ここは・・・・病院?』
真っ白な長い通路の先にその部屋はあった。睦月が扉を開けると真っ暗の部屋の真ん中の寝台に誰かが寝ている様だった。
睦月が照明を付け、その寝台に近づく。
輝はその寝ている子が誰だか解らなかった。
なぜなら、もう彼女の周りには根源が浮かんでいないのだから・・・・。
寝台のそばに寄ると真月にとても似ている少女が目を瞑っている。全く生気が感じられない。外観は何処にも欠損は見当たらないのにだ。
「叔母さん誰?この人」
そこで美月が泣き出す。
睦月も必死に涙を堪え次の言葉を口にする。
「真月ちゃんよ・・・・」
輝は自分が一瞬何を聞いたのか理解できなった。でも光って見えない彼女を見て悟った。真月はもうこの世に居ないのだと・・・。
「真月?・・・嘘でしょ?・・・・、起きて・・・・真月?、真月?、真月?、真月!・・・・」
輝は何度もその名を口にする。
しかし寝ている少女が目を覚ますことは無かった。
「ごめんなさい・・・輝・・・ごめ・・・ん・・な・・・さい・・・・」
嗚咽する睦月に後ろから抱擁され輝は物心ついて初めて涙を流す。
どんなに過酷な訓練でも根を上げず、けして妹達の前では笑顔を絶やさなかった兄が初めて泣いた。ぼろぼろとしたたる涙は際限が無かった。
「真月・・・真月・・・まつ・・き・・・・・・・真月ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
その声は病院の廊下に響き渡り、聞いた者が必ず動きを止める。そんな悲しい叫び声だった。
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